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4-11

 部屋の中です。家そのものが小さいので1LDKのようですが、内装はほぼまるまる一般の家庭と同じです。DKに女性が1人います。20台前半の女性です。彼女は今、テーブルのイスに座ってます。と、突然玄関のドアをノックする音が。女性ははっとしてドアを見ました。

「ど、どなた?」

 ドアが開き、千可ちゃんが入ってきました。

「初めまして」

 いきなり小さな女の子が入ってきたもので、女性はびっくりしてます。

「ええ?・・・」

 千可ちゃんに続いてパイロットの幽霊も顔を見せました。背後には看護師と学生服の幽霊もいます。

「この娘、あなたと話がしたいようだ。オレたちは出ていくよ」

 3人の幽霊はドアから出て行きました。さっそく千可ちゃんの質問です。

「あの~ あの3人が見えるんですか?」

「ええ。あなたも見えるようね」

「はい。あ、私、羽月千可と言います」

 と言うと、千可ちゃんは右手を差し出しました。

「私は野中圭子」

 2人は握手しました。野中さんは近くのイスを見ました。

「そこに座って。ああ、この部屋に生きた人間が訪ねて来たなんて、いったい何年ぶりのことか・・・」

 千可ちゃんはイスに座りました。

「私は高校のオカルト研究部にいます」

「あなた、高校生なの? てっきり中学生かと・・・」

「あは、私、身体が小さいせいでよく言われるんですよ。私、これでも16歳なんですよ。

 実はうちのオカルト研究部が山上静可に呪われてしまったようなんです。1週間前私たちはここに来たのですが、そのとき私の仲間がここで大ケガを負いました」

「ああ、あのときの救急車・・・」」

「山上静可の呪いって、いったいなんなんですか?」

 野中さんは視線をずらして、

「実は私もよくわからないんです・・・ わかる範囲でお教えしましょう。

 私が3歳のときです。私の9つ違いの兄が、飛んできた鉄骨に踏み潰されて死んでしまいました。これが呪いの始まりと言われてます」

「なんであなたのお兄さんが?」

「それもよくわからないんですよ。周りの人に質問したんだけど、誰も応えてくれませんでした。そのうちみんな死んじゃって・・・

 あとで当時の新聞を見て確認したんだけど、兄が事故死したという事実しか書いてありませんでした。ただ、それ以降、兄が通ってた皆川西部小学校では不可解な事故が相次ぎ、それが原因で皆川西部小学校は閉鎖されたとも書いてありました」

「もともとここには大邸宅があったみたいですね」

「私の祖父は皆川市の市長だったんですよ。皆川市が皆川村と言われていた時代からの首長でした。そのせいか、うちは大金持ちだったんですよ。

 けど、兄の死をきっかけに、うちの家族は次々と死んでいきました。最後に残ったのは、私と祖父だけでした。

 祖父は日本全国からたくさんの霊能力者を呼んでこの不幸の原因がなんなのか調べてもらいました。彼らは口々に山上静可の怨念だと指摘しました。祖父は彼らに祈祷をお願いしましたが、ほとんどの霊能力者は帰ってしまいました。山上静可の怨念があまりにも強くって、対決は避けたようなんです。けど、いくつかの助言をくれました。

 実はこの土地は、風水的には最良の土地だったようなんです。特にこの家が建ってる場所は、風水がかなり強い場所だったようです。祖父はそれを聞いて、すぐさまここに家を建てました」

「それでこの家は小さいんですね」

「その通り。それに・・・」

 野中さんは斜め上の方に視線をやりました。そこには八角形の護符がありました。壁掛けフックに吊るされた護符です。

「みんなで協力して護符を作ってくれたんです。また、18人の先祖霊を召喚してくれました。風水の力と護符と先祖霊で三位一体の強固な結界が完成しました。この結界は山上静可の霊を払い退け、私はここまで育つことができました」

 ここで千可ちゃんの脳裏に疑問が浮かびました。

「18人ですか? 3人しかいないようですが?・・・」

「去年まで18人いたんですよ。そのおかげて私は高校まで卒業できたし、大学に通うこともできました。でも、ある日突然1人消えてしまったんです。するとまた1人、また1人と消えていきました。どうやら山上静可は自分の気配を完全に消してしまう能力を習得したみたいなんです。その能力を使って、先祖霊たちを次々と襲撃したみたいなんです。

 私を護っていた先祖霊たちはパニックになってしまい、中には私の元から去って行った先祖霊もいました。私を護る術はあっという間に狭まってしまい、今はこのように家に閉じこもったままになってしまいました。情けないありさまです」

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