第39話 フーゴの提案
ここのところ、ちょこちょこ以前に投稿した部分を改訂してますが、前書きに何も書いてない場合は、タイプミスの修正、段落変え、軽微な文章修正ですので、内容は基本的に変わらないです。
※最後の一段落の入れる場所を間違えてたので、少し前に移動しました(2020/11/26 17:53)
トキオは、討伐から戻るとフーゴの店に行った。
フーゴは、弾丸1発ずつで4体のグリベラーを簡単に仕留められたと聞いてとても喜んだ。
「そうか!そんなにスゴイか!こりゃ、作るピッチを上げないとな!」
それからトキオは、今作っている拳銃をテリットとブローム用にキープしてくれと頼んだ。
フーゴは、さっそく2つ予約が入ったことを喜んだ。
次にトキオは、自宅に戻るとアウレラ用のやや小型の拳銃の図面を描き始めた。
パーツを極力トキオの拳銃と共有できるようにして、本体を小型化して軽くすることを考えながら描いた。
また、口径も小さくしたが、あまり威力を落としても役に立たなくなるので、トキオの拳銃が.44口径相当だったのに対し.38口径相当とした。
(女性の冒険者もいるのは分かってたんだから、俺の拳銃を作ってもらってる間に考えておくべきだったな。ちょっと失敗したな)
(それから、いつも今日ぐらいの距離から撃てるとは限らないから、もっと射程の長いものも作らなくっちゃ・・・ブロームがガッカリしそうだけど・・・あ!ブロームにこっちの銃のエキスパートになってもらえばいいじゃないか!よし!)
次の日が休日だったので、トキオは、結局、朝までかかって2枚の図面を仕上げた。
少し時間が早かったこともあり、「食い道楽」で朝ご飯を食べてからフーゴの店に向かった。
「おはよー」
そう言って店に入ると、すぐにフーゴが出て来た。
「おや?こんなに早くにどうした?」
「新しいデザインの銃を二つ作ってもらいたいんで、そのお願いに来たんだよ」
「ほう。手に持ってるのがその図面か?どれどれ」
フーゴは、トキオから銃の図面を受け取るとカウンターの上に広げた。
「ふうん、前のより少し小さい拳銃ってことだな」
「そう。力の弱い女性用にと思ってね。まあ、力の弱いとは言っても冒険者の中ではってことだから、下手な男たちよりは力はあると思うけど」
「まあ、そうだな。こっちはわかった。それでもう一つは・・・お!?」
フーゴは興味を引かれたのか、しばらく図面に見入っていた。
「・・・これは、長い距離を狙うための銃か」
「さすがだねえ。その通りだよ。それと、銃身が長くなったことで安定性とスピードも上がるから、威力と命中率も高くなるんだよ」
「ああ、なるほどな」
「拳銃より弾の長さの自由度も上がるから、長くして火薬量を増やした弾を使うこともできるようになるよ」
「ほーう、言われてみればそうだな・・・そうか、これならば!」
「ん?どうしたの?」
「いや、この間、オークに突然襲われて集落が全滅したことがあったろう?」
「ああ、あれは俺もショックだったね。討伐はしたけど、殺された人たちは帰って来ないし」
「そこなんだよ。冒険者のみんなが日々討伐してくれてるのは有り難いんだが、ああいうケースは警戒していてもどうしようもない場合がある」
「残念ながらそうだね」
「そうなると、自衛力を高めるしか方法がないんだが、普通の住民に魔物を撃退できるほどの戦闘力を付けさせるのは、仕事もあるからかなり難しい。やれるとしたら、お前さんたちが少し前から始めた、子供たちに格闘技や武器の扱い方を覚えさせる方法だが、これはすぐには効果が出ない。上達しても、所詮は子供だから成長してからでないと魔物とはなかなか戦えないだろう」
「確かにね」
「でも、この銃があれば、住民でも魔物を撃退できるんじゃないかと思ってな」
「ああ・・・確かにその通りだね!俺は、冒険者の戦闘力を上げることしか考えてなかったけど、住民に待たせれば自分でも守れるようになるよ。少なくとも、数体で畑を荒らしに来たりする動物型魔物なら、グリベラーでも撃退できる可能性があるね」
「そうだろう?だから俺は、これを大量に作って、なるべく多くの住民が持てるようにしたいと今思ったんだ」
「それはすごくいいね!・・・でも、大量っていったって、ここにいるのはフーゴとお弟子さんの2人だけでしょ?限界があるんじゃない?」
「ああ、そこが問題なんだよ。だからもう、売上独占なんて言ってられないから、この街の他の鍛冶屋にも頼もうと思って」
「うん、それがいいね。それと、一部は外注できるんじゃないかな?」
「外注?」
「拳銃の木のグリップや、皮のホルスターもここで作ってるんでしょ?それを、建具屋や皮を加工する業者に頼んでみたらもっと早くなるんじゃないかと思って」
「その通りだな!それもやろう!」
「じゃあ、俺からもギルドに協力してくれるよう頼んでみるよ。ギルドから依頼を出して貰った方が、業者も受けてくれやすくなるんじゃないかな?」
「ああ、きっとそうだな!そっちは頼む」
「了解」
トキオは、動物型の魔物の討伐だと困難さを感じたことはほとんどなかったので、つい最近まで冒険者でいることが楽しいだけだったが、人型魔物と魔獣の連続出現で、ここのところは「住民を守る」ということについてかなり不安が増して来て気分的にモヤモヤしていた。
しかし、このフーゴの話は、その不安をかなり消し去ってくれるものだったので、気分的にスッキリすることができた。
「でも、そうなると、住民にも銃の撃ち方を教えなくちゃならないなあ。こりゃ、大変だ」
そう言ってトキオは苦笑した。
「各集落から代表者を一人か二人出させて、トキオはそいつらだけに教えて、集落の他の住人に教えるのはそいつらに任せるってのはダメなのか?」
「あー、基本的な撃ち方を覚えたあとなら可能かも。さすがに住民全員に一度に教えるのは無理だから、それでいくしかないね」
「お前も大変だろうが、よろしくな」
「柔道教室が週に2日になったから、その他の日にやればいいでしょ。場所は、街の外の魔法練習場が広さ的にもいいかな。的とかの設備もギルドにお願いしてみよう」
「ああ、それがいいな」
「じゃあ、俺はこれで。それじゃ、その2つの銃をよろしくね」
「わかった」
「あ、長い方の銃・・・ライフル銃って言うんだけど、それは外注とほかの鍛冶屋に依頼する話が整ってからになると思うから、まずはアウレラ・・・女性用の銃の方をお願いね」
「なるほど、こっちは元々はアウレラ用に考えたってことか」
「まあね。自分だけ持ってないと機嫌悪くなりそうだからね」
「違いない」
そう言って、フーゴは笑った。
トキオは非番だったが、帰る途中でギルドに寄ってフーゴと話したことを支部長に依頼した。
支部長は、昨日、グリベラーを一撃で仕留めた拳銃の威力を聞いていたので、喜んで引き受けてくれた。
訓練場の改装資金はトキオが出すと言ったが、これは住民全員の安全のためだから、ギルドで負担すると言って支部長は譲らなかった。
ただ、住民への射撃訓練はトキオしかできないから、受講料はギルドで出すのでそっちで力を貸してくれと言われた。
トキオは、元々そのつもりだったりで快く承諾した。ただ、住民のための金は取れないと、受講料については辞退した。
事務所を出ると、受付にいたミレリアから、
「トキオさん、期待してます!頑張ってください!」
と、言われた。
どうやら、今の話を立ち聞きしていたようだ。
そのまま帰ろうとしたら、ギルドの中にいた冒険者が寄って来て、拳銃のことを色々と聞かれた。
すでに、昨日の討伐のことが知れ渡っていたらしいが、少し誇張されている気がした。
「で、その拳銃ってのはどういうんだよ。見せてくれよ」
「あー悪い。今日は非番だから持って来てないよ」
その言葉で、全員がすごくガッカリした顔をした。
「でも、明日は持ってくるからその時に見せるよ」
その言葉で、今度はすごく嬉しそうな顔になった。
(みんな子供みたいだな。まあでも、わかる気はするな)
「実は俺、今朝、フーゴに注文して来たんだよ!」
パーシーが言った。
「抜け駆けかよ!ズルいぞ!」
「ひでえ!」
皆から罵声が飛んだ。
「ちょっと、ちょっと。撃ち方も知らないのに気が早すぎない?」
トキオは、苦笑しながら言った。
「あ、そうか!そういえば、実物を見てないからカタチもわかんないな」
パーシーのその言葉で、皆は爆笑した。
「しかし、拳銃本体より、弾丸が高かったのには驚いたな」
「火薬が高価だからね。しょうがないよ」
「まあ、そうだな。でも、グリベラーを簡単に討伐できるようになればお釣りがくるな」
パーシーはにやけた顔で言った。
他の皆も、金貨を思い浮かべたのか、にやけた顔をしていた。
(みんな、そっちがメインの目的じゃないの?)
そう考えてトキオは苦笑した。
トキオはアパートに帰ると、徹夜明けだったせいで、そのまま夕方まで爆睡してしまった。
次の日は、訓練場改装の打ち合わせのため討伐の仕事は休んだので、申し訳ないとは思いながら討伐には3人で行ってもらった。
3人からは嫌な顔をされるどころか、訓練場の設営とこれからの訓練指導を頑張ってくれと励まされた。
トキオはその言葉を聞き、少し気が引き締まる思いがした。




