表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第1章 アティム編
41/550

第41話 練習試合

仕事の関係でしばらくお休みしてましたが再開します。

その代り、今回は少し長めになってます。


※あとがきに柔道の技に関する動画のリンクを追加しました。(2020/12/13 2:46)

 次の日の朝、トキオはギルドに向かう道すがら考えていた。


(昨日、クロアにはああ言ったけど、もう少し魔法を使った方が使い方の練習にもなっていいかもなあ。魔法専門の冒険者だととっさの判断で適切な魔法が出せるけど、俺の場合は、出す前に頭で考える時間があるからどうしてもタイミングが遅れるよなあ。ヒドラ討伐の時にはMPが残り少なくなったのに焦って魔法のことばかり考えてたから咄嗟に出たけど、いつもはああはいかないよなあ)


(あ、そういえば最近、ステータスをちゃんと見てなかったな。確認しとくか)


「ステータス!」


 トキオは立ち止まってステータス画面を覗き込んだ。


(魔法のレベルは変わってないか・・・光魔法が18で火が7、水と風が5か。使った方がレベルが上がるってことだな)

(それで、最大MPは、と・・・あっ!)


 トキオは突然笑い出して思わず呟いた。


「俺バカだなー。光魔法のMPとほかの魔法のMPは別だったんじゃないか。だから、ヒドラの時も水魔法は使えたんだよ。別に焦らなくてよかったな」



「なに笑いながら独り言言ってんの。アブナイ人みたいだよ」


 突然、後ろから声がしたので振り返るとアウレラが立っていた。


「あ、ああ、ちょっとね。おはよう」

「おはよう。ヒドラの水魔法がなんだって?」

「え?・・・いや、大したことじゃないから気にしなくて大丈夫」

「なにそれ」


 アウレラは不満そうな顔をしたが、それ以上は何も聞かず、二人は普通におしゃべりをしながらギルドに歩いて行った。




「そうでしょ?まあ、今後は私がいるから大丈夫ね」


 ギルドに入るとすぐ、大きな女性の声が聞こえて来た。


(この声は・・・クロアだな。朝からクロア節全開か?)

 トキオが苦笑しながら声のした方を見ると、やはりそれはクロアだった。

 同じパーティーのメンバーに向かって、どや顔で話をしていた。


「まあ、そうだな。確かに強力な攻撃魔法のメンバーが加わったことで戦法を少し変えなきゃならないな」

「そこらへんは任せるわ。とにかく、私の力が発揮できるようなのを考えてちょうだいね」

「ああ、わかったよ」

 パーシーは苦笑いしながらそう答えていた。




 その後、トキオがアウレラと朝ご飯を食べているとマルケルがやって来た。


「今日は柔道教室の日だよな。それでちょっと頼みがあるんだけど」

「なに?」

「俺たちもお前に柔道を教わり始めてから数カ月経っただろ?かなり、様になって来てるとは思うんだが、乱取りだけじゃどれだけ身についてるのかがよくわからん。魔物に対して使ったのも隣街との合同でゴブリン討伐した時だけでかなり前だし、それからみんなの実力も上がって来てると思うから、今時点で実戦で有効に使えるのかもよくわからないんだよな。何かそれが実感できる練習方法はないかな?」


「ああ、確かにね・・・そうだなあ・・・あ!練習試合をすればいいのか!」

「練習試合?」


「うん。前に柔道のルールは一通り説明したでしょ?そのルールに基づいて1対1で対戦して、どっちが強いか決めるのを試合って言うんだよ。それを練習としてやるのが練習試合。剣とか弓でも誰が実力が上か競技したりしない?」

「ああ、腕相撲みたいに何かもめ事が起こった時にやったりするな」

「それをうちの村じゃ年に数回、柔道をやってる人が全員集まって誰が一番か決める試合をやるんだよ」

「ほぉ~。誰が一番かか・・・・・それ、すごく面白そうだな」

 マルケルはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「冒険者なんてみんな負けず嫌いでしょ?盛り上がると思うよ」

「それ、面白そう!あたしもやるー!」

 アウレラも楽しそうな顔をして乗って来た。


「じゃあとりあえず、今日の練習の時にやってみよう」

「それいいな!じゃあ、みんなには伝えとくよ」


 そう言ってマルケルは自分のパーティーがいるところに戻って行った。

 話を聞いたメンバーは、皆、興味深そうにしていた。




「じゃあ、一通り準備運動も終わったし、みんなには伝わってると思うけど、今日は練習試合をやるよー」


「いよっ!」

「待ってました!」

「よっしゃ!」


 皆から、期待のこもった嬉しそうな歓声が上がった。


「対戦相手を決めるのにくじを作っておいたから順番に引いてね」


 そう言いながら、トキオが横のテーブルに上に丸く穴が開いたくじの入った箱を置くと、その場にいた16人の冒険者たちは、我先にと箱の前に行列を作った。


(この人たち、こういうところはホント子供みたいだよな)

 トキオは苦笑しながらその様子を見ていた。


 一番気合が入ってる風だったマルケルが先頭をとって、期待のこもった顔でくじの箱に手を突っ込み、折りたたんで入れてあったくじの紙を取り出した。


「これを開けばいいのか?」

「そう。そこにAからHの文字と数字の1か2が書いてあるから、同じ文字同士の人が対戦相手ね」

「どれどれ・・・・・Hの2だ」

「じゃあ一番最後だね。そっちの端っこで待ってて」

「え~!なんだよ~」


 マルケルはすごくがっかりした顔をして、言われた通り壁の方へ行くと背を付けて座った。


「じゃあ、次は俺だ」

 2番目はパーシーだった。


「よっしゃ!Aの1だ!」


 その様子を、マルケルは恨めしそうに見ていた。



 そんな感じで全員がくじを引き終わり、対戦相手が決まった。


 アウレラのほかにもう一人、女性の冒険者のアニタがいたので、そこはトキオの一存でアウレラと組ませた。

 アウレラやアニタと試合ができるかもと思っていたのか、不満そうな顔をしている者もいたがトキオはわざと気づかないふりをした。



 ふと、トキオが入口近くの壁際を見ると、クロアとミレリアが座っていた。

 クロアは、皆がここに来たので興味を引かれてやって来たようだった。

 ミレリアは、冒険者の全員が討伐に出かけたか柔道教室に来ていて手が空いたので、練習試合の見物に来たようだった。


 どうやら、クロアが初めて見る柔道教室について色々と聞いているようで、ミレリアは微笑みながら説明していた。



「それじゃあ、始めるよ。俺が審判をやるから、最初の対戦相手のパーシーとエドは真ん中に出て」


「よっしゃあ!」

「まかせろ!」


 二人とも初めての試合のせいか、相当に気合が入っていた。

 特にエドは、両手の拳をしっかり握ると両肘を後ろに数回引いて気合を入れているようだった。



 訓練場の中央、試合場の広さ程度には、柔道教室を始めてからから1カ月経過したぐらいから畳に似た敷物が敷いてあり、安全に柔道の試合ができるようになっていた。



「はい、そのくらいで一回止まって。では・・・互いに礼!」

 トキオは柔道の試合の作法に則って思わずそう言ったが、二人には通じたようで、チラッとトキオを見てからお互いの方を向いて礼をした。


「はじめ!」


 トキオがそう開始の声を上げると、


「行くぜ!」

 エドが、大きな声でそう怒鳴ってからパーシーに突進した。


 しかし、組み付いたと思った瞬間、パーシーに払腰はらいごしで派手に投げ飛ばされて仰向けに畳の上に転がった。


「1本!」


 トキオは、右手を高く上げて大きな声で言った。


「あれ?」


 エドが呆然としてそう言った途端、場内は爆笑に包まれた。


「気合だけかよー!」

「早すぎるぞー!」


 皆、楽しそうに罵声を飛ばしていた。



 エドが投げられた瞬間、小さな悲鳴が上がったのでトキオはそっちを見たが、それはクロアだった。

 柔道の試合は初めて見たからか、かなり驚いた表情をしていた。




 そんな感じで練習試合は進んだが、1試合目を見たせいか2試合目からは、皆、少し慎重になってそれなりに時間がかかり、2分に設定した制限時間を使い切って勝負のつかなかった試合もあったが、その試合については皆から激しいブーイングが出た。


 でも、そのブーイングも楽しそうだった。



 アウレラとアニタの試合が一番白熱して、この日は女性はこの二人だけだったので、声援も盛大に飛んだ。

 トキオが感じた限りでは、やはり、美人のアウレラの人気の方が高いようだった。


 その試合は、制限時間ぎりぎりのところで足技でバランスを崩されたアニタに、体を浴びせるようなアウレラの大内刈が決まって決着がついた。


「やったー!」

 アウレラは大喜びで両手でガッツポーズを決め、それを見た観衆から大歓声が上がった。


 その直後、すごく嬉しそうな顔でアウレラがトキオを見たので、トキオはかなりドキッ!とした。



 最後の試合は、マルケル対テリットだった。


 二人とも、このギルドでは一目置かれている存在なので、皆の視線はかなり期待のこもったものになった。



 そして、その期待通りにレベルの高い試合になった。

 互いに大技を何度もかけ、それをまた互いが躱すという展開で決着は終盤にもつれたが、最後はマルケルの内股が決まって勝負が決まった。


「うっす!」

 マルケルは嬉しそうに右手で軽くガッツポーズをしてからテリットの右手を掴んで助け起こした。

 テリットは実に悔しそうな顔をしていた。



「はい!これで終わり。お疲れさまでした」


 トキオがそう言うと、皆から拍手が起こった。



「で、トキオ先生の見立てでは誰が一番上達してる感じなんだ?」

 ブロームが聞いて来た。


「え?・・・うーん、そうだなあ。やっぱり、マルケルとテリットだね。かなり柔道の技が身についてる感じがしたよ」


「お!そうか!じゃあ、テリットに勝った俺が一番か?」

 マルケルが嬉しそうな顔で言った。


「うーん、パーシーは早すぎてよくわからなかったけど、まあ、今日のところはそれでいいんじゃない。でも、これから他の人も上達していくと思うから、のんびりしてるとすぐに抜かれちゃうよ」

 トキオはニヤリとして言った。


「う、そ、そうか。じゃあ、俺も今まで以上に頑張るぞ!」


 その様子を、皆はニヤニヤして見ていた。


「じゃあ、とりあえず一番のうちに・・・・・トキオ、俺と試合をしてくれよ」


「え?・・・うーん、俺はいいけど、まだやめといた方がいいんじゃない?」

「お?それは、俺じゃあ全然相手にならないってことか?」

「まあ、はっきり言っちゃうとそうだね」

「く・・・。まあ、それでもいいや。どのくらい違いがあるのかを肌で感じるのもいいからな。だから、手加減しないで相手してくれよ」

「わかったよ」


 そこで、皆から拍手と歓声が起こった。


「じゃあ、俺が審判をやるよ」

 テリットがそう言って手を挙げた。


「悪いね。よろしく」


 トキオはそう言うと、マルケルと中央に出て向かい合った。

 皆からは盛んに声援とヤジが飛んだ。


「それでは・・・はじめ!」


 開始の合図がかかると、マルケルはゆっくりと前に出たがトキオは構えをとっただけでその場に立ったままでいた。


 マルケルは、突然ダッシュしてトキオの胸元を掴もうとしたが、次の瞬間には仰向けに床の上に転がっていた。

 あまりの早業に、皆、息を飲んで静まり返った。


「な・・・うそだろ?」

 マルケルは、一瞬、呆然としたが、すぐに立ち上がってトキオに向かい合った。


「もう一回だ!」


 マルケルはそう言うと、今度は先ほどより慎重にトキオににじり寄り、右手を伸ばそうとしたところでトキオが前に踏み込んでその右袖を下から掴み、袖釣込腰そでつりこみごしで豪快に投げ飛ばした。


「くそ!もう一回だ!」


 マルケルは、また、すばやく立ち上がると向かって行ったが、今度はトキオの方から懐に飛び込み、背負投せおいなげで、これも豪快に投げ飛ばした。



 マルケルは、もう、立ち上がってこなかった。


 観衆の何人かから「ふうー」というため息のようなものが漏れた。


「俺が何年柔道をやってると思ってるの。初めて数か月の人じゃ無理だって」

 トキオは微笑んでそう言いながらマルケルの手を引いて助け起こした。


「参りました!」


 そう言いながらマルケルが最敬礼をすると、そこでやっと皆から笑いが漏れた。

 そして、同時に盛大な拍手が起こった。


「そりゃそうだよな」

「俺らの剣や弓だって同じじゃねーか」

「まったくだ」


 皆は口々にそう言った。



「でもさあ、本当に誰が一番かってのは気にならないか?」

 自分の評価が保留になった感じのパーシーが言った。


「確かに」

「でも、どうやってやる?」


 皆からそんな声が漏れた。


「じゃあ、柔道大会と称してトーナメントやろうか」

 トキオが言った。


「トーナメント?」

 テリットが聞いた。


「うん。今日は8試合やったけど、その1試合目と2試合目の勝者同士が試合して、次に3試合目と4試合目の勝者が試合してって感じで、最後の一人が勝ち残るまでやるんだよ」


「おお!そうか!」

「いいなそれ!」

「面白そうだ!」


 皆から賛成の声が上がった。


「でも、今日の16人でも15試合やる必要があるからかなり時間かかっちゃうんだよね。朝の柔道教室の時間じゃ無理だなあ」


「だったら、聖光祭のときにやればいいじゃないか」

 テリットが言った。


「せいこうさい?」

「あれ?トキオは聖光祭を知らないのか?」

「うん、ごめん」

「来週の12月12日は、8賢神がこの世界を作ったとされる聖光教団の祭日で、国中が休みになるんだよ。でも、トキオの村ではそうじゃないってことは、国中全部じゃなかったんだな」

「あ、そうなんだ。うん、うちの村では特にそういうのはなかったね」


「とにかく、その日ならみんな休みだから時間はあるぞ」

「そう。じゃあ、その日にやろう。ミレリア、ここを使っても大丈夫?」


「は、はい。冒険者の皆さんのための施設ですから遠慮なくどうぞ」

 突然話を振られてミレリアは一瞬驚いた顔をしたが、すぐににこやかな顔になるとそう答えた。


「よし!決まりだな!みんないいか?」


「おう!」

「もちろんだ!」

「今度はやるぞ!」


 皆は嬉しそうにそう答えた。


「わかった。じゃあ、俺が計画と準備をするよ。ミレリア、ちょっと手伝ってくれる?」

「はい、喜んで!」

 トキオの問いかけに、ミレリアは満面の笑みで答えた。



「トキオ、すまんな。じゃあ、そろそろ仕事に行くか」

「おう!」


 テリットの言葉に皆が答えて解散になった。




 トキオは、試合中も時々クロアを見ていたが、初めて見た柔道の試合に圧倒されたのか、結局、終始無言で皆と一緒に訓練場を出て行った。


(みんなのスゴさがちょっとは分かったってことかな?このまま大人しくなるのかな・・・いや、ないか。てゆーか、大人しくなったら面白くないな)


 トキオは、最後尾からクロアの後姿を見ながら、ニヤニヤした顔でそんなことを考えてギルドの建物に戻って行った。


柔道の技がイメージできない人もいると思いますので、Youtubeのリンクを貼っておきます。


◆払腰

 https://www.youtube.com/watch?v=bLP22NDgoZE


◆大内刈

 https://www.youtube.com/watch?v=STuiqaqhalw


◆内股

 https://www.youtube.com/watch?v=sgZvlylbW3g


◆袖釣込腰

 https://www.youtube.com/watch?v=iVtN9OZl71o


◆背負投

 https://www.youtube.com/watch?v=ONALjvQ_xqA

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ