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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第2章 王都編
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第102話 新たなる反攻の兆し

 その頃、王国南西部にあるとある城の一室では、魔人二人が深刻そうな顔で話をしていた。


 一人は、黒めの色ながら派手な装飾が施された服を着て、少し高い位置に据えられた背もたれの高いひじ掛けのある頑丈そうな椅子に座り、もう一人はその前5メートルほどのところに立っていた。


「それで、次の魔獣の用意はできたのか」

「あと数日で出撃させられる状態になります。もう少しお待ちを」

「時間がかかり過ぎる!まだ、事態の深刻さが呑み込めていないようだな」

「めっそうもございません!ヒドラがあんなに簡単に2体もやられてしまうことは想定外でしたので、育成のスケジュールが追いつかなくなっているのです」

「・・・まあいい。しかし、今度こそはしくじるなよ」

「はい!今回は前回の倍のオークを集めておりますので」

「またオークに頼るのか。それで2度も失敗しているではないか!」

「その2回はハードオークに作戦を任せたのが敗因でしたので、今回は私自らオークを指揮して実行します」

「そうは言うが、前回はボンザノが現場にまで行ったのだろう?それなのに、簡単に人間などにやられてしまったではないか」

「あいつは人間を侮って油断していたから無様にやられたのです。私は色々と人間のことを調べて対応しております」

「強気だな。たとえば、どういうところだ」

「最近、獣魔物の数が減ってきていることはライマール様もご存知かと思います」

「聞いている。本来ならこの国の南西部はとっくに我々のものになっているはずがそうなっていないのは、お前たちの失策もあるが、そのことの影響もあるのだろう?」

「はい。原因は人間どもの能力が全体的に上がったからなのですが、最近になってその理由がわかりました」

「ほう。なんだ」

「実は、銃という強力な武器を使うようになっておりまして、先日、オルトロスをおとりにしてオークに森を囲ませて殲滅しようとした際も、その銃によって短時間ですべてのオークが倒されてしまいました」

「なんだそれは。どのような武器なのだ」

「どうも、金属片を飛ばす魔道具のようでして、それを使われるとグリベラーも一撃で頭を破壊されてしまうことを確認しています」

「なんだと?グリベラーには人間どもは手こずっていて、かなりの人数で囲んでやっと倒していたのではないのか」

「はい、確かに今まではそうでした。しかし、数か月前にその銃というものが登場してからは、事態が大きく変わりまして・・・」

「なるほど、人間どもも対策を立てて来たというわけか」

「それから・・・」

「まだ何かあるのか」

「実は、今まで使っていた剣や槍といった武器も威力が上がってきているようです」

「なに?・・・そちらの方が不可解だな。過去5年もそういうことはなかったはずだ。どうして急にそうなった」

「一つには、魔物の頭部から人間の世界で流通している硬貨や強化素材が採れることに気付かれたことが影響していると思います。人間ども、特に冒険者というやからは、今までは大した収入もなかったのが、これによって全般的に裕福になって、より高価で威力の高い武器が買えるようになり、それをさらに強化素材で強化できるようになったようです」

「そういうことか・・・まあ、魔物の頭部に毒があるという情報が虚偽であることは、いつかは知られるとは思っていたが、5年も気づいていなかったのがどうして急に知れることになったのだろうな」

「そこまではまだわかっておりません。ただ、そういったことが半年ほど前から急速に人間の世界に広まり始めております」

「わかった。それはこちらでも調べてみることにしよう」

「よろしくお願いします。それから・・・」

「まだあるのか!」

 少しずつイライラしいる様子が高まっていたライマールと呼ばれた魔人は、ここで怒りをあらわにした。

「はい。人間どもが今まで見たこともない格闘技を使うようになっておりまして、それによって、ゴブリンやオークが簡単に投げ飛ばされたり、失神させられたりしております。今までは、少なくともオークは素手なら圧倒的に人間に勝っていたのですが・・・」

「なんだと!なぜそのようなことが起こった」

「わかりませんが、今まで南部にはいなかった光魔法を使う人間が現れたのも数か月前ですので、それと関連性があるのかもしれません。ヒドラの完全体を倒したのも、どうやらその人間のようですし」

「そこまでわかっているのなら、その人間を殺せば済むことではないのか」

「それがなぜか、その人間は光魔法をめったに使わず、オークが洞窟に閉じ込められた時との2回しか確認されておりませんので、特定が難しい状況になっています」

「人間どもは光魔法が我々に有効だということを知っているのだろう?どうして使わないのだ」

「わかりません。ただ、冒険者たちを()れるケースが数か月前に比べて格段に減って来ておりますので、使わずとも魔物を倒せると思われているのかもしれません」

「なんだと・・・人間どもめ、ふざけおって!」

 そこでしばらく沈黙が流れた。


「話はそれで終わりか?」

「は、はい!」

「では行け。今度はしくじるなよ」

「はい!魔獣が出られるようになり次第出動します。それまでには、準備を万全に整えておきます」

「当然のことをわざわざ言うな!」

「はい!すみません!」


 立っていた、魔人は一礼をすると前を向いたまま飛び下がって部屋から出て行った。


「光魔法を使う冒険者か・・・警戒しておいた方が良さそうだな」

 ライマールは眉間に皺を寄せてそう呟くと椅子から立ち上がった。

「しかし、いつまでも南部に関わっているわけにもいかないな。そろそろ、王都に進攻する準備も進めないと。まずは、我々を苦しめた武器がいくつか王の城に残っているはずだからそれをどうにかする必要があるな。特に、数々の有力な魔人を倒した『聖女の輝き』はやっかいだ」

 さらにそう呟くとその場から姿を消した。




 そして、アティムでは・・・


「今頃、勇者様は何してるのかなあ」

 ギルドの飲食コーナーでテーブルに肘をついてアゴを乗せたアウレラは、そう言うと大きなため息をついた。

「まだ言ってるのか。もういい加減に目を覚ませよ」

 一緒のテーブルにいたテリットが、これまたため息をつきながら言った。

「やれやれ、ホントに重症だな」

 ブロームもあきれ顔で言った。


 そこに、パーシーのパーティーが大声で話しながら戻って来た。

「いやー、リディア、今日も大活躍だったな!」

「いえ、まだまだですよ」

 パーシーにそう言われたリディアは微笑みながら言った。

「また謙遜か?誰かさんと違ってホントに腰が低いなリディアは?」

「それ、聞こうと思ってたんですけど、前にいた魔女はそんなに口が悪かったんですか?」

「ああ、ホントにいつも憎ったらしい口の利き方をする奴だったんだよ」

「いつも自信満々って態度だったしな」

 同じパーティーのマクロエイが言った。

「そうなんですか。それは扱いに困ったでしょうね」

「そうなんだけど、実力はあったから頭ごなしには怒れなかったな」

「そうなんですね。私よりも能力が高かったということなんですか?」

「ああ、いやいや、魔女としての力量はリディアも同じぐらいだから大丈夫だよ」

「性格がいい分、総合点ではリディアのがずっと上だよ」

 マクロエイがフォローするように言った。

「そうですか」

 それを聞いて、リディアはにっこりと微笑んだ。

「そうそう。だから、ずっとここにいてくれよ」

 パーシーが言った。

「皆さんがそう望むのであれば、私はそうしますよ。ここの冒険者の方は、他の街よりも全体的に能力が高いと感じていますから、私としてもやりがいがあります」

「そう言ってくれると助かるなあ。よろしくね」

「ホント、いつまでもいてね」

「よろしくね」

 パーシー、マクロエイ、レフは嬉しそうな顔で言った。

「何か飲むか?今日は俺がおごるよ」

「そうですか!ありがとうございます」

 4人はテーブルにつくと、エレザベスを呼んだ。



「あーあ、3人とも鼻の下伸ばしちゃって、やだねえ」

 アウレラが嫌悪感を顔に出して言った。

「お前が言うな!」

 テリットとブロームは同時にツッコんだ。

「ええ~?クロアがかわいそうじゃないのお?」

 アウレラは、二人がツッコんだ理由に気付かなったのか、そう言った。

「あれ?お前、いつからクロアの味方になったんだ?前はよくつっかかってたじゃないか」

 テリットが言った。

「え~?そうだっけぇ?・・・なんか、一緒に王都まで行って一緒にお風呂にも入ったら、クロアも可愛いなって思ってね」

「風呂・・・ああ」

 風呂という言葉で、王都でのことを思い出したのか、テリットとブロームは静かになった。


「そう言えば、クロアは王都でしっかりやれてるのかな?一人暮らしてると思うから心配だな」

 テリットが話を変えた。

「でも、以前は王都に住んでたんだから、知り合いがいるんじゃないの?」

 アウレラが言った。

「ああ、そうか。なら大丈夫かな。ただ、導師様とのことが気になるな」

「ああ、どういう事情かは知らないが、深刻そうだったからな」

「そうねえ。まあ、魔導士様に訓練されてるんだから、そんなこと考えてるヒマはないんじゃないの」

「そうだといいな」

「じゃあ、そろそろ帰るか」

「そうね」

「お疲れさん」

 3人はそう言うと、立ち上がってギルドから出て行った。


 そして、トキオのいないそのパーティーを、ミレリアは寂しそうに見送っていた。

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