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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第1章 アティム編
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第32話 ゴブリン討伐と新技

 ギルドに戻ると、非番の者も含めて残りの冒険者が全員待っていた。

 支部長、ミレリアを含めた、ギルド職員の姿もあった。


「おお、戻ったか。どんな状況だ」

 ギルドに入るとすぐ支部長が聞いて来た。


「確認できたのは5体で、それはすべて倒した。洞窟があって、そこを住処にしていると思われるが、何体いるかは今のところ不明だ」

「そうか・・・こっちでもあのあたりに詳しい人間がいないか確認したところ、パーシーの親戚があの近くにいて、パーシーが子供の頃によくあの辺りで遊んだってのがわかった」


 支部長がそう話すと、パーシーが地図を持って前に出て来て、その地図をテーブルの上に広げた。


「アウレラから聞いた位置から推測すると、多分、ここにある洞窟だと思うが、どうだ?」

「ああ、そうだ。そこだ」

「そうか・・・となると、少し面倒だな」

「そうなのか?」

「このあたりに魔物が出没するようになる前の話だが、この洞窟はいいキノコが採れるんで、伯父さんに連れられて従弟たちと何度も入ったことがある。中は結構長く続いていて、出口が他に2つあるんだよ」


「そうか・・・確かにそれは面倒だな」

「それと、途中に2か所ほど少し広くなってる場所があるから、ゴブリンはそのどっちかを住処にしてると思う」


「なるほど、わかった。で、支部長、どういう作戦で行くんだ?」


「すでにみんなと話したんだが、ゴブリンは夜目が利くので夜に動くのは危険だから、とりあえず、パーシーのパーティーを伝令役として行かせて現地にいるパーティーに他の出口の場所を教えて、このまま夜半まで見張りをしてもらう。この中の3パーティーには、まず、仮眠を取ってもらって、あとで現地の見張りと交代してもらう。残りのパーティーと、戻って来たマルケルたちの3パーティーは、一旦家に帰って睡眠をとってもらって朝5時に集合だ。現地に行ったら、3か所から同時に入ってゴブリンたちを殲滅する」


「なるほど、わかった。了解だ」


「さあ、そういうことで明日は早いから、今日は早く家に帰って十分睡眠をとっておいてくれ」

「了解!」


 支部長の言葉に皆が返事をして、とりあえずその場は解散した。


 トキオがちらっとミレリアを見ると、いつもは魔物の討伐の話にも表情を変えない彼女が、さすがに今日は不安そうな顔をしていた。

 しかし、トキオの視線に気づくと、にっこりと微笑んでから事務室の方へ入って行った。




 次の日の朝、トキオが4時半頃にギルドに着くと、すでにほとんどのパーティーが来ており、テリット、ブローム、アウレラの姿もあった。


「おはよう。みんな早いんだね」

「ああ、おはよう。誰が言いだしたわけでもないが、こういう時はみんな早めに来るんだよ」

「そうなんだ。遅くなってごめん」

「いや、まだ30分前だからな。出発するまでに準備が整ってれば全然大丈夫だ」

「そうよ。トキオは初めてなんだからしょうがないわよ」

「そうそう」


 皆、優しかった。

 トキオは、改めて(いいパーティーに入れて良かったなー)と、思った。



 5時10分前になったところで、支部長とギルドの職員が事務室から出て来た。

 男性職員二人とミレリアは、手に一つずつ時計を持っていた。


「みんな、こんな朝早くからすまない。街を守るためにも、今日はミスのないように慎重に行動してくれ。長丁場になりそうなら後で食料を差し入れる。とりあえず、各配置場所のメインリーダーにはこの時計を配る。時間は合わせてあるから、5時30分になったら突入だ」

「了解!」


 テリットが、昨日発見した入口のメインリーダーになっていたので、時計の一つをブロームが受け取った。



 この世界にも時計はあった。

 ただし、腕時計のような精巧なものは作れないらしく、一番小さいものでも、目覚まし時計ぐらいの大きさだった。

 今配られたのは、それよりも少し大きな時計だった。



 5時になると、一番遠い入口の担当になっているパーティーから順次出発して行った。


 トキオたちのパーティーが最後に出発した。



 街の中を歩いていると、住民の多くが家の外に立って冒険者たちを無言で見送っていたので、トキオは少し驚いたが、他の冒険者たちに特にそんな様子はなく、それが今までもこういうことがあったことを物語っていた。


 人型の魔物が街の近くに現れるのは初めてのはずなので、たぶんそれは、グリベラーなどの大型の動物型魔物か、他の動物型の魔物が大量に現れた時だったのだろうと推測した。



 ほとんどの人が、期待と不安が入り混じった表情をしていて、中にはあからさまに怯えた表情をしている女性もいた。


 トキオはこういうシーンに初めて出くわしたが、冒険者が街の人たちにいかに頼りにされているかを再認識し、少し気が引き締まる思いがした。




 現地に着くと、ハイケルのパーティーが見張りについていた。


「ハイケル、ご苦労さん」

「ああ、テリット。来たか」


「状況はどうだ」

「3度、2、3体ずつ外に出て来たが、お前たちが倒したゴブリンの血はマルケルたちが砂をかぶせて消しといてくれたから、しばらくうろうろすると戻って行ったよ。他の場所にいる者たちは、何かあったら知らせが来ることになっていたが、誰も来なかったので何もなかったんだろう」

「そうか。じゃあ、あとは俺たちがやるから下がっていてくれ」

「了解だ。気を付けてな」

「ああ、ありがとう」


 ハイケルたちが後方に下がると、テリットとニコラというリーダーのパーティーの都合7人は、藪の陰に固まって座った。

 そして、その7人全員が見える位置にブロームが時計を置いた。




 5時半になった。


「行くぞ」


 テリットが静かにそう言うと、全員立ち上がって洞窟の入口に向かった。



 洞窟へはテリットが先頭で入り、ブローム、アウレラ、トキオの順で進み、その後ろにニコラのパーティーがついて、ニコラが殿しんがりになって後方を警戒しつつ進んだ。


 先頭のテリットと殿のニコラは松明を持っていたが、各人が少し間隔をあけて歩いていたこともあり、ちょうど真ん中になったトキオは少し暗くて足元が良く見えなかった。


(うーん、暗くて足元が不安だなあ・・・あ、そうだ)


 トキオは、左手を水平に上げて人差し指を突き出すと、その先端に火炎魔法で火を灯した。


 後ろを歩いてたニコラのパーティーは、皆、驚いて一瞬足を止めたが、火炎魔法だと気づいてすぐに歩き出した。



 アウレラは、背中のあたりが急に明るくなった気がしたので振り返ったら、トキオの指先が燃えていたので驚いた。


(トキオ!その指どうなってんの!?)

 アウレラは小声で聞いた。


(え?・・・ああ、これは火炎魔法の応用ね。これも練習しといたんだよ)

(そういうのは先に教えといてよ。ビックリするじゃないの!)

(ごめん、ごめん)


(どうした。何かあったか?)

 先頭のテリットが、少しだけ顔をこっちに向けて、目は前を見たまま聞いた。

 そのため、トキオの火炎魔法には気づかなかった。


(いや、大丈夫だよ)

 トキオが答えた。


(そうか。あまり大声出すなよ)

(わかってる)



 その後は、また、皆、無言で進んだ。



 それからかなり進んでも、ゴブリンのいる気配も、いた痕跡も見つからなかった。



 さらに進むと分岐があった。


 そこに立って耳を澄ませると、右の方からかすかにゴブリンの声と、戦闘をしているような音が聞こえてきた。


「こっちらしいぞ!」


 それを聞いて、後方にいたニコラたちは前に出て来た。


「いや、待てよ。全員がこっちに行っちまうと、左側にもいた場合、逃げられる可能性があるな」

「じゃあ、人数の少ない俺たちが右へ行くよ。誰かすでにゴブリンと戦っていて、その分人数が増えるわけだから俺たちの方がいいだろう」

「そうだな、そうしてくれるか」


 そこで分かれて、テリットたちは左へ進んだ。

 トキオは最後尾になったので、火炎魔法を指に灯したまま、後方を警戒しながら進んだ。


 しばらく進むと、何やら物音がして、ゴブリンの声らしきものも聞こえて来た。


「いるぞ!注意しろ」

 テリットがそう言うと、皆、足を止めて身構えた。

 テリットは、見られないように松明を岩陰に置いた。


「しかし、暗くてよくわからんな・・・って、トキオ、その指なんだ!」

 そこで初めてトキオの火炎魔法に気付いたテリットが驚いた声を上げた。


「火炎魔法の応用なんだって」

 アウレラが答えたが、その直後、複数のゴブリンがこっちに向かって走ってくる足音が聞こえて来た。


「テリットが大きな声出すから気づかれたじゃないの」

「あ・・・すまん」


「しかし、暗くて見えないな。ヤツらは見えてるだろうから不利だぞ」


「みんな、脇にどいて目をつぶって」


 トキオのその声で、他の3人は素早く左右の壁に寄って目をつぶった。


「はっ!」


 トキオも目をつぶって右手を前に突き出すと、小さ目の火球がゴブリンの方に向かって飛んで行った。


「ギャア!」


 ゴブリンの声がしたので皆が目を開けると、ゴブリンが2体炎に包まれていた。

 もう一体いたが、間近で見た火球に目がくらんだようで、足元の岩に足を引っかけて転倒した。


「しめた!」


 テリットが、燃えているゴブリンを遮らないように倒れているゴブリンに向かって走ると、ブロームが立て続けに矢を2本放って、燃えているゴブリンを仕留めた。


 その直後、テリットが倒れているゴブリンの頭に剣を突き立てた。


「よし!」


 テリットはそう言うと、剣を抜いて辺りを警戒した。


 トキオとアウレラは、トキオの小さな火炎を頼りに後方を見たが、何も見えず音も聞こえなかった。


「ここには、こいつらだけのようだな。よし、先へ行こう」



 4人はまた歩き出したが、しばらく行くと足音が聞こえて来た。


「いたか?」

 ブロームが言ったが、

「いや、あれは人間の足音だな」

 テリットがそう答えた。


 もう少し進んでから、

「おい、こっちはテリットだ」

 と、テリットが前に向かって言うと、

「おう!俺だ、俺」

 と、エドの声がした。


「おお、エドか」


 そのまま進むとエドともう一つのパーティーが現れた。


「そっちはどうだった?」

 テリットが聞いた。


「ずっと1本道だったよ。途中にゴブリンがいた痕跡はあったが、ゴブリン自体はいなかったな」

「そうか。こっちは途中で3体倒してきた」

「あ、そんなもんだったか。じゃあ、あとは残りの組か」

「応援が必要かもしれん。場所はだいたい分かるから戻ろう」

「わかった」


 それから、全員で先ほどの分岐のところまで戻ると、ちょうど、ニコラのパーティーとマルケルらの2パーティーがやって来るところだった。


「お?終わったのか?」

「ああ、5体いたが、簡単に片付いたよ」

「そうか。こっちにも3体いて片付けた」

「これで全部かな」

「一通り見たから多分そうだな」

「じゃあ、戻るか」



 外に出るとマルケルが言った。


「トキオ、実は、支部長から、討伐が終わったら、またこの洞窟を使われないように入口を潰してくれって言われてるんだ。お願いできるか?」

「そうなんだ。わかった。じゃあ、みんな下がって」


 全員が入口から離れると、トキオは大きな閃光魔法を放って入り口を潰した。


「うわ!すっげー!なにそれ!?」

 他の長期討伐で出かけていてオークの討伐に参加しなかったエドが目を見開いて驚きの声を上げた。


「トキオだからな。もう驚くな」

 テリットがそう言うと、皆が笑った。


 それから、他の2か所にも周って同じように入口を潰した。


「あ!しまった!」

 3か所目を潰し終わった瞬間、テリットが叫んだ!


「どうした?」


「ドロップアイテムの回収を忘れた・・・」


「あ゛・・・」


 全員、絶句した。

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