1-9
しかし、です。実は帰路につかなかった人が1人いました。城島さんです。城島さんはビデオに幽霊が映ってなかったことに合点がいってないようです。
城島さんはあの廃ホテルでリアルに悪霊に憑りつかれてしまった。それなのにビデオには幽霊は映ってなかった・・・ これでは納得いきません。そんなわけで、城島さんはあの廃ホテルに自転車を走らせ、もう一度自分の眼で確認する気でいます。
けど、心霊スポットには1人で行ってはいけません。待ち受けてるのは幽霊だけとは限りませんからね。
陽がかなり傾きかけたころ、城島さんが廃ホテルに到着しました。さっそく仮囲いの隙間から侵入。やはり人気はありません。城島さんは玄関の壊れた自動ドアから中に入りました。
廃ホテルの廊下、スマホで撮影しながら歩く城島さんの姿があります。で、廊下の突き当りで撮影を終えると、さっそく再生。それを凝視する城島さん。
「いない・・・」
どうやら動画機能で心霊を探してたようです。けど、この建物に巣食っていた悪霊たちはすべて千可ちゃんに退治されてます。幽霊が映るはずがありません。
と、スマホを見ている城島さんの背後に人影が? その人影がいきなり右手を伸ばし、城島さんの口をふさぎました。
「うぐっ?」
城島さんは一瞬抵抗しようとしましたが、すぐに気を失ってしまいました。この右手の持ち主は20歳くらいの男、生きた男です。右手には何か液体を染み込ませたハンカチを持ってます。男はニヤッと笑いました。何かすごく嫌な予感がします。
「ただいま~」
千可ちゃんが自宅に帰ってきました。千可ちゃんは急いで自分の部屋に入ると、さっそく紙袋の中からウィッグを取り出しました。艶やかでロングな黒髪のウィッグ。もう千可ちゃんの目は輝いてます。
「ああ、ずーっと憧れてたロングヘア・・・ オカルト研究部に入ってよかったあ!」
さっそく千可ちゃんはそのウィッグを頭に装着しました。そして姿見の前に。右を向いてポーズ。左を向いてポーズ。正面を向いてポーズ。千可ちゃんはとっても上機嫌です。
けど、どうもどこか変です。そう、ちょっとずれてるのです。
「う~ん・・・」
千可ちゃんは一度ウィッグを外し、もう一度装着。けど、やはりイマイチ合ってないようです。
「おかしいなあ・・・」
で、もう1回外して、また装着。が、今度はひどく不格好になってしまいました。髪の毛が千可ちゃんの顔に被ってます。
「あれれ・・・」
千可ちゃんは困ってしまいました。浜崎さんにもっとウィッグの付け方を教えてもらえばよかったなあと後悔してます。と、その瞬間、千可ちゃんの身体に何か嫌な衝撃が走りました。
「な、なに、この感覚?・・・」
千可ちゃんはその嫌な感覚の正体を知ろうと、ふーっと目をつぶりました。リモートビューイングです。
ここはちょっと高級なマンションの部屋。ベッドの上に城島さんが寝かされてます。口はタオルのようなものでふさがれ、両手両足はそれぞれロープでベッドの端に結ばれてます。つまり、大の字状態。城島さんはなんとか逃げようと身をよじってますが、まったく動けません。
ドアが開き、男が1人入って来ました。廃ホテルで城島さんを拉致った男です。男の手には大きなナイフがあります。男はそのナイフを城島さんに見せつけました。
「へへへ」
男はさらにナイフの側面で城島さんのほおを軽く叩きました。
「ほれ、ほれ、ほれ」
城島さんの顔は恐怖でひきつってます。
「う・・・ ううぅ・・・」
「さぁて、いただくとしますか」
と、男は城島さんのスカートの中に手を入れました。抵抗しようと激しく身体を捻る城島さん。と、口を覆っていたタオルが外れました。城島さんは叫びます。
「や、やめてーっ!」
「うるせーよっ!」
男は城島さんの顔面を1発殴りました。城島さんはこれで抵抗をやめてしまいました。
「へへ」
男は不気味に笑うと、城島さんの両足を縛るロープを2本、ナイフで切りました。城島さんは涙を浮かべてます。
千可ちゃんはこの光景をリモートビューイングで見てます。
「き、城島さん・・・ なんとかしないと・・・」
ここで千可ちゃんはレイプ魔を呪い殺すことを考えました。千可ちゃんは普段からお母さんに人を呪うなと何度も何度も言われてますが、今はこれしかないと自分に言い聞かせました。
これを最初に書いたころ、TOKIOは今ほどメジャーになってませんでした。「城島」は今はTOKIOのせいで「じょうじま」と読む人が多いと思いますが、ここでは「きじま」と読みます。あしからず。