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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第1章 アティム編
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第43話 光魔法とクロアの怒り

「あれ?また?」


「アルアビスの街の周辺には、かなり頻繁に人型の魔物が現れるようになって来たらしく、この街の近郊でも近いうちにそうなる可能性が高いから、人型の魔物の根城となりそうな場所を片っ端から潰して行くのが主な目的だそうだ。その第一弾として、今日はオーロの森だ」


 この日の朝、王国軍から要請があったということで、どうしても今日のうちにこなさなければいけない仕事を請け負った者を除いて、先日とは別の場所において冒険者総出で魔物の一掃討伐をするようギルドから依頼があった。


「しかし、アルアビスとこの街の間には、結構、森や山があるから、一つずつ潰していくとなると、その間に他の場所に魔物が進出してくるんじゃないのか?」

 テリットの説明にブロームが疑問を投げかけた。


「それについては、王国軍が広範囲に見回りをして警戒をしてくれることになってる。今日も、森の外で外部から侵入する魔物を警戒することを兼ねて、王国軍の部隊が警備をしてくれることになってる」

「そうか。どっちにしろやるしかないな」

「そういうことだ。みんな準備はいいみたいだからすぐに出かけよう」

「ああ」

「わかった」

「了解よ」



 今回はマルケルのパーティーと同じ馬車に乗って出かけたが、オーロの森は、先日、一掃討伐を行った西の森よりもさらにアルアビスの街に近い場所にあったので、全員緊張した面持ちで、あまり話をする者もいなかった。



「じゃあマルケル、この森はグリズラーも出るって話だから、お互いのパーティーメンバーが見える距離を保って進むことにしよう」

「ああ、それがいいな。そうしよう」


 森に着くと、テリットがそう提案したので、全パーティーはすぐに連携が取れるように広く横に展開しながら進むことになった。



 この戦法はなかなか効果的で、見通しの悪い場所から突然ディアギラスやフォドラなどが飛び出して来て誰かが不意を突かれた時にも、近くにいたパーティーの弓使いや魔法使いが掩護して、被害を出さずに進むことができた。




「グリベラーだ!」


 討伐を初めて1時間ほど経った時、右の方からそう叫ぶ声がした。


 皆がその方向を見ると、かなり大型のグリベラーが仁王立ちして大きく吠えていて、その周りを数人の冒険者が取り囲んでいるのが目に入った。



「でかいぞ!まずい!」


 テリットはそう叫ぶと、その方向へ走った。


 トキオたち3人もテリットのあとに続いた。


 しかし、トキオたちがその場所にたどり着く直前に右の方から大きな火球が飛んで来てグリベラーに直撃した。

 グリベラーは全身を炎に包まれ苦しそうにもがくと、前に倒れて四つん這いになった。


 次の瞬間、グリベラーの後方にいた二人が左右のわき腹に槍を突き立てた。

 グリベラーは一声苦しそうに吠えると、完全に動きを止めた。


 それを見たパーシーが駆け出して来て大きく飛び上がり、上から剣を叩きつけて首を切断した。


「やった!」


 皆がホッとして見ていると、右手からクロアが現れた。

 表情は、これ以上はないと言うほど、どや顔だった。



「おおー!恐怖の魔女、やるなー」

 テリットが言った。

 どうやら、『恐怖の魔女』という呼び名が気に入ったようだった。



「ま、私にかかればこんなものよ」


 とどめを刺したのはパーシーなのに、まるで自分一人で仕留めたようなトーンでクロアは言った。


「あれがなきゃ仲良くしたいとこなんだがなあ」

 ブロームがぼそりと言った。



 そこでクロアはトキオに気付いた。

 すると、さらにどや顔になって、顎を上げて見降ろすようにトキオを見た。



「もう大丈夫みたいだから持ち場に戻ろう」


 トキオは、クロアに寄って来られたらまた何か言われそうだと思ったので、そう言って先に元の場所に戻って行った。



 それからさらに討伐は続き、午後に入ってしばらく経ち、森に続く山のふもとに近い場所にたどりついた時にマルケルの大きな声がした。


「おーい!みんな来てくれ!」



 皆がその声の方に行くと、何枚も切り落とされた大きな葉が散乱しいるところに出た。


「こっちだ!」


 マルケルの声がその奥から聞こえたので皆がそっちに行くと、茂みの先に直径2メートルほどの洞窟の入口があり、その脇にマルケルのパーティーメンバーが立っていた。。



「支部長からもらった地図にこの辺りに洞窟があると記されていたんだが、茂みに隠されていて見つけるのに手間取った」

 マルケルが言った。


「中に人型の魔物でもいるのか?」

「それはわからん。でも、その可能性もあるし、これからそうなるかもしれないから、見つけたら入口を潰しておいてくれと支部長に頼まれてたんだ。この洞窟は、他に出口はないらしい」

「あ、そうだ。俺も言われていて、トキオに伝えるのを忘れてた」

 テリットはそう言うと、すまなそうな顔でトキオを見た。


「そういうことだから、トキオ、頼む」

「わかった。じゃあ、みんな下がって」


 皆は、一斉にトキオよりさらに後方に下がった。


 一人、クロアだけがキョトンとした顔でパーシーに質問した。


「え?どうしたの?なにがあるの?」


「今からトキオが光魔法で洞窟を潰すんだよ。危ないから下がって」

「え?ついに光魔法が拝めるのね!でも、危ないってどういうことよ」

「いいから、こっちに来なって」


 パーシーはクロアの腕を掴むと強引にトキオの後方に下がらせた。


 トキオは、しばらく気を溜めると、気合もろとも光魔法のフライシャを放った。


「はっ!」



 その瞬間、他の冒険者たちは光の玉が飛んで行く方向ではなく、一斉にクロアを見た。



 ドーーーン!


 ものすごい爆発音とともに洞窟の上の岩山が大きく崩れ、なだれ落ちて来た岩が洞窟の入口を完全にふさいだ。


 クロアは、大きく目を見開き、呆然とした顔でその場に立ちすくんだ。


 その様子を見た皆は、俯いて笑いをこらえようとしたが、こらえきれず大きく肩が揺れていた。



「ちょ、ちょっと何なのよその魔法は!威力がおかしいじゃないの!何かズルいことしてるでしょ!」

 数秒間のあと、クロアは我に返るとトキオに食って掛かった。


「えー?何もしてないよ。光魔法だからじゃないかなあ」

「私の師匠が使ってた光魔法は防御魔法と反射魔法で攻撃魔法を見たのは初めてだけど、それにしても変よ!レベルはいくつなのよ!」

「レベル?たぶん変わってないから18だと思うけど」

「じゅ、じゅうはち!?ウソついてんじゃないわよ!師匠だって11だったっていうのに!」

「ウソなんかついてないよ。そんなことをしても魔法の威力が上がるわけでもないし、俺にメリットないでしょ?」

「自分の魔法がスゴいって言いたいんでしょ!」

「いや、俺は剣士だから魔法の自慢はしてもしょうがないし」


 そう言われたら、トキオは自分とクロアの火炎魔法の威力の違いがどのくらいのレベル差によるものなのか気になってきた。


「・・・じゃあ、クロアの火魔法のレベルはいくつなのさ」

「ほ、ほら、やっぱりそうじゃない!自分の方がレベルが高いって自慢したいんでしょ!」

「いや、別にそんな意味で聞いたんじゃ・・・」

「言っときますけどね、私は火と水の魔法が使える上に治癒魔法も使えるんですからね!」


「へえ。それはスゴいな」

 テリットが思わず口を挟んだ。


「それってスゴいことなんだ」

「ああ。攻撃魔法と治癒魔法の両方を使える魔法使いはめったにいないうえに、それで攻撃魔法が2種類使えるのはかなりスゴいことだ」


 テリットがそう言った途端、クロアはどや顔でトキオを見た。

「まあ、そういうことよ。もっと私に敬意を払いなさい。火魔法もレベルは9だしね」


(え?あの威力で俺とレベルが二つしか違わないのか。・・・・もしかすると、俺が気合を入れると威力が上がるように、詠唱が魔法の威力を高めてるのかな)


 トキオはそう考えてしばらく黙った。


「まあ、トキオも光魔法と火魔法の2つが使えるみたいだから、それなりに頑張ってるみたいだけどね」

 それを見たクロアは、自分のすごさに恐れ入ったと思ったのか、さらにどや顔になって上から目線で言った。


「え?ああ、他に水魔法と風魔法も使えるんだけど」

 トキオは、思わずそう言ってしまったが、クロアの次の反応が予想できたので瞬時に後悔した。


「な、なんですって!光魔法のレベルが18なのに他に3つも魔法が使えるですって!おかしいでしょ!やっぱり何かインチキしてるのよ!」


「だからしてないって。レベルについては、使うたびに上がっていくみたいだだから、俺にはよくわかんないよ」


「使うたびにって、レベルってそんなに簡単に上がるもんじゃないわよ!」

「そうなの?」

「あんた、勝手に習得してたって言ってたけど、最初はLv1だったわけでしょ、それが・・・」

「いや、最初からLv5だったんだけど」

「なんですって!ふざけないでよ!いきなりLv5なんて話、他の魔法だって聞いたことないわよ!・・・ああでも、最初はLv1だったのにそれに気づかないで冒険者を長くやってたから、その間にレベルが上がったってことならあり得るわね」

「いや、Lv5で習得してるのに気づいたのは冒険者になる前だよ」


 その言葉で、クロアはこの日一番の怒りの表情を浮かべた。


「今のは絶対ウソよ!そんなわけないでしょ!」

「そう言われましてもねえ・・・」



 しばらくそんなやり取りが続いたが、それを周りで見ていた冒険者たちは、皆、二人に背を向けて笑いをこらえていた。





「クロアって素晴らしい人材だな」

 討伐が終わりに近づいた頃、テリットがぼそりと言った。


「ええ~?なんで?」

 トキオが不満そうに言った。


「だってほら、あれだけみんな緊張してたのに、今は完全にリラックスして動きが良くなってるじゃないか」

「・・・ああ、確かに」


 そう言われてみると、皆、森に入った頃より余裕をもって魔物に対応している様子が伺えた。


「思ったことをずけずけ言うし、気も強いが、うちの街には必要な人材だな。ありゃ」

 ブロームも同意した。


「まあ、少なくともみんな楽しんでるわよね」

 アウレラが小さく笑いながら言った。



「まあ、トキオが一番被害にあってるかもしれんが、街のためだと思って付き合ってやれよ」

「いや、ああいうキャラは時々見かけて慣れてるから大丈夫だよ」


(アニメの中だけどね)


 トキオは、そう考えて思わずにやけてしまった。

 すると、


「そこっ!また一人でニヤニヤしてる!気持ち悪いよ!」


 と、いつの間にかこっちを見ていたクロアから罵声が飛んだ。


「はい、すみません、すみません」

 そう言いながらも、トキオは微笑んでいた。


 周りの冒険者たちも笑っていた。

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