第10話 この世界の全貌
「で、何から聞きたいの?」
テーブルについて飲み物が来るとアウレラが聞いてきた。
「そうだねえ。まず、この国の組織と魔物を倒す組織の編成について、かな」
「また基本的な質問ねえ。そうねえ・・・まず、この国ミュラレシアは王国で・・・」
(あ、この国はミュラレシアって言うんだ)
「一番上にはヘルムート王がいる。ここはいわよね?」
トキオは、とりあえず頷いた。
「その国王の配下に軍隊があり、それが他国との抗争や、魔物の討伐をしてるの。けれど、人を襲う魔物が増えすぎて軍隊だけでは討伐が全然追いつかなくなったから、軍隊の下部組織として冒険者ギルドを作って一般から冒険者を大量に募集し始めたってわけ。昔から冒険者ってのはいたけど、ギルドができる前は軍から直接認可された腕の立つ人だけだったの。だから、そういう意味では冒険者全般のレベルは下がってるわ。それでも、中位以下の魔物なら討伐できる人が多いので、魔物の被害を食い止める役には立ってる。私なんかもその一人ね」
アウレラの話が憧れていた異世界の設定そのものだったので、トキオは、かなりキラキラした目でアウレラの話を聞いていた。
「なあに、その顔。そんなに興味深い話だった?」
「あ、いや、俺のことは気にしないで。じゃあ、魔物のランクとかは?」
「変なの・・・魔物は、親玉に魔王ゴルディーノがいて」
「え!?やっぱり魔王っているんだ!」
トキオは思わず大声を出した。アウレラは、トキオが嫌な顔をするかと思ったら嬉しそうな顔をしたので困惑したが、とりあえず話を続けることにした。
「そう、その魔王ゴルディーノに造られた魔像から次々と魔物が生み出されているらしいの。魔物が急に増え始めたのが5年前だから、その魔像が完成したのが5年前じゃないかってのがもっぱらの噂ね。そのちょっと前まで、魔王はどこかで長いこと眠ってたらしいわ」
「なるほどねー。困ったやつだなー」
そう言いながらもトキオの目はキラキラと輝き口元は緩んでいた。
アウレラはさらに困惑したが話を続けた。
「そして、今日討伐に行った動物型の魔物は最下層の魔物で、その上にゴブリンやオークのような人型の魔物がいて」
「ゴブリン!オーク!やっぱりいるんだ!」
「あー、そのへんは知ってるのね」
「あ、まあ、名前だけは」
「そうなの?先に話を進めるわ。そして、さらにその上に、ケルベロス、クラーケン、ヒドラといった魔獣がいるの」
「おおお!」
アウレラは困惑を通り越して渋い顔をした。
「で、それらの魔物や魔獣を統括するのが魔人で、その魔人を統括する親玉として魔王直属の幹部がいるのね」
「幹部!何人いるの?」
「今までに確認されているのは5人ね。人前にはめったに出てこないから、もっといるかもしれないわ」
「そうなのかー。なるほどなー」
そう言いながら、相変わらずトキオの目は輝き口元は緩んでいた。
「それで、魔獣や魔人は大抵の冒険者には手に負えないから、それらを討伐する最上位の人物として軍隊の中に勇者がいるの」
「勇者もいるんだ!!!」
トキオは、また大声を出した。
「さっきから、そのテンションの高い反応はなんなの?」
アウレラはイラッとした顔で聞いた。
「ごめん、ごめん。で、勇者って何人いるの?」
「この国には一人ね」
「え?たったの一人?」
「そう。その代り、私らとは異次元の強さだって話よ。だからこそ勇者なんだろうけど。ただ、軍隊の指揮下にならない教会付きで魔導士ってのが5人ほどいるわ。この人たちの魔法も異次元だから、幹部クラスと戦う時にはこの魔導士にも同行してもらうらしいの。実際に、勇者と魔導士2人で幹部を一人倒してるらしいし。だから、今いる幹部は4人ね」
「そうなのかー。さすが勇者様と魔導士様だなー」
「まあ、私らみたいな一般の冒険者は誰も姿を見たことないけどね。いるのは本当みたいよ。それと、教会は『聖光教団』っていうの。魔王を始めとした魔族は光が弱点だから、光を神様として崇めてるのよ」
トキオは、感心したという感じでうんうんと頷いた。
「ところで、ここにあるお城はなんなの?この大きさから言って、この街は首都じゃないでしょ?」
「ああ、ここのお城は魔獣や魔人を警戒した出城よ。少数だけど軍隊と上位の魔法使いがいるわ。だから逆に、魔物レベルでは出動しないわね」
「ああ、なるほどー。じゃあ、首都にあるお城ってもっと大きいの」
「そうよ。この国じゃ王都って言ってるけどね。私も1回しか行ったことないけど、とんでもなく大きくてきれいなお城だったわ」
「そうかー、見たいなあー」
「まあ、そのうち行く機会もあるでしょ」
「そうだね。まあ、少なくともこの街でしばらくは魔物討伐をして経験を積まないとね」
そこでアウレラは、少しかしこまった態度になった。
「・・・しばらくここにいるつもりなら、うちのパーティーに入らない?」
「え!?入れてくれるの?」
「トキオなら、剣の腕も立つし、魔法も使えるから大歓迎よ。それと、格闘技もできるらしいじゃない。食い道楽で巨漢のヴァルターを失神させた話、聞いたわよ」
「あいつヴァルターって言うんだ。しかし、もうその話が伝わってるのか。昨日のことなのに」
「昨日のうちに冒険者ギルド内には広まってたわ。今まで誰も適わなかったヴァルターを文字通り瞬殺したってので、大騒ぎだったわ」
「いや、そりゃ困ったなあ。あんまり目立ちたくなかったんだけど」
「まだあなたの顔を知らない人がたくさんいるから大丈夫だけど、数日中にはわかっちゃうわね。で、うちのパーティーに入る話はどう?」
「もちろん喜んで入れてもらうよ!わからないことだらけだから、どこかのパーティーに入れてもらおうと思ってたんで助かるよ」
「ホント!じゃあ決まりね。良かった!」
アウレラが心底嬉しそうな顔をしたので、トキオはまたドキッとした。
(美人冒険者に勧誘されるってのは願望だったんだけど、本当にそうなるとはね。やったね!)
トキオが、またにやけた顔をしたので、アウレラはまた渋い顔に戻った。
「じゃあ、話も聞けたし、買い物もしたからギルドに戻ろうか」
「そうね」
そう言って二人は立ち上がってギルドに向かったが、アウレラは、やっぱり腕を組んではくれなかった。
「お、アウレラ、トキオ、お疲れさん」
ギルドに戻ると、トキオが声をかけるより早く、テリットが二人に気付いて声をかけてきた。
「買い物は済んだか?」
「うん、当面のものはね。アウレラが案内してくれたからホントに助かったよ。色々と、この国や魔物のことについても教えてもらったし」
「これから一緒にパーティーを組む仲間なんだから当然よ」
アウレラが微笑みながら言った。
「お!じゃあ・・・」
「うん。トキオはうちのパーティーに入ってくれるって」
「そうかー!良かった、助かるよ」
「まだ経験不足だけど、よろしく」
トキオがお辞儀をしながら言った。
「ちぇっ!先を越されたか!残念!」
隣のテーブルにいたマルケルが本当に残念そうに言った。
「そういえば、パーティーのメンバーが誰だかちゃんと聞いてなかったね。今日、森に行ったメンバー全員が同じパーティーじゃないよね?」
「あれ?そんなこともわかってないでOKしたのか」
テリットとアウレラは笑った。
「まあ、どのパーティーでも今日のメンバーならベテラン揃いで色々と教えてくれそうだと思ったからね」
トキオとしてはアウレラがいれば他は誰でも良かったんだが、そうは言えなかった。
「確かに、今日森に行ったメンバーは、それなりに経験豊富なメンバーだな。まず、うちのパーティーは、俺とアウレラとブロームだ。残りのマルケル、ヴィリー、フォス、パーヴェルがもう一つのパーティーだな」
「了解。じゃあ、よろしくお願いします」
トキオは、テリット、ブロームと握手した。
「うちは、アウレラが治癒魔法を使えるが、攻撃魔法が使えるメンバーがいなかったんで欲しいと思ってたんだよ。それと、剣と格闘技の腕も立つようだから余計に助かるよ」
「正直、自分が皆に比べてどの程度のレベルか全然わかってないし知らない魔物も多いから、最初はうまく戦えないと思うけど大丈夫かな?」
「いやいや、今日見た感じだと少なくとも剣は即戦力だよ」
「そうよ。もっと自信持ちなさいよ」
「そうかなあ。まあ、やれる限りことはやるよ。基本的な戦い方ってのは、帰りの馬車の中で聞いた感じでいいのかな?」
「そうだが、頭を狙う戦略を検討したからといって、すぐにはうまくできないと思うから、まあ、その辺は実戦で試しつつ調整だな」
「わかった」
「俺たちが教えられることは教えるが、その前に、今日、トキオがフォドラを切った時の動きについて教えてくれないかな。俺の目には単純に右に移動したようには見えなかったんでね。それと、ヴァルターをどうやって倒したかと、どうやって失神させたかも知りたいな」
「ああ、それは俺も聞きたいと思ってたんだ」
マルケルが言った。
「あの、食い道楽での一件か?それは俺たちにも教えろよ」
「そうだ、聞きたいぞー」
一緒に森に行った以外の冒険者からも要望の声が上がった。
「いいけど、ここじゃちょっと難しいなあ」
「じゃあ、裏庭に行こう。訓練用の機材もあるしな」
「裏庭なんてあったんだ」
「そりゃ冒険者ギルドだからな。訓練用の施設はあるよ」
「ああ、なるほど」
そういうことで、そこにいた全員が裏庭に移動した。
トキオがヴァルターを倒したという噂はかなり広まっていたので、人数は15、6人にもなっていた。




