なるほど。 いつだってコミュニケーションは「なるほど」から始まるのか。
「なあなあ、ちょっと相談があるんだけど、聞いてくれないか?」
「なに? ちょうど手が空いたところだから、今なら大丈夫だよ」
「相談ってのは、人間関係のことなんだけど・・・」
ああ、なるほど。
そういやこいつ、この前上司と口論になってたな。
もしかしてあれか? 直属の上司と口論になっちまって気まづいから俺に仲介をやって欲しいとか、そんなところか?
まあ別に、俺も会社の一員として、仲を取り持つぐらいならやぶさかではない。
そうだな・・・、まあまずは無難に、次の飲み会の時にでも・・・。
「人間関係ってか・・・、要するにその、先輩の同期の〇〇さんって、その、彼氏とかいるんっすか?」
「・・・・・なるほど? いや知らんけど、そっちか、なるほど」
一番最初の(心の中での)「なるほど」は、思い込みによるなるほどで。
次の「なるほど」は、自分の想像が見当違いであったことを理解した意味でのなるほど。
最後の「なるほど」は、自分の向かう方向を軌道修正するためのなるほど。
最初のなるほどでは、まだコミュニケーションが始まっていない。
次のなるほどで初めて同じ土俵に上がり、もう一度なるほどと呟くことで、初めて相手と会話ができる。
最初の段階で「はぁ? 何行ってんだこいつ」となってしまえば、コミュニケーションは成立しない。
次のなるほどによる軌道修正が行われなければ、それはキャッチボールではなく球拾い。
互いに相手のいない方向に向かってボールを投げて、それを拾ってまた適当に投げることをコミュニケーションとは言わない。
最後のなるほどは、なくても別にいいんだけど「自分が間違っている」ことを認識したら自然と出てくるなるほどなんだとも、思う。
相手が恋バナをしようとしているのに、上司との仲を取り持つ方法について話していたら、それはそれで滑稽というか、シュールな感じになっちゃうからね。
結局のところ、コミュニケーションを成立させるには、受け手側の「なるほど」がどうしても必要不可欠になる。
いくらこちらが誠意の限りを尽くして語りかけたとしても、相手に一度のなるほどもないのでは、それはキャッチャーのいないキャッチボール。
打者は打つ気満々! さあ、ピッチャー第一球・・・投げた! 空振り! あぁっとしかし! キャッチャーがいない! ボールはフェンスにぶつかり転がっている!
そしてそのまま・・・ランニングホームラーン!!
結局自分は何を書きたかったんだ? まあいいや。