第56話 ゆく年くる年
はい、今年最後の投稿になります。
9月から本作の投稿を始めましたが、長々と駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
すごく長い話になりそうですが、来年もお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
終息日 パーティー対抗ダーツ大会 準決勝第1試合。
アウレラ「さあ、準決勝が始まりました。先行はトキオ選手です」
ブローム「あまり力んでいる様子もなく、自然体ですね」
アウレラ「まずは1投目です。じっくり狙って、投げた!・・・おお!20点です!」
ブローム「さすがですね。1投目はきっちり決めてきました」
アウレラ「満足そうに下がるトキオ選手に続いて、ミレリア選手が位置につきました」
ブローム「かなり真剣な表情です」
アウレラ「じっくり狙ってえ・・・投げた!・・・なんと!ど真ん中に刺さりました!いきなり50点です!」
ブローム「これは驚きました」
アウレラ「ミレリア選手、トキオ選手ににっこり微笑みながら下がります。余裕の表情です」
ブローム「ちょっとイラッとしました」
アウレラ「さあ、トキオ選手の第2投です。少しきつい表情になりましたか?」
ブローム「ミレリア選手が侮れない相手だと感じたようです」
アウレラ「1投目より時間をかけて狙って・・・投げた!・・・おお!真ん中に刺さりました。トキオ選手、50点加算して70点です!」
ブローム「やりましたね」
アウレラ「さすが師範です。実力を発揮し始めました」
ブローム「少し表情が柔らかくなりました」
アウレラ「続いてミレリア選手の第2投です。真剣な表情で狙って・・・投げた!・・・なんと!またしてもど真ん中に刺さりました!50点追加して100点です!」
ブローム「実力は本物のようです。困りました」
アウレラ「トキオ選手、なんとか挽回して欲しいです」
ブローム「また、険しい表情になりましたね」
アウレラ「うー、トキオ頑張れ!」
テリット「そこ!実況中なんだから・・・1回目は許す!」
ブローム「おお、おとがめなし!トキオ選手、こっちを見てますね」
トキオに向かって手を振るアウレラ。
ブローム「おや?表情が緩んで・・・というより、にやけて、少し顔が赤くなったような」
アウレラ「3投目を狙って・・・投げた!・・・ああっ!手元が狂ったか、5点です!」
ブローム「なんと!」
テリット「勝者、ミレリア!」
アウレラ「残念ながら、トキオ選手、負けてしまいました」
ブローム「実に残念です。声援が逆効果になったようです」
アウレラ「え?そう?」
ブローム「メンタル面を鍛えなおす必要がありそうです」
アウレラ「場内、ミレリア選手に大声援が飛んでおります。トキオ選手、残念そうに下がります。しかし、テリット審判の方が残念そうにしているように見えるのは気のせいでしょうか」
ブローム「気のせいじゃないと思います」
アウレラ「・・・ということで、準決勝第2試合は、エレザベス選手の圧勝に終わりました」
ブローム「なんだか、ケリー選手が1投目に19点を出した後にエレザベス選手がすごい形相で睨んでいて、そのあとは、ケリー選手がグダグダになって自滅したように見えましたね」
アウレラ「エレザベス選手、実はギルドの裏番なんでしょうか」
ブローム「可能性はありますね」
アウレラ「決勝戦はミレリア選手対エレザベス選手となりました」
ブローム「これは予想していませんでした。しかし、冒険者が全滅とは情けない。俺が出れば良かった」
アウレラ「ホントですよね」
ブローム「来年は俺が出ます」
にっこりほほ笑むアウレラ。
ちょっとドキッとするブローム。
アウレラ「では、決勝戦です。先行はエレザベス選手です。第1投を狙って・・・投げた!・・・おお!いきなり真ん中の50点です!」
ブローム「エレザベス選手も、私たちがいない昼間に練習を積んでいたようです」
アウレラ「エレザベス選手、どや顔でミレリア選手を見ながら下がります」
ブローム「ミレリア選手、睨み返してますね」
アウレラ「ミレリア選手の第1投・・・これまた50点です!」
ブローム「なんと!驚きました!」
アウレラ「今度はミレリア選手がどや顔で下がり、エレザベス選手が睨み返しています」
ブローム「実は仲が悪いんでしょうか」
アウレラ「エレザベス選手の第2投・・・またまた50点です!」
ブローム「信じられません!」
アウレラ「またしても、どや顔と睨み返しの応酬がありましたが、ミレリア選手の第2投は・・・なんとなんと、これも50点です!」
ブローム「驚異的です!実にレベルの高い試合になりました」
アウレラ「驚くことに、第3投も両者50点でしたので、これより延長戦に入ります」
ブローム「信じがたい展開です」
アウレラ「延長戦は1投ずつで、点数に差がついた時点で終了となります」
アウレラ「・・・・ついに、延長10回目、両者ずっと50点で譲りません!」
ブローム「もはや、人類の驚異です」
アウレラ「もっとお酒が飲みたいので、そろそろ決着をつけて欲しいです」
ブローム「私もです」
アウレラ「あまり長引くと、年を越しそうです」
ブローム「ホントですよね」
アウレラ「延長11回目のエレザベス選手・・・・・また、50点!」
ブローム「どや顔と睨み返しの応酬も続いてますね」
アウレラ「続いてミレリア選手。おや?勝負を賭けたのか、かなり時間をかけて狙っています。おっと、そこにエレザベス選手が忍び寄っていきます」
ブローム「競技中は相手選手の体に触れたら反則です。エレザベス選手も知っているはずですが・・・」
エレザベスは、ミレリアが投げようとした瞬間にその耳に息を吹きかけた。
ミレリア「キャッ!」
アウレラ「おっと!ミレア選手、ボードを外してしまいました。しかし、今、エレザベス選手が何かしたような・・・」
ブローム「耳に息を吹きかけたように見えました」
テリット「エレザベス失格!勝者ミレリア!」
アウレラ「おおっと!やはり反則行為があったようです。優勝はミレリア選手!」
エレザベス「なんでよ!体には触ってないじゃないの!」
テリット「明らかに投げるのを妨害しているじゃないか!失格、失格、失格!」
ミレリア「まったく、実力で敵わないからって情けないわね」
エレザベス「なんですって!」
アウレラ「おおっと!つかみ合いのケンカが始まりました!」
ブローム「これは、面白・・・いけませんね」
アウレラ「場内からはブーイングと声援と笑い声が飛んでいます!」
ブローム「笑ってるのは、かなりお酒の回った人たちですね」
アウレラ「おお!さすがに、トポレフ料理長とケリー支部長が両者を後ろから羽交い絞めにして止めました」
ブローム「もう少し見たかっ・・・・・賢明な対処です」
テリット「優勝、ミレリア選手!」
アウレラ「テリット審判が、優勝の宣言とともにミレリア選手の手を高々と上げました。エレザベス選手は、トポレフ料理長に、そのまま厨房まで引きずって行かれました」
場内から大きな拍手。
アウレラ「ケリー支部長から、優勝カップと賞金として銀貨20枚が贈られました。ミレリア選手、嬉しそうに小さな優勝カップを高々と上げて振っています。場内、さらに大きな拍手です」
しばらくすると、拍手が収まった。
アウレラ「最後に、トキオ師範から閉会の挨拶をお願いします」
トキオが前に出て来る。
トキオ 「皆様、お疲れさまでした。非常にレベルの高い試合で観客の方からも盛んに声援が飛んで大変に盛り上がったので、今年の最後がキッチリ締められたかなと思います。
年が明けるとすぐに仕事となりますが、年が変わるまで大いに飲んで騒ぎましょう!
それでは、閉会いたします!」
大きな拍手と歓声が起こった。
アウレラ「皆様、お疲れさまでした・・・・・さあ、飲むぞー!」
ブローム「おう!」
それから、年が変わるまで、皆は大いに飲んで騒いだ。
そして、0時近くになったところで、新年へのカウントダウンが始まった。
「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1・・・」
「新年、おめでと・・・・」
0時になった瞬間、トキオは、飛び上がりながらそう叫ぼうとしたが、他の皆は、片膝を付くと手を胸の前で組んで目を瞑り頭を下げた。
(あれ?・・・・・もしかして、お祈りしてる?)
「新年になった瞬間、聖光教の信者はお祈りするのが習わしになってるんだよ」
小声で耳元で囁かれたので振り返ったら、エドだった。
「お前は聖光教の信者じゃないんだから、別にお祈りはしなくていいぞ。俺もそうだし」
エドにそう言われて見回すと、確かに、座ったままお祈りをしていない者が他に3名いた。
ただ、お祈りをしている人たちに気を遣ってか、皆、グラスは置いていた。
トキオも、手に持ったグラスを置くと座ってお祈りが終わるのを待った。
「なおれ」
ケリー支部長の声がした。
途端に、全員がお祈りをやめると、グラスを手に持った。
「それじゃあ、新年を祝して、乾杯!」
「かんばーい!」
ケリー支部長の声で、皆は改めて乾杯すると、また雑談に戻った。
そこで、テリットが寄って来た。
「トキオは新年のお祈りを見るのは初めてか?面食らっただろ?」
「うん。ちょっと驚いた」
「まあ、信者じゃない者には強制しないから気にするな」
「そうみたいだね。エドが教えてくれたよ」
「おう、あいつも少しは気が利くんだな」
そう言ってテリットは笑った。
「新年おめでとー!」
「おめでとう。今年もよろしくな」
「おめでとー。よろしくー」
アウレラとブロームもやって来たので、お互いに新年のあいさつを交わした。
すると、他の冒険者もどんどんやって来て、皆、トキオに握手を求めて来た。
「トキオ、ホントに去年はありがとな」
「すごく助かったよ」
「随分、収入も増えたしな」
「今年も頼むぞ」
最後は、もみくちゃにされて、皆で大笑いした。
その後は、一人、また一人と家に帰って行ったが、トキオは元日は休みだし、特にすることもないのでそのまま残っている者と飲んでいた。
気づいたら、アウレラとクロアとミレリアだけになっていた。
「クロアはどんだけ飲んでも全然変わんないな」
「当たり前じゃない!酒なんか飲まれるような恐怖の魔女様じゃないのよ」
と、クロアは言ったものの、その実は少し酔ってるようだった。
「私も強いですよ」
「そう言えば、ミレリアも変わってないなー」
トキオはとりあえずそう言ったが、明らかに酔ってるなと思った。
「あたしもー」
「いや、アウレラはちょっと、いや、かなり酔ってるだろ」
「酔ってない!そんなこと言う口はこうだ!」
そう言うと、いきなりキスをしてきた。
「あ!アウレラさん、自分だけズルい!」
ミレリアはそう言って、アウレラが口を離すとすぐ、今度は自分がトキオにキスをした。
そして、どさくさに紛れて舌を絡めてきた。
「え、う、うんぐ」
そのまま、長いことキスをしていたが、
「二人とも何やってんのよ!どきなさいよ!」
と言いながら、クロアがミレリアを引きはがすと、今度は自分の番と言わんばかりにキスをしてきた。
「ま、んぐぐ」
30秒ぐらいそのままキスをされていたら、
「長すぎるわよ!」
と、言ってミレリアに引きはがされた。
ミレリアは、そのまま、またキスをして来ようとしたので、
「待て待て、なにしてる、なにしてる」
そう言って、トキオは押しとどめた。
ふと見ると、アウレラは酔いつぶれてテーブルに突っ伏していた。
「は!今、私、なにしました!?」
ミレリアは正気に戻ったようだった。
「キスしてたわよ、キス。あんたも大胆ねえ」
「あなただってしたでしょ!」
「そうだけど、私は2回目だからいいのよ」
「え!いつの間に!?ズルい!」
そう言うと、ミレリアがクロアに掴みかかりそうになったので、トキオは間に手を入れて止めた。
「新年から変なことでケンカしない!飲もう飲もう!」
「そうね、飲みましょ!」
「飲むわよー!」
「飲むぞー」
アウレラがそう言って顔を上げずにグラスだけ上げたので、他の3人は笑った。
そして、そのまま4人で朝まで飲んでいた。




