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4-12

「山上静可はどのような手段を使って先祖霊たちを襲撃したんですか?」

「山上静可は妖刀キララを持ってます。あの刀は肉体を斬ることは出来ませんが、幽体や霊体を斬ることができます。先祖霊たちは、みんな、あの妖刀にやられたんだと思います。妖刀キララに斬られると、地獄でも天国でもない深淵のようなところに墜ちてくようなんです」

「もし生きてる人間を斬ったら?」

「右手を斬られたら、右手の幽体と霊体が斬り離されてしまうから、一生右手が動かなくなります。脚を斬られたら、一生歩けなくなります」

「もし身体を斬られたら?」

「もちろん死にます。心臓麻痺のような症状で死ぬようです。

 今私の周りには結界が張り巡らされていますが、これを維持するには最低3人の守護霊が必要と言われてます」

「3人ですか?・・・」

「ええ。今残ってる先祖霊は3人。もしまた1人斬られたら・・・ もう私も先がないのかもしれません・・・」

 千可ちゃんは言葉をなくしてしまいました。そしてこう思いました。なんてかわいそうな人なんだろう。この人も私が守ってあげないと・・・

「私が知ってることはこれだけです。ごめんなさい。なんの役にも立てなくって」

「いいえ、十分役に立ちました」

「これからどうするの?」

「私はオカルト研究部の部員ですよ。なんとかしますよ」

 というと、千可ちゃんは立ち上がりました。

「それじゃ、また会いましょう!」

「お互い生きてたらね」

 2人は再び握手しました。


 平屋外観です。今玄関が開き、千可ちゃんが姿を現しました。玄関前にはパイロットの先祖霊が立ってました。どうやら千可ちゃんを待っていたようです。ただ、その他2人の先祖霊の姿は見えません。彼1人のようです。パイロットの幽霊は千可ちゃんに話しかけてきました。

「話は終わったのか?」

「はい」

 パイロットの幽霊は千可ちゃんの身体からあふれ出てくる霊力をあらためて感じ取りました。

「お前、すごい霊力を持ってるな。2回目だな、こんな霊力を感じるのは」

「1回目は山上静可?」

「ふふ、そうだ」

「なら、私は山上静可と同等の力を持ってるってことですね」

「ふっ、戯れを・・・

 お前、山上静可と闘うつもりでいるな」

 千可ちゃんは笑顔を作り、

「ええ、もちろん」

 パイロットの幽霊は視線をはずし、

「山上静可は悪霊じゃないぞ。怨霊だ。別の言い方をすれば呪い神だ。お前は人間だろ。人間が神に勝てると思ってんのか?」

 すると千可ちゃんは、

「ふふ、私は生きた呪い神ですよ」

 と応えました。パイロットの幽霊は苦笑しました。

「じゃ、お前に期待しよう。あの娘、野中圭子を助けてやって欲しいんだ。あいつは野中家最後の血だ。あいつが死ぬと、オレたち先祖霊は存在意味がなくなってしまうんだ」

「ふふ。言われなくても私はその気ですよ。山上静可、あの霊は私が片づけます」

「信じていいのか?」

「もちろん」

 それに対するパイロットの幽霊の応えはありませんでした。


 野中家の門から千可ちゃんが出てきました。千可ちゃんはふつーに歩道を歩き始めました。が、なんの前触れもなく突然停止しました。そしてその姿勢のまま語り始めました。

「山上静可、そこにいるんでしょ? 姿を隠してるなんて卑怯じゃないの? いい加減姿を現してよ!」

 千可ちゃんは右手の拳を胸の前に持ってきました。するとその手に短刀が現れました。千可ちゃんは振り向きざまその短刀を横一文字に振りました。

「たーっ!」

 するとその切っ先から強い光が放たれ、空中を切り裂きながら突進して行きます。けど、あるところで突然カキーンという衝撃音がし、その光が真っ二つに分裂しました。

 その場所に1つの人影が現れました。太刀を逆手に持って切っ先を下に向けた女です。どうやらこの刀で千可ちゃんの攻撃を防御したようです。

「ふふ、よく儂の居場所がわかったな」

 女は30歳前後。ストレートヘアの長髪で、かなりの美人。身長は千可ちゃん同様かなりミニミニなようです。眼はかなり鋭く、不気味な感じがあります。

 千可ちゃんはすぐに理解しました。こいつが山上静可だと。千可ちゃんは初めて山上静可の気配を感じたときかなりの威圧感を感じましたが、こうやって直に対峙してみるとあまり恐怖を感じません。千可ちゃんは「こいつなら勝てる!」と自信が湧いてきました。

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