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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第2章 王都編
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第116話 蘇る記憶

「よし!その調子だ!そのまま攻撃を続ければ押し戻せるぞ!」

 小高い丘の上に本陣が設営されていたが、その前に備えられたひじ掛け付きの豪奢な椅子に座ったアンドレス王子からげきが飛んだ。


「なんとかなりそうですね」

 シュミュード魔導士長は、その後方のテントから外に出るとアンドレス王子の右後ろに来て言った。

 すぐ後ろには、勇者ジークフリートとモルナール魔導士がいた。


「ああ、右側の手薄な部分を突くという私の作戦が見事に決まったからな」

「しかし、まだ油断はできませんよ」

「もちろんだ!」

「敵の中央がかなり手薄になっているように見えますね。あそこを突けば敵の軍勢が分断できそうです」

「ん?・・・ああ、お前も気づいたか!実は私も今、その指示を出そうと思っていたところだ!」

「さすがでございますね。良い判断だと思います」

「当然だ!よし!」


「中央に戦力を集中して突破せよ!さすれば、敵の軍勢が分断できよう!」

 アンドレス王子は、少し前方にこちらを向いて立っている王国西部方面軍の軍団長、ルーデルに向かって大声で言った。

 ルーデルのさらに前方の丘の下には、多数の兵団が待機していた。


「中央に兵力を集中して突撃を開始せよ!」

 そのルーデルの命令で、さらにその前にいた将校が兵団の方を向き、大声で号令した。

「中央に突撃ー!」


 その号令を受けて、丘の中腹の中央部分から突撃ラッパが鳴り響き、丘の下に陣取った兵士たちが一斉に敵正面の中央部分に突撃を開始した。


 巨体のトロールを前面に立てていたオウガの軍勢は、王国軍の兵士たちに体格では勝っていたが、数で圧倒されて徐々に後退すると、ついに中央が突破され完全に左右に分断された。


「いいぞ!そのまま押し込め!」

 アンドレス王子が大声で言った。



 するとその時、その中央部分に大きなつむじ風が巻き起こって兵士たちが十数名舞い上げられたかと思うと、そのまま地面に叩きつけられた。


「なんだ!?」

 アンドレス王子は思わず身を乗り出した。


 魔導士たちと勇者も数歩前に出て、それがなんであるか確認しようとした。


 突風が収まると、地面から5メートルほどのところに黒ずくめの服を着た人影が浮いていた。


 左右のこめかみから曲がった角が上に延び、背中からはコウモリのような羽が生えており、明らかな魔人の特徴を示していた。


「魔人か!・・・ふっ、たった1体ではどうにもできまい。射殺せ!」

 アンドレス王子がそう言うのとほぼ同時に、その魔人が右腕を大きく横に振った。


 すると、さきほどより大きなつむじ風が巻き起こり、今度は数十名の兵士が舞い上げられては地面に叩きつけられた。


「なに!」

 アンドレス王子が驚いて固まっていると、魔人は、さらに2度、3度と手を振って次々と兵士を舞い上げては叩きつけることを繰り返した。


「行くぞ!」

 勇者は剣を抜くと、そう言って魔人目がけて駆けだしたが、ほぼ同時に、魔導士長とモルナール魔導士も駆け出していた。


 3人は、そのまま魔人目がけて掛けて行ったが、その距離が30メートルほどになったところで勇者が叫んだ。

「やめろ!」


 その声で魔人は勇者の方を見たが、一つ鼻を鳴らしてから右腕を振り、3人目がけて突風を飛ばしてきた。


 勇者が走りながら剣を下から上に振るうと、突風は真っ二つになって左右に分かれた。

 魔導士たちは体の前に防壁魔法を展開してその突風をやり過ごした。


 その様子を見た魔人は、15メートル程の距離に近寄ると、静かに地面の上に降り立った。


「ほう、少しは戦えそうな者がいるな」

「きさま何者だ」

 勇者が大きいながらも落ち着いた声で聞いた。


「人間風情に名乗ってやる理由はないが、これからお前たち人間に恐怖を与える者の名前も知らずに死んでいくのも悲しかろうから特別に教えてやる・・・・・我が名はベルトラム。魔王軍第5師団の師団長だ」

「なに!?魔王軍だと!」

 シュミュード魔導士長が驚きの声を上げた。


「そうだ。もうしばらくしたら、お前たちはこの世界から消えてなくなるのだが、今回はほんの小手調べだ。我々の力がどの程度のものかは、すぐにわかるだろう」

 魔人はそう言うと、再び突風を飛ばして来たが、3人は同じように避けた。


「掩護を頼む!」

 突風が収まった瞬間、勇者はそう叫ぶと、魔人目がけて突進した。





「魔導士長!」


 呼ばれてうっすらと目を開けると、目の前にフォンク魔導士が立っていた。

 そして、自分がソファーに寝ているのに気づいた。


 頭が少しはっきりすると、仮眠をとるためにソファーに横になったことを思い出した。


「大丈夫ですか?かなり苦しそうな表情をされていましたが」

「ああ・・・1年前の戦闘の夢を見ていた」

「そうなんですか?まだ、思い出されますか」

「ああ、あの時の光景は今でも脳裏に焼き付いている。多くの兵の命が失われた」

「そうですね・・・」


「それで、何か用だったのではないのか?」

「あ、はい。セバスチャンが来ました。トキオとクロアも一緒です。本棚を復元して裏に書かれていた呪文を写し取って来たそうです」

「おお、そうか!では行こう」

「お疲れでしょうから、もう少しお休みになられてはどうでしょう。私が応対しますので」

「そうもいくまい」


 そう言うと、魔導士長は立ち上がったが、軽いめまいを感じて思わずソファーの背もたれに手をついた。


「やはりお疲れのようです。お休みになってください」

「少し立ちくらみがしただけだ。すぐに収まるから大丈夫だ」


 魔導士長は、言葉通り、しばらくすると背筋を伸ばしてしっかりと立ち上がった。

 そして、フォンク魔導士のあとについて部屋を出た。



 応接室に入ると、トキオとクロアがソファーに座っていたが、セバスチャンはその横に立っていた。


「あ、魔導士長様、お邪魔しています」

 トキオが言い、3人は頭を下げた。

「ああ、よく来たね」

 魔導士長はトキオに向かってそう言ってからセバスチャンの方を向いた。


「セバスチャン、すまなかったな。大変だっただろう」

「いえ、大丈夫です。それで、書かれていた呪文はこちらになります」

 セバスチャンはそう言うと、手に持っていた紙を両手で魔導士長に差し出した。


「おお、そうか。どれ・・・」

 魔導士長は紙を受け取ると、書いてある文字を見た。

 フォンク魔導士も横に来て覗き込んだ。


「・・・ふむ、やはりそうか。では行こう」

 魔導士長はそう言うと、トキオたちについて来いという仕草をした。


「あ、はい」

 トキオとクロアは立ち上がると、セバスチャンと一緒に魔導士長たちのあとについて部屋を出た。



 しばらく廊下を進むと、魔導士長たちは階段を降りて地下に向かった。


 トキオは、魔導士長のすぐ後ろまで来ると聞いた。


「それで、あの魔人に関する記録のある本は見つかったんでしょうか?」

「ああ、あった」

 魔導士長は、少しだけ振り返ると言った。


「そうなんですか!それで、何と書かれていたんでしょうか」

「私の予想は半分外れていたが、半分は当たっていた。しかも、悪い方がな」

「・・・え?」

「まず、外れていた部分だが、あの魔人は、殺せなかったのではなく殺さなかったのだ」

「そうなんですか?意外です」

「その理由なんだが、殺してしまうと1年後に別の魔人として転生してしまうから、つまり、囚われの身から解放されるから、ということだった」

「ああ~・・・なるほど」

「そして、あれが分身であったというのは当たっていた。しかも、最悪なことに・・・魔王の分身だった」

「え!?ホントですか!」

「ああ。いにしえの戦闘で、魔王をかなりのところまで追いつめた時に、魔王はあの魔人を自分の体から分離して姿を消したそうだ。あの魔人はかなり暴れたが、なんとか捕獲して禁術を使ってあの干からびた姿にすると、棺に納めて地下に封印したそうだ」

「それがあの隠し部屋だったんですね」

「そういうことだ。ただ、その禁術の内容が書かれた部分はまだ見つかっていない。他の本に書かれているかもしれないが、どこにも書かれていない可能性もある」

「そうなんですか・・・」


 そこで地下一階に着いたが、魔導士長は両側の壁に燭台の並んだ廊下をさらに先に進んで行った。



「それから、あの数々の本は、星の運行記録や天候などから、およそ千年前に書かれたものだということがわかった」

「ああ、やっぱりそのくらい古かったんですね」

「それで、内容だが、それよりもさらに2千年前からの出来事について書かれてあった」

「え!そんなに古い記録があったんですか」

「うむ。まだ、半分程度の本しか確認できていないが、もしかするともっと古い時代について書かれた本もあるかもしれない」

「そうなんですね。それはすごく興味深いですね」

「我々にとってもそうだ。これは、歴史的な大発見になったぞ」

「そうですね!」

 トキオは、自分が興奮してくるのを感じた。


「着いたぞ」

 魔導士長はそう言って、一つの扉を手で指し、それからその扉を開けて中に入った。

 トキオたちも続いた。


 中に入ると、そこには他の3人の魔導士の他に、キロウ司教、ミヒール司祭がいて、他にもトキオが初めて見る男性が3人いたが、そのうちの一人はかなりの年配で、70歳は超えているように見えた。


 皆、入り口に背を向けて立っており、トキオたちが入ってくるとチラッとそっちに視線を送ったが、すぐに前を向いた。


「あの年配の方は、大司教様よ」

 クロアがトキオの耳元で言った。


「そうなんだ。でも、なんで知ってるんだ?」

「教団の加護を授けていただいたときにお会いしたのよ」

「ああ、そういうことか」


「トキオたち、こっちに来てくれ」

 そこで魔導士長に呼ばれたのでトキオたちが前に進むと、ガラスで仕切られた別の部屋があり、皆はそちらを見ていたのだということがわかった。


 トキオがガラスの中を覗くと、そこには光の箱に閉じ込められたままの魔人の姿があった。

 花粉がかなりしんどいことになってきましたので、少し更新ペースが落ちるかもしれません。

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