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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第2章 王都編
115/552

第115話 古(いにしえ)の魔法

「そういえば、クロアが読んでる本だけど、何か参考になるようなことは書かれてたか?」

 昼食が終わり近くになったときトキオが聞いた。


「今のところ魔法の話だけね。でも、今まで聞いたこともない呪文や、知らない属性の魔法の記述もあったからすごく面白いわよ」

「そうか。それも、長年の間に失われた魔法ってことなのかな」

「そうかもね。でも、聞いたこともない呪文の方は相当レベルが上がらないと使えないみたいね。歴代の著名な魔法使いなら覚えてたかもしれないけど、使えるのに気づいてなかった可能性があるわ」

「ああ、あるかもな。でも、今ならステータス画面でわかるから、今後はそういった魔法も復活するんじゃないかな」

「あ!確かに!魔導士様たちも新たに気づいた魔法があるんじゃないかしら」

「そうだな。レベルの高い魔法を覚えるのに一番近いのは魔導士様たちだからな。今度聞いてみよう」

「火魔法の最上級魔法なんてすごく興味あるわ。覚えてるんだったら見せてくれないかしらね」

「どんな現象の魔法なんだ?そういうことも書いてあったのか?」

「なんでも、狙った場所に大きな火柱が出現するらしいわ。別名『劫火ごうかの魔法』って言うらしいわよ」

「え?いきなり火柱が立つってこと?それじゃ、避けられないじゃん」

「そうね。だからこそ最上級の魔法ってことなんでしょ」

「すごいなあ。確かにそれは見てみたいなあ」


「水魔法の最上級魔法は、同じように狙った場所に大きな水球を出現させられるらしいわ。火魔法の使い手が相手なら魔法を出せないようにできるし、そのまま溺死させることもできるみたい」

「地面の上で溺死させられるってことか?シュールな魔法だなあ」

「ホントねえ・・・あ!想像しちゃったわ!怖い怖い」

 クロアはそう言うと顔をしかめて身震いした。


「でも、そんな魔法を使えるって話はしてなかったから、覚えてらっしゃらないのかしらね」

「そうなのかな?でも、わざわざ俺たちに『私はこういう魔法が使えるんだ』なんて言わなくないか?」

「ああ、そりゃそうね。じゃあ、やっぱり聞いてみるしかないわね」


「俺が読んでるドラゴンの本だけどさあ」

「うん」

「よく考えたら、俺ってドラゴンのこと何も知らないから、あの本に書かれてることが貴重な事かどうかなんて全然わかんないんだよなあ」

「まあ、ドラゴンは謎が多くて、その生態はほとんど知られてないから、知らなくて当たり前なんじゃない?で、どこまで読んだのよ?」

「いや、前書きを読んでるうちに寝ちゃったから、まだ全然」

 トキオは照れ笑いをしながら言った。


「なにそれ!私も読みたいんだから早く読んでよね!」

「わかったよ・・・で、クロアはドラゴンについてどんなことを知ってるんだ?」

「うーん、あんたと大して変わらないかも。人里離れた山奥の洞窟の中に住んでるってことと、今まで目撃された中で体長が最も大きいのは60マインほどっだったってことぐらいね」

「60マイン!・・・でも、それだとこの間のヒドラよりは小さいってことだな」

「そうね。まあ、あのヒドラがでか過ぎただけだから、60マインでも十分大きいと思うけど」

「まあ、そうだな」

「それじゃ、ごちそうさま、じゃあ、部屋に戻って本を読むことにするわ」

「ごちそうさま。俺もそうするよ」


 二人は別れてそれぞれの部屋に戻った。




 部屋に入ると、トキオはドラゴンの本を手に取って先ほどと同じようにベッドに上がったが、今度は枕を壁の前に立てかけてそれにもたれ、足を投げ出した姿勢で読み始めた。


(こうでもしないと、お腹がふくれちゃったからまた寝ちゃうよな)



 コンコン!


 そのまましばらく読んでいると、誰かが部屋のドアをノックした。


「どうぞー!」

 トキオが大きな声でそう言うと、クロアがドアを開けて入って来た。


「ん?どうした?」

「また一人にするとあんたが寝ちゃうんじゃないかと思ったから、監視を兼ねて私もここで本を読むことにしたのよ」

「なんだよそれ。保護者かよ」

「そうされたくなかったら、しっかり読みなさい」

「今度は大丈夫だよ・・・・・たぶん」

「ほら!自信ないんじゃない!」

「腹がふくれちゃったしなあ。それに、俺が読んでる本は魔人には関係なさそうだから、興味はあるけどイマイチ気合が入らなくって」

「それじゃ、いつまで経っても私が読めないでしょ!しっかり読みなさいよ!」


 クロアはそう言うと、ソファのトキオから見て向こう側に、トキオの顔が見えるように斜めに座った。

「こうやって監視してるんだから、ちゃんと読むのよ!」

「はいはい」


(本当に保護者だな)

 トキオはそう思った。


 クロアはその後しばらくは、本を読みながらチラチラとトキオを見ていたが、トキオが真面目に読んでいるように見えたせいもあり、しばらくすると本の内容に没頭した。



 クロアはそのまま本に集中していたが、そのうち、寝息のようなものが聞こえて来たので顔を上げると、トキオは本を開いたまま腹の上に載せ、体を左に傾けて眠りこけていた。


「やっぱり寝てる!」


 クロアは本を持ったままベッドの左側に行くと、本をベッドの上に置いてからベッドに四つん這いで上がり、トキオの耳元に口を寄せて怒鳴った。

「起きろ!」


「うわっ!」

 トキオは驚いて飛び起きた。

 はずみで、腹の上に乗っていた本がベッドの上に落ちた。


「あ!ダメじゃない!」

「え?何が?・・・って、なんでクロアがここにいるんだ?」

「あんたが寝てたから起こしに来たのよ!・・・それより、その本は経年劣化でかなり弱くなってるから、乱暴に扱ったら壊れちゃうわよ!」

「え?・・・あ、ここにあった」

 トキオは、キョロキョロと自分の周りを見渡して、体の右に本があるのを見つけると、右手でひょいと拾い上げた。


「あ!だからそう言う雑な扱いがダメだって!」


 ベキッ!


 クロアがそう言った途端、背表紙の左上に2センチほど亀裂が入り、表示が少しはがれた。


「ほら!やっぱり破損しちゃったじゃない!」

「あ!ヤバい!」

 さすがにトキオも焦って、慌てて左手を添えると、ゆっくりとお腹の上に持って来た。


「もう!どうするのよ!」

「悪い悪い。あとでセバスチャンに修復できないか聞いてみるよ」

「直ればいいけどね」

「今後は気を付けるからさ」

「頼んだわよ!」



「でもねえ、今、イヤな夢を見ちゃったんだよな」

「え?・・・何よそれ」

「なんか、暗いところでアウレラが怯えて泣いてたんだよ」

「えー?やめてよ、そういうの」

「アティムで何かあったのかなあ。気になるなあ」

「あんた、予知夢を見る能力があるの?」

「予知夢?・・・いや、全然」

「なによ。じゃあ、ただの夢じゃないの。ビックリさせないでよ」

「うーん、そうだったらいいんだけど・・・気になるなあ」

「何かあっても、ここからじゃすぐに確認できないわねえ」

「そうなんだよなあ。そういうところがこの世界は不便だよなあ」

「は?何言ってんの?」

「あ゛・・・いや、なんでもない」

「何よその態度。また、なんか隠そうとしてるでしょ!」

「いや、別にそんなことは・・・」

「ウソおっしゃい!」


 コンコン!


 クロアが大声を出したところで誰かが部屋のドアをノックした。


「ご主人様、作業が終わりました」

 セバスチャンの声だった。


 クロアはあわてて、ベッドから飛び降りた。


「お!そう?入って来て」

「失礼します」

 セバスチャンはそう言って部屋に入ってくると、トキオに向かって一礼した。


「本棚はかなり粉々になっていましたので、予想以上に時間がかかってしまいました。申し訳ありません」

「別に謝ることじゃないでしょ。お疲れさま」

「お疲れさま」

 クロアも言った。


「ああ、クロア様もこちらでしたか。ちょうど良かったです。書かれていた封印の呪文をこちらに書き写してまいりましたのでご確認ください」

 セバスチャンはそう言って、左手に持っていた紙を両手でトキオの方へ差し出した。

 トキオは、ベッドから降りると、その紙を受け取った。

 クロアも急いでベッドのこっち側にやって来た。


「どれどれ・・・うーん、謎かけかなあ。良く意味が分かんないなあ」

「うーん、かなり抽象的ねえ」


「これから教団本部にこれを届けに参りますが、よろしいでしょうか」

 トキオとクロアが難しい顔をしていると、セバスチャンが言った。


「あ、そうだよね。わかった・・・待って、俺も行くよ」

「あ、私も行くわ」

「わかりました。すぐに馬車を用意いたします」


 セバスチャンはそう言うと、一礼してから部屋を出て行った。

 呪文の書かれた紙はトキオが持ったままだった。


「じゃあ、行くか」

「そうね。あ、本はあそこには置いていけないわね」

 クロアはそう言うと、ベッドの上に置いたままになっていたトキオとクロアの本をとると、応接テーブルの上に置いた。


「とりあえず、ここでいいでしょ。戻って来てから片付けるわ」

「そうだな」


 トキオはそう言ってから部屋を出た。クロアも、あとに続いた。




 トキオたちが玄関を出ると、ちょうど馬車が玄関先に着くところだった。

 馭者席にはセバスチャンが座ってたので、トキオは少し驚いた。


「あれ?今日はセバスチャンが馭者をやるの?」

「はい。キビルは庭師の仕事がありますし、私が馬車の客席に座るわけにも参りませんので」

「えー?そこは気にしなくていいんじゃない?」

「そうは参りません。それでは、お乗りください」

「ああ、すまないね」


 そう言ってトキオとクロアは馬車に乗り込んだ。

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