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兎木話

作者: 妄想少年

 肥料が欲しい。

 大きな植木鉢の中でそう思う。

 肥料や水といったものを与えられなくなってしまってからどれくらい経つだろう?

 大きな植木鉢の中で考えてしまったが、茶色い植木鉢を眺めてみても一向に答えなど出る筈も無く……


「お腹減ったなぁ」


 呟いてみた。

 久し振りに口を開く。

 目は半分空いたままなので逸らされる事なく毎日毎日同じ月を眺める。

 そう言えばあそこに言った兎はどうなっただろうか?

 ――そんな事を考えた。




『兎木話』




 僕は脈略も無く目覚めた。

 目覚めたというよりも自我を持った。

 それは人間に近い枯れ木のようだと兎は語った。

 兎というのは僕が目が醒めた時に僕に寄り掛かっていた女の子だ。

 彼女は自分を兎だと語った。

 人恋しさから僕に自我を与えてしまったらしい。

 つまり僕は目覚めた訳ではなく、彼女が僕を産んだという事だ。

「じゃあ貴方が僕の産みの親ですね」

「分からない。ただ私は枯れ木と性交出来る手段を持たないけどね」

 笑いながらそう語る。

 その笑みは独特で、いやに愛想笑いだと理解出来る表情だった。

 そこから僕と兎はこの狭くも広くも無い部屋で生活を続ける事になる。

 兎は僕に沢山の知識を教えてくれた。

 世界が何故滅んだのか。

 なぜ人類は停滞したのか。

 どうしてこの部屋の窓からは空しか見えないのかを教えてくれた。

 人類は兎だけを残して全て滅んでしまった。

 それは終焉とか審判の日とかそういう物じゃなくて人類は兎が中学二年の時に作り出した核弾頭を放ったと同時に終わってしまったらしい。

 ただの気紛れで作った核弾頭だったのにねと兎は愛想笑いを浮かべて昔話を進める。

 それは一瞬の事で、世界は脆いのだと判った瞬間でもあったらしい。

 そこから生きて行く為に彼女は一人でガラクタの塔を建てた。

 『何故?』と聞くと『神様に文句を言いたかったの』と彼女は語る。


「神様は凄い意地悪なんだなって思ったの」

「どうして?」

「人間には才能というのがあるの。枯れ木には分からないかも知れないけれど、だから人間は、その才能をどうやって開化させるのかを模索しながら生きていくのよ。でも私の場合はその才能は兵器を作る事だったから」

「それは悪い事なの?」

「兵器は人殺し意外何も出来ないのよ。人殺しは人を殺すしか出来ないの。それは規模が大きければ大きい程、悲しい事よ」

 彼女は語る。

「だから私は月に行くの」

「月に神様は居るの?」

「居ないわよ。でも月に行けば地球よりも神様に近づけるとは思わない?」

「じゃあ神様は何処に居るの?」

「神様は何処にでも居るわよ。存在さえ認めれば何処にでも」

 兎はやはり愛想笑いしか浮かべなかった。

 そこから兎はガラクタを集めて不安定な塔をずっと建てた。

 雲を突き抜けて、空を突き抜けて、朝と夜がこなくなった頃、兎はそのガラクタからロケットを作り出した。


 兎が消える前日。

 兎は不思議な事を言い出した。

「ねぇ枯れ木。貴方はもう連れていけないけれど、貴方は枯れ木である前に枯れ木としてどんな人生だったか覚えてる?」

「僕は自我を与えられてから自我を得たんだから、僕はそこから生まれた訳でその前もその後も無いんじゃないかな?」

「やはりそう思うのね。でも自我というのはそう簡単には出来ないものなのよ? ならば何故貴方は自我を与えられたのか分かる?」

「僕には君が言いたい事がよく分からないけれど、君は僕に自我を与えた事に後悔しているの?」

「分からない。ただ私は母さんが憎かったのだけは覚えているわ」

「君が神様意外の悪口を言うのは初めて聞いたよ」

「そう?」

「うん」

「枯れ木。貴方は凄くいい木だったわ。私を産んでくれたし、私におこずかいくれたし、私を愛してくれたから凄く嬉しかったわ。でもあの女の物にはしたく無かったのよ」

「あの女?」

「分からなければそれでいいわ。ただ地球を離れる前に私を愛していると言ってくれないかしら?」

「どうして?」

「どうしても」

「兎を愛している」

 兎は悲しい笑みを浮かべてありがとうと語った。

 次の日、目が覚めたら兎の姿は無かった。

 どうやら月に旅立ってらしい。

 それから何年も何十年も何百年も経ったある日、月からこのガラクタ塔の部屋に着くようにミサイルと共に手紙が着いた。

 そこには小さく。




どうして愛してくれないの?




―完―



寝て起きたら11〜12時という訳の判らん時間帯で携帯でチマチマしてたら出来た。

いつも通りの携帯更新

久し振りにPCで長文書きたいけれど……時間がありませんorz

…………あれこれって後書きじゃ(以下略


まぁ一言言えるのならば、こういう作品はやはり読者よりも作者が大好きすぎて困る。単なるエゴだね。

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