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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第1章 アティム編
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第2話 異世界降臨

 気づくと森の中で寝ていた。明るさからして昼間のようだった。


「うん?ここどこだ?」


 トキオは上半身を起こし、辺りをキョロキョロと見回した。すると、地面についた右手の横に分厚い古文書があるのが目に入った。


「そうだ!俺は、あの屋敷でこの本を見つけ、異世界に召喚される呪文を唱えたんだった!」


 辺りをよく見回してみると、生えている植物の半分くらいは見たこともない形をしていた。

「この植物・・・俺ってホントに異世界に来たんじゃないの?」


 トキオは立ち上がった。


 そのとき、少し離れた木の根元で何か青いものが動いた。


「あ!あれって、まさか!」

 トキオが急いでその方向へ駆け寄ると、それは慌てて逃げて行った。


「あの青くてぷよぷよした感じ!あれって間違いなくスライムだよな!」

 トキオは嬉しくなってきた。


「しかし、もっとちゃんと見て、できれば触ってみたかったなあ。他にいないかなあ」


 すると、30メートルほど先から、別のスライムがぽよんぽよんと跳ねて近づいてくるのが見えた。

 トキオは、木の陰に身を隠すと息を殺して待った。


 真横に来た瞬間、木陰から飛び出してスライムを抱きしめた。


「やった!」

 そして、スライムに頬を付けてスリスリした。

「うわー、ぷよんぷよんだー!これがスライムの感触かー!」

 トキオは、満面の笑顔で何度もスライムにスリスリした。


 しかし、それを嫌がったスライムはトキオの腕の中で暴れ出した。


「うわっ!なんだ、嫌がってるのか?そうだ、テイムできないのかな?」

 トキオは、スライムをじっと見つめて、

「おい!仲間になれ!」

 と、言った。


 スライムはさらに暴れた。


「ああ、言い方が悪かったかな・・・ねえ、仲間にならない?」

 スライムはさらに暴れて、いきなり縦に膨らんだかと思うとトキオの頭より大きな口を開けて噛みつこうとした。


「うわッ!」

 トキオは、あわてて手を離して尻餅をついた。

 スライムは、大きく跳ねながら藪の向こうに姿を消した。


「あーびっくりした!良く考えたら、魔物だから人間を襲うこともあるんだよな」

 トキオは、ドキドキしている胸を押さえながら立ち上がった。


「もうほとんど異世界で間違いないと思うけど・・・そうだ!もっとはっきり確かめる方法があるじゃないか!・・・ステータス!」

 そう言った途端、目の前に青白いスクリーンが浮かび上がった。

「おおー!出たー!ホントに異世界に来たんだー!」


 途端にトキオは、感動して大粒の涙を流した。そしてそのまま、表示されたスクリーンを見るのも忘れてしばらくふるふると震えていた。


「ああ、そうだ、ステータスの内容を見なきゃ!・・・・召喚されたってことは、Lv99と言わないまでも、いきなりLv50ぐらいあるんじゃないの?」

 トキオは、わくわくしながらステータスの画面を覗き込んだが、次の瞬間、その内容を見て愕然とした。


「えー!Lv1~!なんでだよー!HPとMPもたったの20かよー!・・・ああ、召喚されたわけじゃなくて自分から押しかけて来たようなもんだからかなあ・・・まあ、仕方ないかあ」

 あきらめ顔でステータス画面を右手の人差し指でタッチして上にスクロールした。


「で、魔法が使えたりするのかなあ・・・おおお!あったよ!」


【魔法属性】

 火 Lv1

 水 Lv1

 風 Lv1


「うわー、魔法も全部Lv1だよー・・・トホホ。まあでも、属性が違うものが3つも使えるのはいいかな・・・ん?その下に変なの書いてある」


【特殊魔法属性】

 光 Lv5


「特殊魔法?普通の魔法とどう違うんだ?それと、光系の魔法ってなんだろ?まぶしい光で敵を蒸発させるヤツとかか?火や水や風なら大体想像できるけど、はっきりとはわからないなあ。タッチすると細かい情報が出るのかな?」


 トキオが「光」と表示されている部分をタッチすると、その下に別の項目が表示された。


【特殊魔法属性】

 光 Lv5

 ・閃光弾:フライシャ

 ・防壁 :バリッド

 ・反射 :リフレック


「ほほう、閃光弾に防壁に反射ね。こういうのが光魔法になるのか。光属性ということは、閃光弾がフラッシュで、防壁がバリアで、反射が相手の攻撃を跳ね返す魔法ってことだろうな。しかし、これだけLv5ってことは、俺は光属性の冒険者ってことか?・・どれどれ」

 トキオは、右手のひらを前に突き出し、「フライシャ!」と叫んでみた。

 すると、その途端、右手のひらから目がくらむような球状の閃光が出て、すごいスピードで前方へ飛んでいった。


「うわっ!ホントに出た!俺、魔法を使えるようになったんだー!」

 トキオは、少し見上げる姿勢で軽く目を閉じて、しばらく感動に打ち震えていた。


「このまま魔法のスキルが上がっていくと、いずれ、『大魔導士トキオ』とか呼ばれるのかな?ぐふふ」

 トキオは、自分が魔導士になった姿を想像してにやけていたが、しばらくすると、

「いやいや、違う違う。俺は異世界に行ったら剣士になるって決めてたじゃないか。だから、いずれは『剣聖トキオ』とか呼ばれるんだよな。ぐふふふふ」

 そしてまたしばらく、剣聖になった姿を想像してにやけるのだった。


 そこでお腹が鳴った。

「そういえば、古文書見たさに夕飯も食べなかったからお腹が空いたなあ」


 すると視線の先に、眉間から1本の角が生えたウサギに似た動物が、地面に生えている草を食べているのが目に入った。


「おお、ウサギだ。この世界にもウサギっているんだな。でも、角が生えてるってことは・・・もしかするとあれは魔物か?冒険者は食料も自然調達なんだろうから、あれを捕まえて食ってみよう」


 トキオは、静かにそのウサギのような生き物に忍び寄ろうとしたが、すぐに足を止めた。

「そういえば、魔物のステータスも見られたりするのかな」


 トキオが、魔物に手のひらを向けて「ステータス!」と小声で言うと、ステータス画面が現れてその魔物のステータスを表示した。


「おお!見られるじゃん」

 嬉しさのあまり、少し大きな声でそう言ったら、魔物がトキオに気付い突進して来た。


 かなりのスピードだったので、びっくりして咄嗟に右手のひらを魔物に向けて「バリッド!」と叫んだら、光の壁が現れ、ウサギの魔物は勝手にそれにぶつかって倒れ込み動かなくなった。


「あらら、自分のスピードが命取りになったか。ラッキー。でも、いきなり攻撃してくるってことは、やっぱりコイツは魔物なんだろうな」

 そう言いながら、恐る恐るそのウサギの魔物に近寄って行ったが、頭を見て顔をしかめた。


「うわ!自分の角が頭蓋骨より硬かったのか、頭がぐしゃぐしゃだよ。人間の死体は何度も見たけど、これはちょっとキモいな」

 しかし、その砕けた頭蓋骨の中になにか光るものが見えた。


「おや?・・・これ硬貨?色からして銅貨みたいだな。なるほど、この世界の魔物はこんなところにドロップアイテムを持ってるのか。ぐちゃぐちゃでちょっと気持ち悪いけど、他に何かあるかな」

 トキオは、気持ち悪いのを我慢しながら頭蓋骨の中に手を突っ込んで調べた。

 すると、他にも手応えがあったので、それらを全部掴んでから手を引き抜いた。


「武器や魔法の素材とかあるかと思ったけど、銅貨3枚だけみたいだな。まあ、この世界の通貨を持ってないから銅貨だけでも助かるけど」


 銅貨を地面の雑草で拭いてポケットにしまいながら、

「こんな感じでお金を集めて行けば、冒険者が使ってるような剣や鎧が買えるんだよな。いやー、まんまロール・プレイイング・ゲームの世界だなあ。ぐふふふ」

 自分が剣や鎧を装備している姿を想像して、また、一人でにやけるのだった。


「そんでもって、冒険者として名を上げると美人の巨乳女性剣士がパーティー組みたいとか持ちかけてきたりして。ぐふふふふ」

 今度は、少し長めににやけていた。



 そうやってしばらく妄想にふけっていたが、また、お腹が鳴ったことで我に返った。


「そうそう、お腹空いてたんだった。魔物を食べるアニメってあるから、この魔物、きっと食べられるんだよな。冒険者になった時のために木で火をおこす訓練もしてきたからな」


 トキオは、枯れ葉と枯れ枝を集めてきて積み上げた。

 それから、先ほど倒したウサギの魔物の前にしゃがみこんだ。

「うーん、丸焼きだと時間がかかるよなあ・・・あ、そうだ!」

 トキオは、ズボンのポケットを探って小型の折りたたみナイフを取りだした。

「あの屋敷に鍵がかけられてたときの用心にナイフを持ってきてたんだった」


 ナイフで薄く細長く肉を切ると、細い枝にうなぎのかば焼きのように刺していった。


 それから、それらの肉を持って枯れ枝を積み上げたところに戻り、その横で太めの枝に石で小さく窪みを作ると、その周りに良く乾燥した細い草を置き、窪みに細目の枝を立てて両手で挟んでこすろうとしたが、

「・・・って、待てよ。ステータス!」

と、ステータス画面を出した。


「この属性の魔法の呪文は、と・・・あった!これだ!」

 右手のひらを集めて来た枯れ枝に向けて

「ファイド!」

 と、叫んだ。


 すると、手のひらから小さな火炎放射器のような炎が飛び出し、枯れ枝に火をつけた。

「おおー、火が付いた!これ楽ちんでいいなー!」


「てことは・・・スプラーシ!」

 トキオが、燃えている枯れ枝に向かって叫ぶと、今度は水流が噴出して火を消した。


「おおー!・・・なになに、『スプラーシは空気中の水分を集めて水として放出する魔法』か。これだと、川や池のないところを旅してても水不足になることがないからいいな!・・・って、せっかく火をつけたのに消してどうすんだよ!すっかり湿っちゃったから、枯れ枝を集めるところからやり直しか・・・とほほ」



 そんなこんなで時間はかかったが、肉が焼き上がったので食べてみた。

「どれどれ・・はふはふ・・・・・・おおー!ウサギの魔物、超うめー!高級牛肉並みにうまいぞこれ!」

 あまりのおいしさに、トキオはお腹いっぱい食べてしまった。


「さあて、腹もふくれたことだし、街を目指すか!この世界の街や服装って、やっぱりファンタジーな感じなんだろうなあ」

 ファンタジーな街の中ををファンタジーな格好をして歩く人たちの姿を想像して、また、思いっきりにやけるトキオだった。


「あ、でも、そうだとすると、俺のこの格好は目立っちゃうなあ。街に着いたら服を買わないと。冒険者やるんだから、当然、武器も必要だよなあ。そうなるとお金がいるか・・・うーん、しょうがない、しばらくはここで魔物退治をしてお金を稼ごう」


 そうと決めたら、まずは、直径7~8センチ、長さ1メートルほどの硬い枯れ枝を探してきて、地面に腰を下ろして一方の端を握りやすくするために削り始めた。


「よし!これでいい。これぞまさしく『こん棒』だ!冒険者の基本武器だね!最高~!」

 そうして、またにやけるのだった。

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