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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第1章 アティム編
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第25話 小さな冒険者たち

後半の魔法練習部分がちょっと説明くさかったので、会話と思考形式に手直ししました(2020/11/11 12:49)。

うーん、なかなか難しいw

 柔道の技が冒険者たちの身についてくると、トキオは空手と合気道も教えるようになった。


 この世界の冒険者たちにも素手によるパンチや蹴りのスキルはあったが、以前、テリットから聞いた通り、道場で教えるという文化がなかったため自己流の者がほとんどで、実戦で見かけるたびに(惜しいなあ)と思うことが多かった。

 そこで、もっと効果的に使えるようにと始めたのだった。


 教えるにあたってトキオが重視したのは、いかに相手の攻撃を受け流して自分の攻撃に繋げるかということだった。

 また、その際のターゲットとして人型の魔物を想定した。


 皆、以前より収入が増えて、より良質の武器が持てるようになったのと、武器に強化魔法をかけられることが分かったことで各冒険者が持つ武器の威力がかなり上がったので、動物型の魔物の討伐は、グリズラーも含めて大抵は武器だけでこなせるようになったからだった。


 そして、トキオが教えた格闘技の技が冒険者たちの身についてきて、討伐の際に有効に活用できるようになってくると、そのことを聞きつけて、うちの子供にも教えてくれと子供を連れてくる親が出てきた。



「トキオさん、お客さんですよ」


 その日の午後3時ごろ、トキオが討伐を終えてパーティーの皆と反省会という名のおしゃべりをしていると、ミレリアが微笑みながらやって来てそう告げた。


 誰だろうと思いながらトキオがギルドの入り口に行くと、そこには小学校低学年ぐらいの子供を一人ずつ連れた、母親と思われる女性が5人いた。子供は、4人が男の子で、一人が女の子だった。


「あー、トキオだー!握手して―!」

 子供たちは一斉にトキオに寄ってくると、皆、握手を求めた。



 トキオは今や街中では知らない者はいないぐらいになっていたので、街を歩いていても子供に声をかけられることが多くなっていた。


「あ!トキオだー!」

「今日もがんばってー」


 そんな感じで声をかけられるたびに、トキオはほほ笑んで手を振っていた。

 最初のころは戸惑いと恥ずかしさから照れながら苦笑いをしていたが、そのうち慣れて素直にほほ笑みを返せるようになった。


「しかし、『ライキリ』カッコいいよなー!俺もあんな剣欲しいなー」

「ばか!あれは刀って言うんだよ」

「あ、そうだ!俺もあんな刀欲しいー!」

「俺もー」


 トキオの「ライキリ」は子供たちに大人気で、トキオは「ライキリ」を褒められるたびに嬉しくなって、ついにやけてしまうというのが、ここ最近、よくあるパターンだった。




 この日ギルドにやって来た子供たちにトキオが、一人ずつ握手していると母親の一人が言った。

「ここで冒険者の方に格闘技を教えてると聞いて来たんだけど、うちの子にも教えて貰えないかと思ってみんなでやって来たのよ」


「ええっ!?」

 トキオは予想もしていないことを言われて驚いた。


「いえね、子供たちはトキオさんの大ファンで、自分も冒険者なるんだってきかなくて。それで、ここにいるみんなで話し合ったんだけど、何でもトキオさんが冒険者の皆さんに教えてる格闘技が魔物討伐にもかなり有効だって聞いたんで、もし、魔物に襲われても少しは自分で身を守れるようになるんじゃないかって思ってね。それと、将来的に冒険者になればこの街を守る手助けができるかな、って思って」


「そうなんだ・・・キミたち、冒険者になりたいの?」

「なりたいー!」

「どうしてなりたいの?」

「かっこいいからー!」


 それを聞いてトキオは少し笑ったが、考えてみれば自分も同じ動機だったから、この子たちのことは笑えないなと思った。


「動機はわかったけど、冒険者になるってことは身の危険にさらされる確率も増えるってことだよ。そこはいいの?」

「そこも話したんだけど、最近は人型の魔物もこの近辺に出没するようになったでしょ?そうなると、この子たちが大きくなる頃には、冒険者じゃなくても魔物に襲われる確率はかなり上がってるんじゃないかと思うの。だから、それなら冒険者のスキルを身に付けさせて自分や家族の身を守れるようにした方がいいんじゃないかってことになったのよ」

 トキオは、言ってることには一理あるな、と思った。


「そう・・・わかった。引き受けるよ。でも、自分は冒険者の仕事があるし、子供たちは朝は学校に行くだろうから、午後4時ぐらいからでいい?」

「ホント!良かった!ありがとう!時間はそれで大丈夫よ」

「じゃあ、子供に教えたことはないから、どういう風に教えたらいいか少し考えたいんで、明日からでいい?」

「わかったわ。じゃあ、明日ね。他にも子供を習わせいって人がいるんだけど、連れてきてもいい?」

「いいけど、子供を50人とかはさすがに面倒見切れないので、そんなにたくさんは勘弁してね」

「あ、そんなにはいないから大丈夫よ」

「了解!・・・じゃあ、明日からガンバロウな」

 トキオはそう言って、子供たちの頭を撫でた。

「うん!ボク、がんばる!」

「ボクもー!」

「あたしもー」


 そうして、子供たちは母親に手を引かれてトキオに手を振りながら帰って行った。



「親子連れが来てたようだけど何の用だったんだ?」

 トキオがテーブルに戻ると、テリットが聞いてきた。

「うん、自分の子供にも格闘技を教えてくれないか、だって」

「あらー」

「そうかー」

「そうなったかー」


 トキオは苦笑いした。


「で、なんて答えたんだ?」

「自分で身を守れるようにして欲しいってことだから引き受けたよ。確かに、この世界じゃ子供の戦闘スキルを上げることはいいことなんじゃないかと思ってね。それと、子供を将来的には冒険者にしたいんだって」

「ええ!?危険だぞ」

「その考えはどうなの?」

 テリットとアウレラは驚いたが、ブロームだけは少し考え込んだ。


「それは、冒険者の収入が増えて安定した生活が送れる職業になったってことが大きいんだと思うぞ。魔王はどこにいるかさえわかってないらしいから、今後も今の状況が続くだろう。そうなると、冒険者の募集が減ることはないだろうから、それなら、確実に職にありつけて安定した収入がある冒険者にしようと考える親御さんが出て来てもおかしくないな。俺の嫁さんも、危険な割には収入が大したことないからもっと安全な別の仕事をしてくれって言ってたのが、収入がかなり上がってからは、どんどん行ってこいって言うようになったもんな」

 ブロームは、そう言って笑った。


「あー、そういうことなのかー。でもまあ、子供たちが強くなることはいいことだと思うから、俺、やっぱりやるよ」

「うーん、確かにな。今や、野外で作業をしているといつ魔物に襲われるかわからんから、少なくとも、小型の魔物ぐらいからは身を守れるようにしておいた方がいいな」

「確かにそうね。子供の頃の自分がもっと強ければ、家族を守れたかもしれないわね」

 アウレラはそう言って神妙な顔になった。


 テリットは、嫌なことを思い出せたなと思ったのか、話題を変えた。

「それにしても、トキオ先生、大活躍過ぎて大変だな。子供たちには武器の使い方も教えた方がいいと思うから、そこは俺たちと、他のパーティーにも声をかけて対応するよ。そうすれば、トキオも毎日は対応しなくてすむだろ?」

「ホント!それは助かるよ。ありがとう」

「わかった。あたしもやるわ」

「俺も手伝うよ」

「よろしくね」


 それからテリットが皆に声をかけて回ったが、自分の子供にも教えたいという冒険者もいたので、7人ほど名乗り出てくれた。これで、討伐からの帰りが遅くなった場合でも、誰かが担当できるようになった。


 その日は、それから全員で、子供に教えるにはどうやったらいいかという打ち合わせを遅い時間までやった。



 それでも、半分ぐらいはトキオが担当したので、以前より自分の時間が少なくなったけれど、刑事をやってた頃は夜遅くまで仕事をしてることがしょっちゅうだったし、憧れていた冒険者の仕事が楽しくてしょうがなかったので、元の世界にいた頃よりは全然楽だと感じていた。


 また、トキオ自身が子供のころから冒険者に憧れていたこともあり、その同じ思いを持った子が何人もいることが嬉しかったし、将来、彼らが腕利きの冒険者に育てば、それだけ皆の生命の危機が減るということだと思ったので、その点からも熱心に教えた。




 しかし、世界はその子たちが成長するのを待ってはくれず、それから、徐々にトキオの街の郊外でも人型の魔物が見られるようになってきた。

 冒険者のスキルが上がり、一日あたりの魔物の討伐数は確実に増えていたので、以前より増えるペースは落ちていたが、それでも減ることはなく、しかも、上位の魔人たちがそのことに気づいたのか、動物型の魔物より戦闘力が高い人型の魔物の比率が少しずつ高くなっているようだった。



(うーん、この先、人間よりはるかに大きいオーガやトロールが出てくると、刀や格闘技だけじゃ討伐が難しくなるかもなあ・・・魔法の威力を高められないかちょっとやってみるか。今までは剣士でやってくって意識が強くてめったに使わなかったから、練習ってものは1度もやらなかったけど、この状況じゃそうも言ってられないもんなあ)


 トキオは、驚かせてやろうと思ったので、パーティーメンバーには内緒にすることにした。


「ねえ、ミレリア、魔法の練習をするのにいい場所ってある?」

 その日トキオは、討伐が終わって早めの夕飯を食べたあと、ギルドに戻って来ていた。


「街の北東の隅に魔法用の練習場があります。強力な魔法を使いたい場合は、街の北門に出て少し北西方向に行ったところに周りが開けた場所がありますから、そこがいいと思います。魔法使いの方がよく利用されていますよ」

「そう、ありがとう!夜も使えるの?」

「大丈夫です。ほとんどの方が夕方までしかお使いにならないので夜は空いていると思います。魔法の訓練をするんですか?」

「うん。これから大型の人型魔物が出て来くると思うから、ちょっと用心のためにね」

「そうなんですね!頑張ってください!」

 ミレリアはそう言って、すごく期待のこもった顔をして、カウンター越しに身を乗り出してトキオの両手を掴んで来た。

「あ、ありがとう・・・あ、うまくいくかどうかわからないから、うちのメンバーも含めて他の人には内緒ね」

「わかりました!」

「じゃあ、行って来るよ」

 振りほどくようにミレリアの手を外すと、トキオは外に出た。


(なんかミレリア、俺に期待し過ぎてないか?ちよっと怖いな)

 トキオは、背中をブルッと震わせてから北東の練習場へ向かった。

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