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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第2章 王都編
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第113話 王国の現状

「復活したってことは、干からびてたとは言っても死んでなかったってことですよね」

 トキオは魔人の方を見てから魔導士長に質問した。


「そういうことだな。魔人の一部には、大きなダメージを負った時に仮死状態になって活動を停止することができる者がいると聞いたことがある」

「その状態だったってことなんですかね。でも、仮死状態になってて動けないまま捕らえたんだったら、その時にとどめを刺させたと思うのに、そうしなかったのはなぜでしょう。この魔人が不死身だということですか?」

「さすがに不死身ということはないだろう。魔王ですら、長い時間活動を停止してどこか人間の立ち入れない場所で眠っていたという話だからな」

「そうなんですか。でも、それってどうやって分かったんですか?」

「魔王がどこかで眠っているというのは古くから言い伝えられて来たことで、いずれ復活するとも予言されていた。魔物や魔人が多数現れるようになったことで、復活したのではないかという憶測が流れていたが、1年前の幹部との戦闘でそれが事実であることがわかったのだ」

「あ、そう言えば、魔導士様と勇者様が共同で魔人の幹部を1体倒したと聞いたことがあります」

「そうだ。その時にその幹部が断末魔の中で、魔王が復活して魔人像を造り、そこから魔物が生み出されているから、もうすぐ人間は滅ぼされると語ったのだ」

「そういうことだったんですか!なるほど~」

 トキオは、真相を聞いて少し感動していた。


(当事者から話を聞くと、また違った感動があるな~)


「この話は一部の者しか知らないはずなんだが、どんな話もどこかで漏れるものだな。トキオはどこで聞いたのだ?」

「アティムで一緒のパーティーだったアウレラって女性冒険者に聞きました。先日、王都にも来てましたよ」

「そんな辺境にまで伝わっているのか。困ったものだな」

「そうですかね。皆が警戒心を強めてくれるから、それはそれでいいと思いますけど」

「そうか。そういう考え方もあるな・・・さて、その話はこれくらいにして、この魔人が収められていた場所を確認しに行きたいが、いいか?」

「あ、そうですね。行きましょう」

「モルナール魔導士は私と一緒に来てくれ」

「わかりました」

「他の者は、モモグルと一緒にこの魔人を教団本部へ運んでくれるか」

「わかりました」

 他の3人の魔導士が答えた。


 それから、その中のブルーメ魔導士が魔人が閉じ込めらている立方体に手をかざすと、立方体は静かに浮き上がりモモグルの馬車の荷台まで移動して行った。


「え!テレキネシス!?」

 トキオは驚いて思わず言った。


「テレキネシス?なんだねそれは?」

 魔導士長が聞いた。


「超能力者が使う、念でものを動かす能力のことですが、違うんですか?」

「超能力者というのがよくわからんが、あれは光魔法の応用だ。小さい威力のものを小刻みに放出することで持ち上げて移動させているのだ。トキオも訓練すればできるようになるぞ」

「ホントですか!それじゃ、今度教えてください!」

「わかったが、基本的な使い方をちゃんと習得したあとだな。まだ自在に使えるレベルになっていないからな」

「・・・そうですよね。わかりました」

 トキオは残念に思った。



「それでは頼んだぞ」

 立方体を馬車に積み込み終わると魔導士長が3人の魔導士に向かって言った。

「はい。では後ほど」

 ブルーメ魔導士がそう答えると、3人は乗って来た馬車に乗り込み、モモグルの馬車を先導するように出て行った。



 それから、トキオと魔導士長は屋敷に向かって並んで歩き始めた。

 他の者はその後ろからついて来た。


「でも、その幹部との戦闘が1年も前だとすると、その後に何度も攻勢をかけてきそうですが、そういうことがあったんでしょうか?」

 トキオが歩きながら聞いた。


「ああ、あった。その時から今日までに、他の幹部が都合4体出現している。いずれも北西部から西部にかけてで、魔人と多数の魔物を使って襲撃してきた」

「やっぱりそうなんですか?そいつらとは戦わなかったんですか?」

「トキオは、ここ1年の状況は何も聞かされていないのか?まあ、アティムにいたのでは詳しいことはわからなかったとは思うが」

「そうですね、5年前から急に魔物が増え始めたことと、今、確認されている幹部が魔導士様たちが倒したのを含めて5人であることぐらいしか聞いていません」


「そうか・・・1年前、魔人に率いられたオウガとトロールが現れて、多くの街が全滅させられ、途中にあった城がいくつか奪われたのだ」

「ええ!?そんな戦闘があったんですか!」


「あれ?あんたそんなことも知らなかったの?」

 クロアが後ろから言った。

「ああ、テリットたちは全然教えてくれなかったからね」

「それって、誰でも知ってることだからあえて言わなかったんじゃないの?トキオの村でそんな話が話題になることはなかったの?」

「あ、ああ、そうだな。誰も知らないんじゃないかな」

「呆れた。どれだけ辺境なのよ」


「村とはなんのことだ?」

 魔導士長がトキオの耳元で小声で聞いて来た。

「あ、俺、東の辺境の村から来たってことになってますんで」

 トキオも小声で答えた。

「なるほど」

 そう言って魔導士長は軽く笑った。


 トキオがクロアの方を見ると、怪しんだような顔をしてトキオを睨んでいたが、相手が魔導士長ではへんなツッコミはできないようだった。


「それで話の続きだが、その情報が王都に伝わると、アンドレス王子が討伐に出ると言い出したので、王に依頼されて勇者と我々も向かったのだ。半分はアンドレス王子の護衛みたいなものだったから、軍隊もかなりの数が導入された」

「アンドレス王子?・・・あ、あの、ぼんくらと評判の」

「なんだって?誰がそんなことを言ったのだ」

「あ゛・・・えーと、フラビアから聞きました」

「そうか・・・あいつにも困ったものだな。まあ、間違ってはいないがな」

 そう言って魔導士長は苦笑した。


「そんなわけで、多数の軍隊がいたのでそれ以上の侵攻は食い止められたのだが、それを見かねたのか、魔物たちの侵攻が止まった2日後に幹部が現れた。だから、その時は、たまたま我々がそこに居合わせていたのだ。その後に幹部たちが現れた時には我々は王都にいたため救援が間に合わなかった。そのいずれの場合も、我々が到着したときには幹部は奪った城に籠り周りを魔人と大型の人型魔物で固めていたため、奪還することは適わなかった。ただ、それ以上の侵攻を許さぬよう多数の軍隊がその城のそばに貼りついたままだ」

「北西部と西部はそんな状態だったんですか・・・」

「そうだ。我々が最初の幹部を倒したことで他の幹部は警戒したのか、城に籠ってからは我々の前に姿を現さなくなった。だから、我々も勇者も、その姿を見ていない」

「そうなんですね。随分、南部とは事情が違うんですね」

「そうだな。南部は、今までは動物型の魔物とゴブリンやオークなどの小型の人型魔物ぐらいしか出現していなかったから、各街にいる出城の軍隊以外に特に軍隊が貼りついているということはないな。しかし、魔獣や魔人が出現するようになって来たから、これから侵攻が始まるのかもしれん」

「え!?・・・アティムはどうなるんでしょうか?」

「警戒はしているから、何か大きな動きがあれば、南部方面軍が出動するような手はずにはなっている。当然、我々も応援に行くが、5日もかかるところが問題だ」

「それまで、持ちこたえてくれればいいんだけど・・・」

「その心配はわかるが、北部や西部からさらに魔人が攻めて来る可能性もあるので、我々が王都を離れるわけにもいかないのだ」

「そうですよね・・・」

 トキオは、かなり不安になってうつむいて歩いていた。


「ここだったな。扉が開いたままだ」

 魔導士長の言葉で顔を上げると、地下室への扉の前に来ていた。


「あ、はい。先ほど、この下の地下室の壁を破ってさっきの魔人が現れたんです」

「そうか。では、行こう」

「あ、今、燭台を・・・」

 そう言ってトキオが振り返ったら、すぐ後ろにセバスチャンとメアリーが燭台を持って立っていた。


「あ、セバスチャン、さすが!」

「私がご案内いたします」

「そうだね。頼む」


 セバスチャンは魔導士長の前に出ると、燭台で階段を照らしながら降りて行った。

 トキオたちも、魔導士長のあとに続いて降りて行った。

 メアリーは最後尾についた。ジェーンの姿はなかった。



 暖炉の穴をくぐり、隠し部屋の前に到達すると、入口の扉は、やはり粉々になっていた。


「別に鍵をかけてたわけじゃないのに、乱暴な魔人だな・・・」

 トキオは残念な気分になって思わず呟いた。


 部屋の中に入ると、本棚も粉々になっていたので、トキオはさらに残念な気分になった。


「これで、先ほどの魔人が棺の中にいた者だというのは確定だな・・・うん?」

 魔導士長は何かに気付いたのか、しゃがみ込んで足元の本棚の破片の一つに手を伸ばした。

 すかさず、セバスチャンが寄って来て魔導士長の手元を照らした。


「ああ、やはりか」

 魔導士長が言った。

「何かありましたか?」

 トキオが聞いた。


「これだ。呪文が書かれている。本棚の背面、奥の部屋の壁になる部分に書かれていたようだ。魔人はやはり封印されていたようだな」

「ああ、やっぱりそうなんですね」


 トキオは、それに気づかなかった自分のうかつさを恨めしく思った。



「この分だと、棺の蓋にも封印の呪文が書かれている可能性が高いな」

「そうでしょうね。勝手に開けてしまって本当にすみません」

「いや、その点については気づかなかった私も同罪だ。まあ、魔人は確保したのだから気にしなくてもいいだろう」

「そうですか・・・」



 奥の部屋に入って棺のところまで行くと、蓋が無くなっていた。

 近寄ってみると、蓋は向こう側に落ちており、棺の中は空っぽになっていた。


「やはり、ここから生き血で蘇ったということか」

 魔導士長は、そう言ってから床に転がっている蓋のところに寄ってひっくり返し、裏側を見た。


 トキオが覗き込むと、そこにも、先ほどの本棚の破片と同じような呪文が書かれていた。

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