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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第1章 アティム編
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第5話 初めての討伐

 次に、武器屋に行ってみた。看板には『この国を守ろう!』と、まるで自衛隊のポスターのような文句が書いてあった。


 店内には誰もいなかったが、店中に武器や防具が並んでいて、トキオは自然と顔がほころんだ。


「おおー!両刃で柄の短い直刀!片手で扱う長剣だな!まさにファンタジーだー!」

 トキオは、棚に異世界ゲームやアニメで良く見る剣が並んでいるのを見て思わず大声を出した。


 その声が聞こえたらしく、奥から店主と思われる50歳ぐらいの親父が出て来た。


「いらっしゃい。剣をお探しかい」

「うん。今、冒険者登録してきたところなんだけど、剣が一番得意だから剣士で行こうと思ってね」

「おや、初心者の方かい。それじゃあ、これなんかいいんじゃないかな」

 親父は、剣の棚に歩み寄ると比較的細身で短めの剣をとった。


「おお、軽くて振りやすいね」

「初心者だと剣の長さとかを意識せずに洞窟なんかの狭いところでちゃんと振り回せないってことがよくあるからな。最初は短めがいいぞ」

「なるほどー!でも、俺は子供の頃から剣の稽古はしてるから、そのへんは大丈夫かな」

「ほう。じゃあ、ちょっと構えてみてくれるか」


 トキオは、渡された剣を両手で正眼に構えた。

「ふうむ。お前さん、かなりの腕だね」

「へえ、構えを見ただけでわかるんだ」

「そりゃ、この商売を30年以上やってるからな。しかし、それは片手剣だぞ」

「わかってるんだけど、今まで両手で振ってきたからね。両手で握った方がしっくりくるんだよ」

「そうかい。じゃあ、これなんかどうだ。お前さんの腕ならこのくらいがちょうどいいかもな」


 先に渡された剣より、刀身も柄も少し長くて重かった。


 トキオは、上から横からと数回その剣を振ってみた。それから、右手の拳で刀身を軽くたたいてみた。

「うん。これは使いやすそうだし、造りもしっかりしてる。これにしよう」

「気に入ってくれて良かったよ。ベルト式のホルスターもいるだろ?」

「うん、そうだね」

「防具はいいのか?」

「うーん、まず、剣に慣れる必要があるから身軽に動きたい。また、今度にするよ」

「そうかい。依頼は受けたのか?」

「うん、ウルゴンの討伐をね」

「それくらいなら防具はなくてもなんとかなるだろう」

「これ、いくら?」

「そうだな・・・銀貨3枚なんだが、お前さんは将来性がありそうだから銀貨2枚でいいよ。その代り、防具や別の武器が欲しくなったらうちで買ってくれよ」

「ありがとう。わかった」

「ちなみに俺はフーゴだ。これからごひいきにしてくれるんなら、名前ぐらいは憶えといてくれ」

「わかった。俺はトキオだよ。よろしくね」

 そう言って二人は握手を交わした。


 トキオが、剣と木刀を一緒に左の腰に下げて外に出ると、店の奥から20歳前後と思われる細身の男が出て来た。


「師匠、あれは銀貨5枚の剣じゃないんですか。あんなに安く売って良かったんですか」

「あいつは間違いなく腕が立つから、いずれ名のある剣士になる。そうなれば、うちで買った武器を使っていることが知れ渡るさ。これは先行投資だよ」

「そうなんですか。まあ、師匠が言うなら間違いないですね」


「冒険者になるんなら、やっぱり剣士だよな~」


 そう呟きながら、トキオは依頼場所に向かって行った。




 剣を持ったことでウルゴン程度の魔物なら魔法を使わなくても一撃で倒せるようになったので、今までより簡単に討伐できた。

 ウルゴンに突進して襲ってくる習性があるのはすでに分かっていたから、ウルゴンがいると言われた森に入ると、森の中を歩き回りながらワザと大きな声で叫んで呼び寄せ、片っ端から切り捨てていった。

 途中でスライムを見つけたので、また捕まえてスリスリしようとしたが、捕まえる前に逃げられた。


 1時間もするとどんなに叫んでもウルゴンが出て来なくなったので、証明部位として切り取った角を詰めた袋と頭蓋骨からとれた銅貨をリュックに詰めて街に戻った。


 街に入る時にまた、検問をやっている兵士に止められたが、冒険者の登録証を見せるとすんなり通してくれた。


 ギルドに入ると先ほどと同じくミレリアが受付に座っていた。


「こんにちは。何か問題でもありましたか?」

「いや、討伐してきたんでその報告に」

「え!?もう終わったんですか?3時間ぐらいしか経っていませんが。まさか、1匹だけ倒して戻って来たとかですか?依頼は、最低5匹とのことでしたが」

「いや、30匹討伐して来たよ。これが、証明部位ね」


 リュックから角の入った袋を出してミレリアに渡した。

「え!?30匹ですか!」

「うん、そこに角が30本入ってるから」

「え!?角を持ち帰って来たんですか!」

 ミレリアは思わず大きな声を出した。そして、その言葉を聞いた、ギルド内にいた冒険者たちが全員どよめいた。


「あれ?角じゃダメだった?」

「ダメじゃないですが、魔物の脳には毒があると言われているので頭部の破壊は誰もしませんよ。ウルゴンの角は頭部に直結してるはずですから、頭部を破壊しないと角はとれないですよね?」

「え?そう?今まで、このウルゴンの頭部は十何匹も破壊して、頭の中に手も突っ込んだけど、別に毒とかはなかったと思うよ」

「え!?そんなことまでしたんですか!それはいつごろですか?」

「1か月ぐらい前からかな」

「それならとっくに毒にやられているはずですね。おかしいですね」

「それ、迷信なんじゃないの?」

「いえ、話の出どころは分かりませんが、毒にやられた冒険者がいるのも確かですから」

「それじゃあ、たまたま蛇のように牙に毒を持った魔物の頭部を破壊して、その毒を浴びたってことじゃないのかな。それとも、サソリのように毒のある尻尾を前に持ってくる魔物を殺した時に頭部と一緒にその尻尾も破壊したとか。少なくともウルゴンには毒はないと思うよ」


「蛇の毒ですか。そうなんですかねえ。ところで、サソリってなんです?」

「ありゃ、この世界、いや、この近辺にはサソリっていないのか」

「はい、聞いたことがありません」

「両手がハサミになってて長い尻尾の先に毒を持った生き物だよ。うちの方にはいるんだけどね」

「そうですか。少しお待ちください」

 ミレリアはそう言うと、袋の中の角をカウンターにぶちまけ、触らないで目検で数え始めた。


「はい、この角が間違いなくウルゴンのもので30本あるのも確認できましたのでこちらが報酬になります」

 トキオは銀貨1枚と銅貨50枚を受け取った。

「1匹銅貨5枚って書いてあったから、この世界のレートは銅貨100枚で銀貨1枚ってことか」

「はい?」

「あ、いや何でもない。こんなに銅貨持ち歩くのも大変だなあ。銅貨渡すから両替してもらっていい?」

「いいですよ」

「じゃあ、ここに銅貨が350枚入ってるから」

 トキオは、今まで魔物から集めて来た銅貨が入った袋をミレリアに渡した。


「え?こんなにですか?」

「ダメ?」

「いえ、大丈夫ですが、数えますから少しお待ちを」


「はい、確かに350枚あります。では、こちらを」

 トキオは、今回の討伐報酬と合わせて銀貨5枚を受け取った。


「それと、本日の討伐達成で冒険者ランクがU級になりました」

「えーと、U,V,W,X,Y,Zだから・・え?一つ依頼を達成しただけで5ランクも上がるの?」

「今回は、短時間で一度に30匹も討伐した点がポイント高かったです」

「ああ、そいうのも評価基準になるのか」

「内容を書き換えますので冒険者カードをいただけますか」

「あ、はい」

 トキオが冒険者カードを渡すと、何やら手元で操作していたが、カウンターの内側で見えなかった。


「はい、更新いたしましたのでお返しします」

「ありがとう」

「お疲れさまでした」


「そう言えば、朝からかなり歩いたからちょっと疲れたかも。いい宿屋を紹介してもらえるかな」

「このギルドの上が宿泊施設になっていますので、それでよろしければ本日は空き部屋があります」

「ああ、それでいいよ。お願いします。食事は出せるの?」

「軽食であれば、そこの飲食コーナーで出せますが、しっかり食べたい場合は向かいの居酒屋で食事も出しておりますのでそちらでどうぞ」

「わかった。今はとりあえず部屋に行きたいかな」

「はい。こちらがお部屋の鍵になります。お部屋は4階です」

「ありがとう。ところでエレベーターはどこ?」

「は?エレベーターってなんでしょう?」

「あ、そんなものないのか。いや、気にしなくて大丈夫」

 そう言って受付を離れたが、


(4階まで階段上るのかよ~)


 と考えると、疲れがどっと襲ってくる感じがした。



 部屋に着くと、ベッドがあったのでそのままあおむけに倒れ込んだ。


(服と剣は買ったけど、今日の討伐報酬とウルゴンのドロップアイテムの銅貨で少し所持金が増えたし、物価はそんなに高くなさそうだから、明日は討伐はしないで、これからの生活に必要なものを買いながら街の見物でもするかな。とりあえず揃えるのは、下着とタオルと・・・)


 そんなことを考えていたら、いつの間にか寝てしまった。

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