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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第1章 アティム編
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第15話 決戦!腕相撲

 街に入ってすぐ、向こうから植物採取のグループにいたエドという冒険者がやってくるのが見えた。


 エドは、トキオたちに気づくと小走りに寄って来た。

「テリット、魔法の件、ギルドに行って聞いてきたぞ」

「お、早いな。で、なんだって?」

「それがよお、『聞かれなかったから』だってさ!」

「はあ?なんだそれ」

「ミレリアが言うには、クラスが上がって能力値の変化を聞かれたときは、元々魔法が使えていた人以外は全体のレベルとHPの値しか聞いてこなかったので、魔法については知ってるかと思ってました、だとさ!」

「・・・ああ、やれやれだな」

 テリットは、怒るというより呆れた感じだった。

「まあ、ミレリアだからな」

 ブロームも呆れていた。


「ミレリアってそんなキャラなの?」

 トキオがテリットに聞いた。

「ああ、かなりの天然娘で、常識的なことを平気で伝え忘れたりするんだよ。仕事はきっちりするし、そこそこのキャリアだから魔物の部位を鑑定する目も確かなんで、ギルド内の評価は高いんだけどな」

「そこそこのキャリア?ミレリアっていくつなの?」

「32で、俺より年上だ」

「えー!?俺は20代前半かと思ってたよ!」

「そう見えるよな。天然なところも見た目相応だ」

 テリットの表情に、あきらめの感じがあった。他の冒険者たちも同じような顔をしていた。



 ギルドに入ってテリットが討伐報告をしているとき、トキオはまじまじとミレリアを見たが、やはり20代前半にしか見えなかった。


「トキオさんは、一昨日と本日の討伐でクラスが上がってますので、冒険者カードをいただけますか?」

「ホント!何級になったの?」

「S級になります」

(おおー!クラス名だけ聞いてたら、めちゃくちゃ強そうだ!)

 そう考えてニコニコしながら冒険者カードを渡したら、受け取ったミレリアも、トキオがクラスが上がったことを喜んでいると思ってニッコリした。


 その瞬間、トキオはミレリアの目じりに小じわが寄ったのを見逃さなかった。

(あー、確かに32歳かもー)

 トキオは妙に納得して真顔になった。


「はい、更新いたしました。お返しします」

 ミレリアは、笑顔のまま冒険者カードをトキオに返却しようとしたら、急に無表情になっていたため驚いたような顔になった。

 トキオは、差し出された冒険者カードを見ていたので、そのことには気づかなかった。


 後ろで見てた3人はミレリアの変化を不思議に思ったが、

「それでは、本日の討伐報酬です」

 という言葉で、そのことはどこかに行ってしまった。


 報酬をもらい、飲食コーナーに入ろうとしたところで、数人が言い争いをしているのが聞こえてきた。


「どうしたんだ?」

 テリットが、近くにいた冒険者に聞いた。

「2つのパーティーが別の依頼でディアギラスの討伐に行ったんだけど、1匹をほぼ同時に倒しちゃったらしく、どっちが倒したかでもめてるんだよ」

「あらら、そうかあ」

 テリットたちは、その言い争っている冒険者たちに近寄って行った。


「もう頭に来た!裏庭に出ろ!」

「望むところだ!こぶしでわからせてやる!」

 そう言うと、その二人と、同じパーティーのメンバーだと思われる数人が裏庭の方に歩き出した。


「あれってどうなるの?」

 トキオがテリットに聞いた。

「殴り合いで決着をつけるんだな。時々あるよ」

「あらあ、穏やかじゃないねえ」

 そう言うとトキオは、小走りで争ってる冒険者たちのところに寄って行った。


「ちょっと待って」

 トキオが後ろからそう声をかけると、皆足を止めて振り返った。その顔は、興奮して怒りの表情だった。


「話し合いじゃ決着がつかないから、腕力で決着をつけようってことだよね」

「そうだが、お前には関係ねえだろ!」

「うーん、確かに関係ないけど、どっちか、下手するとどっちもケガするのは見過ごせないなあ」

「俺がこんなヤツ相手にケガなんかするかよ!」

「そりゃ、こっちのセリフだ!」

 そう言って、二人は掴み掛ろうとしたのでトキオは間に入って止めた。


「腕力で決着付けたいなら、代わりに腕相撲で決着をつけるってのはどう?」

「腕相撲?なんだそりゃ?」

「誰もケガしないで腕力で決着をつけられる方法だよ。ちょっとこっちに来て」


 トキオはそう言うと、空いている四角いテーブルに二人を誘導した。他の同じパーティーメンバーもついてきた。


「はい、このテーブルの両側に座って」

 二人は、怪訝そうな顔をしながらも素直に向かい合ってテーブルについた。


「じゃあ、右肘をテーブルに乗せて、親指を絡めるように手を握って。ええ・・・と、そうこんな感じ」

 トキオは、少し手伝って二人の手を握らせた。


「はい、じゃあ左手でテーブルの端をつかんで。そうそう」

 二人がテーブルの端をつかむと、トキオは、二人の手の上に包むように自分の両手をのせた。

「俺が、『用意・・・ファイト!』って言って手を放すから、そしたら相手の手を机に付けるように思いっきり力を込めて。手の甲が机についた方が負けね」

「なに!?・・・そういうことか。いいだろう」

「俺も了解だ。覚悟しろよ」

「お前こそ覚悟しろ」

 そう言うと、二人とも不敵な笑みを浮かべた。

「それじゃあ、用意・・・ファイト!」

 その合図で、二人は必死の形相をして右手に力を込めた。


「お前、面白いこと知ってるなあ。」

 トキオの背後からテリットが声をかけた。

「うちの村で昔からやってる方法だよ。こういう時によく使うんだ。競技にもなってて、大会も開かれたりするんだよ」

「へえ~・・・。確かに、腕自慢のヤツらなら熱中しそうだな」


「やれ!やっちまえ!」

「もっと力を入れろ!」

 それぞれのパティーメンバーが周りで激しく声援を飛ばした。

「ほら、誰もケガしないうえにこんな感じで盛り上がるでしょ?」

「ホントだなあ。こりゃいいや」

 テリットは微笑して言った。


「くそっ!」

 そこで決着がついた。勝った方の冒険者は、両手を突き上げて勝ち誇った顔をした。

「まだだ!変われ!」

 負けた方のパーティーの別のメンバーが、負けた男をどかせて自分が座り、勝った男と手を握った。


「あ、予想通りの展開」

 トキオは、軽く笑ってから、また両手を二人の握られた手に乗せて、「用意・・・ファイト!」と、言った。


「いけー!」

「今度は負けんな!」

 そうやって、最後の一人が勝ち残るまで盛り上がりに盛り上がった。


「じゃあ、うちの勝ちだから、討伐報酬は俺たちが貰うぜ。でも、お前らの矢が当たってたのは事実だから、頭から出てきた銀貨2枚は山分けでどうだ?お前らもそれでいいだろ?」

 勝った方のパーティーのリーダーが、自分のパーティーメンバーの方を向いて言った。

「ああ、いいぞ」

「それがいいだろ」

 メンバーからは肯定の返事が返った。


「いいのか?そうしてくれると助かるな」

 相手パーティーのリーダーが答えた。

 そう言って、二人のリーダーは和解の握手をした。


「あらら、さっきのケンカが嘘みたいに両方とも素直になったな」

 テリットが言った。

「これも腕相撲の効果さ。お互いにケガがなくて、それでいて納得のいく結果が出たからね」

「ああ、なるほどなあ。わかる気がする。それにしても、トキオっていろんなことを知ってるよなあ」

「うーん、でも、うちの村じゃみんなが当たり前にやってることばかりだからね。単純に文化の違いってことだと思うよ」

「そうかあ、確かに地域ごとに風習は違うし、同じ料理でも味付けが全然違ったりするからなあ」

「そうでしょ?そういうことだよ」

「でも、ここの街の人間が知らないことばかりでためになるし興味深いよ」

「逆に俺は、住んでた村が田舎過ぎて知らないことだらけだったから、教えてもらったことが色々と勉強になったよ」

 トキオは、この世界についてたくさん知りたいと思っていたので、本当にそのことがありがたかった。


 今日もお腹いっぱいだったが、テリット、ブローム、アウレラは、ステータス画面のことと、新しい魔法が使えるようになっていたことで上機嫌になっていたので、今日はギルドの向かいの居酒屋でお酒を飲むことにした。


 入ると、一般の人もいたが、ほとんど冒険者たちでにぎわっていた。

 トキオは、この世界のお酒にも興味があったのでテリットに色々と聞いたが、ビールのようなものがあるらしかったのでそれを注文してみた。

 アウレラは果実酒のようなものを、他の二人は、トキオと同じビールのようなものを注文した。


「それじゃ、トキオにカンパーイ!」

「え?俺に!?」

「だって、また新しいこと教えてくれたじゃないか。魔法が使えることが分かったのと、魔物の弱点属性が見られることが分かったのはすごく大きいぞ」

「そうよー。あたしが強化魔法を使えるようになってたなんて感激よ!」

「俺もレベルがいくつも上がってHPがかなり増えてるのが分かったからな。それは、今までより少し無理がきくってことだ」

「ああ、そうかー」

「だからもう一度、トキオにカンパーイ!」

「カンパーイ!」

 トキオも、照れながら一緒に乾杯した。


 トキオが頼んだ飲み物は、ほとんどビールのような感じで、トキオは大満足ですぐにお替りをした。

 他の3人も、結構酒に強いらしく、かなりのペースで飲んでいった。

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