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異世界マニアのおしかけ召喚者  作者: 伊部九郎
第2章 王都編
100/550

第100話 実は聖剣だった?

 トキオの部屋がノックされて、クロアがドアの陰から顔を出した。


「トキオ、お風呂あがったわよ」

「わかった。じゃあ、俺も入って来るか」


 そう言って、ベッドの上から降りようとしたら、クロアが部屋の中に入って来た。


「今日はかなり歩いて疲れちゃったから、少しここで休ませてくれる?」

「ええ?・・・まあ、いいけど。そこのソファーにでも座ってれば」


 クロアは、廊下側の壁を向いた方向に腰を下ろした。目の前には、トキオが報奨としてもらった剣が掛けてあった。


「それにしても、ホントにきれいな剣ねえ。でも、頑丈そうだからただ飾っとくのはもったいない気がするわよねえ」

「そうは言っても、重くて振り回せないんだから使えないよ」

 トキオは、クロアのそばに来て剣を見ながらそう言った。


「そうかしらねえ。たとえば、とんでもない怪力の人が持ったらすごい剣になるとかあったりするんじゃないの?」

「いやいや、そんなレベルの重さじゃないって。持ってみなよ」


 トキオはそう言うと、スツールを持ってきてその上に乗り、壁から剣を下ろした。

 クロアは、椅子から立ち上がると、その隣に来た。


「ほら」

 トキオはスツールに乗ったまま、剣をクロアに渡した。


「・・・・うわっ!重たっ!なにこれ?私じゃ持ってるのが精いっぱいよ」

「だろ?だから誰が持ったって使えないよ」

「ホントねえ。でも、切れ味はどうなのかしら。それだけでも見て見たいわよね。刃こぼれしないように強化魔法かけるからちょっと持ってなさいよ」

「ええー?王国に代々伝わるもんだって言ってたから、傷でもつけたらまずくないか?」

「私の強化魔法なら大丈夫よ!それに、今はあんたの持ち物なんでしょ?気にすることないじゃない」

「ああ、まあ、そうなんだけど・・・て、お前、強化魔法なんか使えたんだ」

「火魔法と水魔法のレベルが上がったタイミングで覚えてたのよ」

「へえ・・・」


 トキオは、スツールから降りるとクロアから剣を受け取り、鞘をスツールの上に置いて剣の切っ先を床につけると斜めにして持った。

 クロアは、その前にしゃがみこむと目を瞑って右手を当てた。


 そのまま10秒ほどすると、うっすらと剣は青白い光に包まれた。


「あれ?」

「なに?」

「剣が軽くなった気がする」

「そんなことあるわけないでしょ!」

「ちょっとどいて」


 トキオは、クロアをどかせると剣を持ち上げたが、見違えるほど軽くなっており、ライキリよりも軽いと感じるほどだった。


「うわっ!全然軽くなった!」

「ホントに?」


 トキオは、クロアから少し離れると数回剣を振り回した。

 クロアの目から見ても、それはすごいスピードで、剣が軽くなったというのは本当のようだった。


「ちょっと!私にも持たせてみなさいよ!」

「ああ、持ってみ」


 クロアはトキオから剣を受け取ると、あまりの軽さに驚きの表情になった。


「ホントだ!どういうこと?」


 クロアもその場で数回振ってみた。


「私でもこんなに簡単に振れちゃうわよ。さっきは、持ってるのがやっとだったのに」

「切れ味はどうなのかな?ちょっと貸して」


 トキオはクロアから剣を受け取ると、ソファの背後に立った。

 それから、大上段に振りかぶると、一つ息を吐いてからソファの背に振り下ろした。


 シュン!


 聞こえたのは空気を割く音だけだった。

 しかし、剣の切っ先はソファの下の床まで届き、ソファは真っ二つになって剣が通った真ん中に向かって倒れ込んでいた。


 二人とも驚きの表情でソファーの残骸を見つめた。


「なんだこの切れ味!とんでもないぞ!手ごたえが全然なかった!」

「スゴい・・・」



「もしかすると、この剣は強化魔法をかけることで力が発揮できるように作られた剣じゃないのかしら」

「なるほど。強化魔法が武器にもかけられるってことは誰も知らなかったから、今までは、この剣の本当の力に誰も気づかないでいたんだな。だから俺にくれたんだよ」

「ああ、そういうことね。きっとそうだわ」



「ところで、あんたこのソファーどうするのよ?」

「あ!勢いで切っちゃったけど、どうしよう。セバスチャンに怒られるかな?」

「そうかもね。知ーらないっと!」

「えー?お前も止めなかっただろ?」

「なに人を巻き込もうしてるのよ。切ったのはあんたでしょ!」

「そうだけどさあ・・・しょうがない、正直に言うか」


 トキオはそう言うと、ベッドのところに行き、脇にあった紐を引いた。


「それなに?」

「用があるときはこれで呼ぶことになってるんだ」

「そんなのあったんだ!まるで貴族のお屋敷ね!」

「いや、元は貴族のお屋敷だから」

「あ、そうか」


 コンコン


 すぐにドアをノックする音がしてセバスチャンの声がした。

「お呼びでしょうかご主人様」

「ああ、入って」

「早っ!」

 クロアは、セバスチャンの現れるあまりの早さに驚いた。


 セバスチャンは一礼をしながら入って来たが、ソファーが真っ二つになっているのを見て驚いて足を止めた。


「これは?」

「ごめん、王様からもらったこの剣の切れ味が試したくて切っちゃった」

「おやおや。すぐに替えを手配いたしますが、とりあえずは使っていない客室のものをお持ちしましょう」

「すまないね」

「それにしても、よくその剣で切れましたね。かなりの重さですから、振るのも大変だったと思いますが」

「それがねえ・・・ちょっと持ってみて」

「はあ」

 セバスチャンは腑に落ちない顔をしながら剣を受け取った。


「軽い!・・・どういうことでしょうか」

「なぜか、強化魔法をかけたら軽くなっちゃったんだよ」

「そうなのですか!・・・驚きました」

「そして、切れ味もスゴかった。まるで手ごたえがなかったのにソファーが見事に真っ二つになったからね」

「そのようですね」

 セバスチャンはソファーが切断されているところに行き、しゃがみこんでその切断面を確認した。


「・・・確かに恐ろしいほどきれいな切断面です。その剣は、実は聖剣のたぐいだったのではないでしょうか」

「やっぱりそう思う?今クロアと話してたんだけど、今まで誰も武器に強化魔法がかけられることを知らなかったから、これが聖剣だということに気づいてなかったんじゃないかと思うんだよね。じゃないと、俺にくれないでしょ」

「なるほど。確かにその可能性が高いですね」

「しかし、そうなると俺が持っててもいいものか判断に困るな。明日、魔導士長に相談してみるよ」

「それがよろしいかと思います」




 次の日、魔法訓練が始まる前にトキオは魔導士長にこの件を切り出してみた。


「魔導士長様すみません。ちょっとご相談したいことが」

「なんだ」

「俺が王様から報奨として剣をいただいたのはご存知ですか?」

「聞いている。王家に古くから伝わる剣だが、儀礼用の物だそうだな」

「はい。鞘も含めて全体がプラチナ製のためすごく重くて実戦には使えそうにない剣だったんですが、実は昨日、強化魔法をかけたら驚くほど軽くなったんです」

「なに?」

「はい。クロアですら楽に振れるほどの軽さに変わりました。それで、もしかすると聖剣の類だったのではないかと思い、扱いをどうしたらいいのかお伺いしようと思いまして」

「ふうむ・・・それが本当だとすると、私一人では判断できかねるな。ちょっとここで待っていろ」


 そう言うと、一緒に話を聞いていたモルナール魔導士と訓練室を出て行った。



 20分ほどして戻ってきたが、勇者とゴットハルトも一緒だった。


「きゃっ!勇者様!」

 それを見たクロアが、嬉しそうな声を上げた。


 魔導士長たちは、まっすぐトキオのところにやって来たが、その間、クロアの視線は勇者に釘付けだった。


「トキオ、魔導士長から話は聞いた。確認したいので今からお前の屋敷に行きたいが、構わないか」

 勇者が言った。

「わかりました。ただ、俺の馬車はまだ迎えに来てないと思いますので、どなたかの馬車に便乗させてもらってもよろしいでしょうか」

「わかった。では、急ごう」


 そう言うと、そのまま城の入口へ向かった。

 入口に着くまでの間に、トキオは歩きながら4人に経緯を説明していたが、その間もクロアはずっと勇者を見つめていた。



 トキオが入口まで来ると、トキオの屋敷の馬車がそこに待機していた。


「あれ?なんでいるんだろう」


 トキオは馬車に寄って行って馭者に聞いた。

「こんな早い時間にどうしたの?」

「セバスチャン様が、午後1過ぎには戻って来られるだろうとおっしゃいましたのでお迎えに上がりました」

「そうなんだ・・・さすがだねえ、あの人」

 トキオが感心していると、勇者とクロアがやって来た。


「なんだ、トキオの馬車が来ているではないか。では、私もその馬車に乗せてもらっていいか。屋敷に着くまでにもう少し話を聞きたいのでな」

「もちろんです!どうぞ!」

 トキオが返事をする前に、クロアが答えていた。


「私もいいかな」

 魔導士長もやって来た。


「わかりました。どうぞ」

 魔導士長の言葉に対してはクロアは反応しなかったので、トキオがそう返答した。



 トキオの屋敷に着くまでの間に、さらに細かい経緯を説明したが、二人とも剣の重さは知らなかったようなので、とんでもなく重かったことを力説しておいた。


 そして、ちゃっかり勇者の隣りに座ったクロアは、ずっと勇者を見つめたままだった。



 いつもよりかなり早い時間だったが、セバスチャン、メアリー、ジェーンは、いつものように玄関先で待っていた。


「お帰りなさいませご主人様」

 そう言って、3人でいつものように頭を下げた。




 トキオの寝室に行くとすぐ、トキオは壁から剣を下ろした。


「強化魔法が切れたため、朝には元の重さに戻っていました。まず、その状態で持っていただけますか」

 トキオはそう言って、剣を魔導士長に手渡した。


「おおう、確かにとんでもない重さだ。こんなに重い剣は持ったことがない」

「そうですか。どれ」

 そう言いながら、ゴットハルトがその剣を受け取った。


「うわ!本当だ!これは実戦では使えないな」

「そうなんですか?」

 次に、モルナール魔導士がそう言うと剣を受け取り、同じような感想を漏らすと、勇者に手渡した。


「おお、本当に重いな」

 そう言いながら鞘から剣を抜くと、右手一本で数回振ったが、それはとんでもないスピードだった。


「ふむ、確かに実戦では使い物にならないな」


 勇者はそう言ったが、トキオは、


(いやいやいや、そんな速さで振れるなら使えるでしょ!)


 と、心の中でツッコミを入れていた。



「では、強化魔法をかけてみましょう」

 魔導士長はそう言うと、勇者が持っている剣に右手のひらを当て、目を瞑って強化魔法をかけた。


 5秒ほどする剣全体が青白く光ったが、それと同時に勇者が驚きの声を上げた。


「本当に軽くなったぞ!しかも、尋常じゃない変わりようだ」

 勇者はそう言うと、また、右手1本で数回振ったが、今度は速すぎて剣身がまったく見えなかった。


(やっぱり、さっきのは本来のスピードじゃなかったってことか!勇者様、スゴすぎ!)


 そして、その様子をクロアはうっとりとした目で見ていた。



「私にも持たせてもらって良いですかな」

 ゴットハルトが言ったので、勇者は剣を手渡した。


「本当だ!なんですかこれは!・・・魔導士長も持ってみてください」

「よろしいですか・・・なんと!」

 魔導士長も剣を受け取ると驚きの声を上げた。


 モルナール魔導士も同様に驚きの声を上げ、最後に勇者に返した。


「ふうむ・・・これは切れ味も試す必要があるな。庭に行くか」


 勇者はそう言うとすぐに部屋の外に出たが、そこにはセバスチャンが控えていた。

 ついに100話に到達しました。

 文字数も42万字を超え、文庫本にすると4冊分相当になると思いますので、よくぞ書いたものだと自分で呆れていますw

 

 ユニークアクセス数も3000を超え、6人の方に評価点も付けていただき、感無量でございます。

 お一人だけ、1点という評価点を付けられた方がいらっしゃいますが、評価点を付けていただくということは、それだけ気にしてくださっているということですので、嬉しい限りです。

 

 もう少し、ここに来るまでの経緯なんぞを書こうと思ったんですが、今日はアップが遅くなりましたので、明日以降に書かせていただきます。

(↑111話の後書きに書きました)

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