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けど、こっちの集団はかなり気分が悪いようです。
「ねぇ 知ってる? 2年の羽月て女と森口て男が毎日セックスしてるんだって」
「え~ 何、それ?」
「許せない。わたしだってまだ処女なのに!」
「あはは、あんた、まだ処女なの?」
「いいでしょ、そんなこと!」
「あ~ なんか頭来んなあ。今日放課後、2人とも〆ちまおっか?」
「賛成!」
「ギタギタにしちまおうぜ!」
この会話はこの高校に在籍している4人の女子、長谷川、柏木、今田、佐々木のものです。4人とも3年生です。不良少女らしく、茶髪やピアスの娘もいます。高校の校舎の陰でべた~と座って会話をしてました。
じつはこの4人、先輩風を吹かせ、下級生をイジメてよく問題を起こしてました。つい3日前も1人の女の子を吊るし、その子は今心療内科に入院してます。
千可ちゃんと森口くんはこいつらのターゲットになってしまいました。はたして千可ちゃんはどう対処するのでしょうか?
昼休みです。千可ちゃんがクラスの何人かの女の子と机を並べて食事をしています。千可ちゃんは1年生の時は引っ込み思案でしたが、重石だったお母さんがいなくなったせいか、今はたくさんのお友達を作ってました。
みんなでおしゃべりしていると、友人の1人が千可ちゃんの小さなお弁当箱に注目しました。
「羽月さんて、そんな小さな弁当でも大丈夫なの? ダイエット?」
「あは、私、小食だから、これでも多いくらいなんですよ」
別の友人も千可ちゃんに質問しました。でも、それはかなりデリケートな質問でした。
「千可ちゃんてその~ 毎日男の子とやってるの? 今学校中で話題になってるよ」
「あは、まさか~ クラブの新人の女の子にふざけておシモの話をしたら、本気にされちゃって・・・ こんなちっちゃな女の子が毎日男の子とエッチしてると思います?」
千可ちゃんはあらかじめ用意しておいた回答を言いました。
「あは、それはないわよねぇ」
「でもさあ、このクラスの女の子って、9割は非処女じゃないの?」
「あは、まさかあ」
と言うと、千可ちゃんは満面の笑みを浮かべました。どうやら千可ちゃんの策略は成功したようです。
と、今ここに1人のちょっと気弱な女の子が現れました。女の子は恐る恐る千可ちゃんに近づき、千可ちゃんに1枚の紙片を手渡しました。
「あの~ これ・・・」
女の子は紙を渡すと、逃げるように教室の外に出て行ってしまいました。千可ちゃんの隣にいた女の子がけげんな顔でその女の子を見ました。
「何、あの娘?」
千可ちゃんはその紙に書いてある文字を読みました。
「今日放課後、体育館の裏に来ること、もし来なかったらリンチにする 長谷川」
それを横からのぞき込んでいる友人がびっくりしました。
「長谷川って、あの先輩風吹かせてるやつ?」
「あんなやつに目をつけられたなんて、最低だよ・・・」
「で、でも、なんで羽月さんが?・・・」
千可ちゃんはなんら動じることなく、ただその文章を読んでました。と、遠くから千可ちゃんを呼びかける声が。
「千可ちゃん、千可ちゃん」
千可ちゃんが振り向くと、ドアのちょっと外側に森口くんと戸村くんが立ってました。
「ごめん・・・」
と言うと、千可ちゃんは立ち上がり、2人のとろこに行きました。千可ちゃんが来ると、森口くんは千可ちゃんに1枚の紙片を見せました。
「千可ちゃん。ぼくんところにこんなものが・・・」
そこに書いてあった文章は、さっき千可ちゃんが受け取った文章とまったく同じものでした。
「今日放課後、体育館の裏に来ること、もし来なかったらリンチにする 長谷川
私んとこにも、同じものが来たよ」
戸村くんは心配してます。
「長谷川って、あれだろ。下級生をイジメてよろこんでるやつ」
「戸村くんもやられたことがあるの?」
「いや、オレはこんながたいのせいか、1回も絡まれたことないよ」
「ええ、相手を見てイジメてるの? 最低なヤツ! そんなヤツ、なんで先生は野放しにしてんのよ?」
「それが、その長谷川ってやつ、祖父が市長なんだ。そのせいか、学校は何も注意できないんだよ」
千可ちゃんは市長て言葉が引っかかりました。千可ちゃんのお母さんは小学生のとき、野中雄一てやつにイジメられて首の骨を外されたことがありましたが、そいつの祖父が皆川市の市長だったのです。
肉親の権力を借りて弱いものをイジメる。こいつ、野中雄一とまったく同じじゃん・・・ 千可ちゃんはふつふつと怒りがこみあげてきました。
「ここは私に任せて」
森口くんはそれでも心配です。
「で、でも…」
「ふふ、私にいい考えがあるんだ」
その言葉に戸村くんは何か嫌なものを感じました。




