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千可ちゃんがいる教室です。突如引き戸が開き、長谷川が入ってきました。どこで拾ってきたのか、金属バットを担ってます。
「羽月ーっ!」
千可ちゃんはその声にびっくり。
その長谷川の前にこの教室の先生が立ちふさがりました。
「な、なんだ、お前?」
「うぜーっ!」
長谷川はその先生の脇腹をバットで殴りました。
「ぐふぁ!」
先生の身体は床に転びました。
「きゃーっ!」
「うわーっ!」
この教室の生徒たちがパニックになり、次々と教室の外に逃げて行きます。千可ちゃんも逃げようとしましたが、その目の前に金属バットが。長谷川が金属バットで通せんぼしたのです。
「おおっと~ あんたは逃がさないよ!」
長谷川は千可ちゃんにバットの先端を向けました。じりじりと下がって行く千可ちゃん。その顔は恐怖に引きつってます。
「な、なんなのよ・・・」
「てめーっ、佐々木と今田と柏木をやったろ!」
「知らないわよ、そんなの!」
「しらばっくれんなーっ! うちのクラスの霊感のあるやつが、てめーの生霊を見たんだよ! お前、霊体を飛ばしたろ!」
千可ちゃんはそれを聞いて「しまった!」と思いました。霊体のチカちゃんを回収するの、忘れてたのです。ここはしらばっくれるしかありません。
「生霊?・・・ な、なんのことよ!」
「ふざけんなーっ!」
長谷川が金属バットを大きく振り上げました。
「死ねーっ!」
そのとき千可ちゃんの指先に偶然何かが触れました。それはイスの背もたれでした。千可ちゃんはそのイスを掴み、長谷川に投げつけました。
「来ないでーっ!」
「何よ、こんなものーっ!」
長谷川はそのイスを金属バットで打ちました。イスは窓ガラスに激突。窓ガラスは粉々に砕け散り、イスは校舎の外に落ちていきました。
この喧噪は隣りの隣りのそのまた隣りの教室にまで響いてきました。この教室にいる森口くんはそれを聞いてはっとしました。
この教室の先生も喧噪が気になったようです。
「ん、なんだ?」
先生はドアを開け、廊下の奥を見ました。すると何人もの生徒が「うわーっ!」と悲鳴をあげ、一目散に駆けてきました。
「な、何か非常事態が起きてんのか?」
先生は教室の中を見て、
「みんな、逃げろ!」
生徒全員立ち上がり、一斉にドアに向かいました。
「うわーっ!」
生徒たちは廊下に出ると、みんな同じ方向に駆けだしました。森口くんもみんなと同じ方向に駆けだそうとしましたが、ふいに立ち止まり、流れとは逆の方向を見ました。すると真後ろにいた戸村くんと鉢合わせになってしまいました。
「うわっ!・・・ お、おい・・・」
「ご、ごめん。向こうに千可ちゃんの教室があるんだ。ちょっと見てくる」
と言うと、森口くんは人の流れに逆らって駆け出しました。戸村くんはそれをただ見送りました。
「・・・」
再び長谷川が暴れてる教室です。千可ちゃがまたイスを投げ、長谷川はそれを金属バットで打ちました。イスはまたもや窓ガラスに激突。窓ガラスはすでに原形をとどめないほど壊れてます。一方千可ちゃんの周りのイスはなくなってしまいました。机だけです。
「はぁはぁはぁ・・・」
千可ちゃんはかなり息苦しそう。長谷川はその千可ちゃんにバットを向けました。
「へへ、なんだよ、もうおしまいかよ」
千可ちゃんはさっきから長谷川を直接呪い殺そうと考えてますが、気が動転してて、呪うことができません。
と、今ここに森口くんが飛び込んできました。
「千可ちゃん!」
千可ちゃんは横目で森口くんを見て、
「こ、来ないで!」
長谷川が金属バットを振り上げました。
「けっ! よそ見すんなっ! 死ねーっ!」
けど、
「チカちゃん!」
千可ちゃんが苦し紛れにチカちゃんを呼びました。するとチカちゃんが長谷川の真後ろに出現。手にした妖刀キララの太刀を大きく振りぬきました。バサッ!
「ぐきゃーっ!」
長谷川が背中を大きく袈裟斬りにされました。長谷川の身体は大きくのけ反り、そしてゆっくり倒れました。チカちゃんはいつものように不気味に笑いました。
「ケケケケ」
ワンテンポおいてチカちゃんは消滅しました。千可ちゃんの危機は去りました。




