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4-19

 千可ちゃんは楽器店に入りました。中に進むと千可ちゃんはまずエレキギターのディスプレイを見ました。森口くんはそれを傍らで見ています。

「へ~ 羽月さんてギターに興味があるんだ」

 すると千可ちゃんは不機嫌な顔になり、それをわざと森口くんに見せました。

「ねぇ、さっき言ったよねぇ。羽月さんて言うのやめてって! 千可ちゃんと言ってよ!」

「ご、ごめん・・・」

 千可ちゃんは再びエレキギターを見て、

「私、昔ギター習ってたんだ。クラシックギターだけどね」

「へ~ 今はロックのギターにも興味があるんだ」

「うん」

 千可ちゃんはずーっと1つのエレキギターを見てます。

「このギター、いいなあ・・・」

 森口くんがその値札を見たら、高校生にはかなり苦しい数字でした。でも森口くんは、何かを決意したようです。

 千可ちゃんはガット弦とスティール弦を買って店を出ました。

「じゃあね」

 千可ちゃんと森口くんが分かれました。森口くんは以前千可ちゃんとかわした濃厚なキスを期待してましたが、残念、それはありませんでした。


「ただいま~」

 千可ちゃんが自分の家に帰ってきました。けど、お母さんの返事がありません。いつもなら応えてくれるのですが。

「あれ、お母さん、いないのかな?・・・」

 気になった千可ちゃんが、お母さんの寝室を開けました。

「お母さん?」

 お母さんはベッドの中で寝てました。このベッドはお母さんとお父さんが愛を育んだダブルベッドです。

「寝てるんだ。まだ疲れがとれないのかな?」

 ちなみに、お父さんは今北海道に出張中で、1年に20日くらいしか帰ってきません。

 千可ちゃんは部屋を出ようと振り返りました。が、ふと何かに気づき、再びお母さんを見ました。お母さんの枕元に紙片がありました。電話の横に置いてあるような、切り取れるメモ帳の紙です。千可ちゃんはその紙片を手にし、読みました。

「ありがとう、千可・・・」

 千可ちゃんの身体に嫌な予感が走りました。千可ちゃんはお母さんの首筋に手を伸ばしました。すると脈が、脈がありませんでした。

「お母さん?・・・」

 千可ちゃんの眼から一筋の涙がこぼれました。次の瞬間、千可ちゃんは布団ごとお母さんの身体を思いっきり抱きしめました。

「お母さーん!」

 千可ちゃんは泣きました。思いっきり泣きました。とめどなく涙があふれました。ずーっと、ずーっと泣きました。お母さんは17歳の誕生日に千可ちゃんを産んでます。今千可ちゃんは16歳。お母さんはたった33歳で亡くなってしまったのです。こんなに悲しいことがあるのでしょうか?

 千可ちゃんは泣いて泣いて泣き続けましたが、3時間くらいしてなんとか携帯電話を取ることができました。相手は北海道にいるお父さんです。すぐにお父さんが電話に出ました。でも、千可ちゃんは泣きじゃくってるので、なんと言ってるのかわかりません。それでもなんとか愛妻が亡くなったことを知りました。お父さんはすぐに自分の妹に電話し、妹はすぐに羽月家に駆けつけました。妹、千可ちゃんから見たら叔母さんに当たる人が、いろいろと事後処理をしてくれました。

 ちなみに、この叔母さんも、お父さんも、千可ちゃんの秘密は知りません。


 しかし、なんでお母さんは急死してしまったのでしょうか? その原因は山上静可に放った霊波にありました。

 千可ちゃんの霊力はお母さんの数百倍、いや、それ以上はあります。その余りある霊力を破壊光線にして撃つことができます。これはお母さんもできないし、おばあちゃんの山上静可にもできない技です。でも、千可ちゃんはあのとき山上静可に霊体を斬られ霊波を撃つことができませんでした。そこでお母さんの身体を借りたのです。けど、霊波を撃った瞬間、お母さんの霊気は一気に吸い取られてしまったのです。

 お母さんはそれで体調を崩してしまいました。その直後千可ちゃんに添い寝してもらい、千可ちゃんの霊力を吸い取り、お母さんの体調は回復しました。でも、それはあくまでも一時的なもの。お母さんは自分の霊力が再生できないことに気づき、死期が近いことを悟りました。けど、千可ちゃんには気づかれたくなかったので、わざと元気な霊波を出していたのです。

 千可ちゃんはお母さんの死を知った直後、それを霊視で感じ取りました。結果的に自分の霊波でお母さんを殺してしまったのです。だからとっても悔しいのです。

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