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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第1章 アティム編
24/551

第24話 トキオの新兵器

ジャンルを間違えて「異世界(恋愛)」にしてましたので訂正しました。

恋愛と言えるようなシーンはほんとのちょっとしか出てこないです(汗

 3週間後。フーゴの店。


「こんにちはー!」

「いらっしゃい・・・よっ!格闘王」

「もう!その呼び方やめてよ!」

「いやー、いい称号だと思うぞ」

「やだよ!やめないなら、もうこの店で何も買わないよ!」

「わかった、わかった・・・頼まれてた剣だな。できてるぞ」

「やった!ありがとう!」


 朝の柔道教室が終わったところで、フーゴの店から使いが来てトキオが依頼していた剣が出来上がったと聞いたので、トキオはそれを受け取りに来たのだった。

 今まで使っていた剣は、ギルドに預けて来ていた。


 フーゴは一旦奥に引っ込むと、黒い鞘に納められていて反りのある細身の剣を持ってきた。

「一応、鞘も含めて頼まれたとおりに作ったがどうだ?」

 フーゴはトキオに渡しながら言った。

「見た目はバッチリだよ!これこれ」

 トキオは、受け取ると鞘から抜いて目の前に垂直に立てて持ち、左右に返しながら全体をマジマジと見た。

「いいね!スゴくいいよ!刃文も切っ先の姿も申し分ないよ」

「気に入ってもらえて良かったよ。しかし、細身なうえ黒っぽい刀身で反りもある。見たことないデザインの面白い剣だよな」

「これは、剣じゃなくて刀って言うんだよ」

「カタナ?」

「そう、刀・・・・ちょっと振ってみたいな。これ持ってて」

 トキオはフーゴに鞘を渡すと店の外に出た。

 フーゴもついてきた。


 トキオは、近くに人がいないことを確認して、まず、正眼に構えてから刀を上下、左右と何度か振った。そのたびに、「ヒュッ!ヒュッ!」という空気を割く鋭く澄んだ、かなり大きな音がした。


 その音を聞きつけて、向かいの並びや両隣の店の人たちが外に出てきたり、窓から顔を出したりして、手を止めてトキオを見つめた。


「いやあ、俺も出来上がってからバランスを見るために何度か振ってみたが、本当にいい音がするよな。ほら、みんなその音に聞き惚れてるぞ」

「え?」

 トキオが周りを見ると、かなりの人がトキオを見つめていたので驚いた。


「うわ!恥ずかしー・・・でも、もう少し」

 トキオは、今度は素早く踏み込んで突きを放ったり、下がりながら斜めに切り上げたりと、実戦を想定しているような動きで刀を振るった。それから、徐々にスピードを上げ、細かく動きながら色々な振り方をした。


「素晴らしい!」

 誰かが大きな声で言った。

 その途端、見物人から徐々に拍手が起こって全体に広がっていった。

「トキオー、頼んだぞー!」

「この街を守ってくれよ!」

 皆がさらに声をかけてきた。


 トキオは、動きを止めて一礼するとフーゴの店に入った。平静を装っていたが、内心、とても気恥ずかしい思いだった。


「なんで俺の名前知ってんのかな?」

「何言ってんだ。あれだけ活躍して色々な情報をみんなに教えてくれたんだから、今やお前はこの街で一番の有名人だよ」

「ええー!?・・・知らなかった」

「もう少し自覚した方がいいぞ」

「うーん・・・あ、この刀、とてもいい出来だよ。今までの剣に比べて格段に振りやすい」

「そうか。気に入ってもらえて何よりだ。しかし、部位ごとに製法の違う素材を組み合わせて作るこの刀の構造はすごく興味深かったし、その組み合わせ方によって刀そのものの性質がかなり変化すると思うから、個人的にはもっと試してみたいと思うよ。今までも複数の素材を組み合わせることはあったが、ここまで細かく意識してやったことはなかったからな。まあ、今回は試作品みたいなもんだから、お前が本当に満足できる出来にはなってないかもしれないが、これから色々と試してみればもっといい刀ができるはずだ」

「そう、そうだね。今回は少し強度に重点をおいて作ってもらったけど、使ってみれば自分の求めるところがもっとわかるかもしれない。その時にまたお願いすると思うから、その時にはもっと素晴らしい刀ができることを期待するよ」

「ああ、了解だ」

「いけね、大事なことを忘れるところだった。これ、代金ね」

 トキオは、リュックから金の入った袋を取り出してフーゴに渡した。

 フーゴは中を覗き込んで確認した。

「確かに。毎度あり!」

「ホントにありがとうね」

「いやあ、これから俺のスキルも上がると思うから、今回の依頼はこっちも感謝だな」

 そう言ってフーゴはにっこりと微笑んだ。

「そうか。じゃあ、またね」

「ああ、またな。みんなが言ってたように、その刀で街を守ってくれよ」

「うん、頑張るよ」



 トキオは店を出ると刀を左腰に差し、歩きながら考えた。

(そうだ!コイツに名前を付けてやらないとだな!

 どうせなら天下五剣(注1)にあやかった名前にしたいけど、さすがに御物(注2)や国宝の名前を取るのは気が引けるなあ・・・そうだ!魔物を切る刀なんだから、雷様を切ったという伝説のある「ライキリ」にしよう!)


 そう決めると、それがすごく良い名前のような気がしてきた。

 自分の気に入った武器が手に入れられたこともあり、トキオは上機嫌でギルドに向かった。



 テリットたち3人は、トキオを待ちながら飲食コーナーで談笑していたが、トキオが満面の笑みで入って来たので少し驚いた。


「なんだトキオ、すごく嬉しそうだな」

「あ、わかる?フーゴに頼んでたのができて来たんだよね。ジャーン!」

 そう言いながら、トキオは刀を見せつけるように左腰をテリットたちの方へ突き出した。


「おお!できたのか!しかし、細くて反りのあるめずらしいカタチをしてるな」

「うちの村じゃこれが当たり前だったから、やっぱりこのカタチがいいよ。さっき、少し振ってみたけど、今までのより全然自分になじんでる気がしたね」

「へえ~。ちょっと抜いて見せてくれよ」

「うん」

 トキオは、嬉しそうに刀を抜くと横を向いて正眼に構えた。

「わあ~、キレイ~」

 アウレラが感心したような声で言った。

「そうなんだよね。これ、剣じゃなくて刀って言うんだけど、刀身の美しさも一つの特徴なんだよ」

「カタナか。うん、確かに美しいな。こんなの初めて見たよ」

「うんうん」

 ブロームも同意した。


 そこで、トキオたちの様子を目にして、まずパーシーが寄って来た。

「なんだい、その剣」

「カタナって言うらしいぞ」

 テリットが言った。

「カタナ?剣とは別物ってことか?ほほう」


「確かにきれいだな」

「細くて、背の方が黒くて、反りがある。カタチも面白いな」

 他の冒険者たちも寄って来て口々に言った。


「そんなに細くて、体の硬いオークとか切れるのか?」

 マルケルが聞いて来た。

「刀って、作り方によって色んな特性を持たせることができるんだけど、そこらへんは俺も考えたから、この刀は強度優先で作ってもらってあるんだ」

「そうなのか?あんまりそんな感じには見えないな」

「確かに厚い剣には負けるだろうけど、元々、剣が骨ごと砕く目的で作られてるのに対して、刀は切ることを目的に作られてるから、切ることに関しては剣には負けないよ」

「そうなのか?じゃあ、ちょっとやって見せろよ」

 パーシーが言った。

「構わないけど、できたばかりだからあまり硬いものは切りたくないなあ。まあ、とりあえず裏庭に行こうか」

 またしても、人に説明をする事態になったが、今日は自分の刀が出来上がったことが嬉しくて、トキオは少しも面倒だとは感じていなかった。


 裏庭に出ると棒術用に置いてあった棒が目に入った。

「このくらいなら大丈夫か」

 トキオはそう言いながら、隣にあった石でできた物干し台から支柱を引き抜くと、その棒をその台座に差し、その前に立った。

「お!ちょうど穴の大きさがぴったりだ」

「おいおい、その棒を切るつもりか?それは、ハードメイプルですごく固いし、その台座は大した重さじゃないから横から剣を当てたら台座ごとひっくり返るだけだと思うぞ」

 パーシーが言ったが、トキオは不敵な笑みを浮かべた。

「そうはならないから、まあ、見てて」


 トキオは刀を抜くと、少し右に倒して上段に構えた。それから、ゆっくりと一つ息を吐くと、

「だっ!」

 という気合の声とともに、目の前に立っている棒に向かって振り下ろした。


 その直後、二つの棒の切れ端が地面に落ちて行ったが、棒の下半分は台座と一緒に垂直に立ったままだった。

 その時、トキオの刀の切っ先は右下にあった。


 全員、息を飲んで沈黙した。


「すげえ・・・」

 しばらくの間のあと、パーシーが呟いた。

 それから、全員がざわざわと驚きの言葉を口にした。

「確かにすごい切れ味だ!剣だとここまで見事には切れないな」

 テリットが言った。

「見た目がキレイだし、あたしも欲しい!」

 アウレラが言った。

「俺も試してみたいな。ちょっと貸してくれよ」

「ダメだよ!出来上がったばかりで、まだ刀身がしっかり固まってないんだから。切れ味を見せるのもこれ1回きりね」

 パーシーが寄って来て手を伸ばしたが、トキオは刀を引いて拒絶した。

「なんだよー。ケチんぼ」

「ダメなものはダメ!」

 そう言いながら、トキオは刃こぼれがないことを確認してから刀を鞘に納めた。


「ねえねえ、あたしもそれと同じものをフーゴに頼んでいいかな?」

 ギルドの建物に戻る途中、アウレラが寄って来て聞いた。

「それは全然かまわないよ。フーゴはもっと作ってみたいって言ってたから、逆に喜ぶんじゃないかな」

「やった!」

「アウレラは女の子だから、俺のと違って白っぽい刀身にして、花の模様でも掘ってもらうのもいいんじゃないか」

「そんなこともできるんだ!じゃあ、ちょっとデザインを考えてから頼みに行って来るよ!」

「カッコいいのが出来るといいね」

「うん!」

 アウレラは、本当に嬉しそうに微笑んだ。


 普段はしっかりしていて、討伐の時には勇敢に戦い実年齢より上に見えるアウレラだが、こういう表情をすると年相応に見えるな~と思い、トキオはドキドキした。



 その日はそれからディアギラスの討伐に行ったが、見違えるように動きが良くなったとパーティーの全員から言われて、トキオはさらに上機嫌になったのだった。

注1 ・・・天下五剣:日本刀の中でも特に名刀といわれる

     以下の5ふりのことだが、実際には、この中で

     最も優れた刀とされる童子切安綱に匹敵する名刀

     として「大包平おおかねひら」(国宝)が存在する。

          

      童子切安綱どうじぎりやすつな 国宝

      鬼丸国綱おにまるくにつな  御物

      三日月宗近みかづきむねちか 国宝

      大典太光世おおでんたみつよ 国宝

      数珠丸恒次じゅずまるつねつぐ 重要文化財


         

注2 ・・・御物ぎょぶつ:皇室の私有財産

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