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4-8

 その翌日から千可ちゃんはふつーの生活に戻りました。高校もふつーに通いました。福永さんも、森口くんも、戸村くんもふつーに通ってます。ただ、浜崎さんだけは学校を休んでます。浜崎さんの心の傷はかなり大きいようです。


 そして1週間後、千可ちゃんは城島さんのお見舞いに行くことにしました。城島さんは皆川市民病院に入院してます。皆川市には山上静可の呪いの本拠地、皆川西部小学校と半分壊れた大邸宅があります。皆川市に行くという行為は、みずから呪われに行くようなものです。

 けど、千可ちゃんにも、他のオカルト研究部の部員にも、入院している城島さんにも、1週間呪いは降りかかってきませんでした。もし本当に山上静可に呪われてるのなら、1週間も襲ってこないなんて絶対ないはず。千可ちゃんは呪いは解けたと判断しました。


 その日千可ちゃんはお昼ご飯を自宅で食べました。本当は朝一で皆川市に行くつもりでしたが、事前にインターネットで調べたら、皆川市民病院の面会時間は午後2時からでした。そんなわけで、お昼ご飯を自宅で食べてから出発することにしたのです。

 ご飯を食べてる間、千可ちゃんもお母さんも無言でした。本当は2人とも山上静可のことを話したかったのですが、あえてその話題は避けてました。ただただテレビの音だけが2人を包んでました。

 ご飯を食べ終わると、千可ちゃんはさっそく玄関を開けました。

「じゃ、行ってくるよ」

 お母さんはそれを送り迎えしてます。

「行ってらっしゃい」

 静かにドアが閉まりました。


 千可ちゃんは自転車に乗っていつもの駅に行きました。そこから電車に乗って皆川市へ。皆川市の駅に着くとすぐに花屋を見つけ、花束を買いました。お見舞いの花束です。

 次に千可ちゃんは皆川市民病院行きのバスを探しました。浜崎さんならここでタクシーに乗るのですが、千可ちゃんはそんなにお金を持ってません。千可ちゃんはバスを探し出すと、そのバスに乗り込みました。

 バスは細い道を走りました。旧道のようです。路線バスは古くから存在してる場合が多々あるので、細い旧道を走る路線バスは多いようです。

 この道の歩道ですが、専用の歩道はなく、ガードレールで仕切られてる狭い歩道しかありません。自転車はとうてい走れる幅ではないので、車道を走るしかありませんでした。

 今1台の自転車が車道の端っこを走ってます。そのため、千可ちゃんが乗ってるバスは行く手を阻まれ、ゆっくりと走行してました。

 バス車内です。乗客は10人くらい。全員座ってます。千可ちゃんは前扉のすぐ後ろの席に座ってます。千可ちゃんは前を見てます。数十メートル先には信号があります。信号の色は赤です。今信号待ちしてる車両は1つもありません。その向こうには片側2車線の新道があります。

 たった今信号が青になりました。その瞬間、千可ちゃんの身体に突然悪寒が走りました。城島さんの眼にガラス片が刺さったときとまったく同じ悪寒。これは山上静可の呪い? バスに何かが起きる? 今すぐバスを止めないと! け、けど、どうやってバスを止める?

 そのとき千可ちゃんの眼は、バスの前を走る自転車を捉えました。これだ! 千可ちゃんは反射的にその自転車に呪いをかけました。

「転べ!」

 すると自転車は何も触れてもないのに右側に転びました。新道の手前、直交する横断歩道の中です。バスは急ブレーキ。次の瞬間、驚愕な出来事が起きました。なんと大型のトレーラートラックが新道を右から左へ、猛スピードで突っ走って行ったのです。バスの乗客たちはざわめき立ちました。

「お、おい、なんだよ、あのトレーラー。完全信号無視じゃん・・・」

「もし自転車が転んでなかったら、私たちは事故に巻き込まれていた・・・」

 どうやら千可ちゃんの機転でバスは救われたようです。けど、千可ちゃんは感じてしまいました。山上静可の呪いは終わってなかった、と・・・

 自転車に乗ってた人はその場にいた歩行者の手を借り、立ち上がりました。けど、どこか痛めたのか、横断歩道の端でうずくまってしまいました。千可ちゃんは窓越しにその人を目視してつぶやきました。

「ごめんなさい。私の都合で痛い目に遭わせてしまって」

 その後バスは無事に皆川市民病院に到着。千可ちゃんは病院の中に入りました。

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