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4-7

 ここは病院の廊下、手術室の前です。城島さん以外のオカルト研究部の5人が長イスに座ってます。5人とも落ち込んでいます。千可ちゃんは昨日自分が言ったセリフを思い出してました。

「ふふ、大丈夫。どんな呪いでも私がみんなを護るから・・・」

 今の千可ちゃんの心の声です。

「ふん、何がみんなを護るよ。私は何もできなかったじゃん・・・」

 千可ちゃんは両ひざの上でジーンズの生地を握りしめていました。身体全体が震えてます。戸村くんがその千可ちゃんの異変に気づきました。怖いけど頼もしいあの羽月さんが振るえてる。悔しいのか? それとも山上静可に怖気づいたのか?・・・

 戸村くんは千可ちゃんに呪い殺され、そして千可ちゃんによって蘇りました。そのとき霊能力が身に付きました。けど、その霊能力は千可ちゃんの霊能力の1%もありません。そのせいか、あの瞬間山上静可の存在には気づきませんでした。今の千可ちゃんの姿を見て、戸村くんはあらためて山上静可の真の恐怖を知ったようです。

 浜崎さんもふさぎ込んでました。

「私のせいだ。あの時タクシーの運転士の忠告を聞いてれば・・・」

 廊下の奥から中年の男性と女性が駆けてきました。城島さんのお父さんとお母さんのようです。お父さんが叫ぶように言いました。

「娘は、娘は今どこにいるんだ?」

 浜崎さんは立ち上がり、2人の前に立ちました。

「今手術中です。私はオカルト研究部の部長、浜崎です」

 城島さんのお母さんは、いきなり浜崎さんに張り手を食らわしました。

「あなた、いったいうちの娘に何やったのよ!」

 お父さんがそのお母さんの身体を止めました。

「バカ! やめんか!」

 浜崎さんは立ったまま、うつむいてしまいました。

 結局この場はお父さんとお母さんに任せることにし、オカルト研究部の5人は帰ることにしました。


 その日の夜の羽月邸です。千可ちゃんがお母さんと食事してますが、千可ちゃんは冴えない顔をしてます。さすがのお母さんも心配してるようです。

「千可、何かあったの?」

「うん・・・」

 でも、それ以上の答がありません。代わりにお母さんが発言しました。

「城島さんだっけ? 以前あなたが助けたクラスメート。その娘にまた何かあったようね」

 お母さんも霊能力があります。どうやらお母さんは何があったのか、ある程度把握してるようです。

 千可ちゃんはぽつりと言いました。

「左眼にガラスが刺さったんだ。眼球摘出だって。右眼も危ないみたい・・・」

「そう。それは不幸ね・・・」

「ねぇ、お母さん。山上静可って知ってる?」

 お母さんは即答しました。

「さあ、知らないねぇ・・・」

「城島さんをやった悪霊だよ」

 お母さんのそれに対する答えは無言でした。千可ちゃんはぽつりと言いました。

「私、怖いんだ・・・」

「ええ?・・・」

「山上静可がオカルト研究部のみんなを殺しに来るような気がするんだ。私じゃ、山上静可を止めることはできない・・・」

 そう言うと千可ちゃんは黙ってしまいました。お母さんはびっくりしてます。千可ちゃんがこんなに弱気になるなんて、お母さんの記憶では一度もありませんでした。

 けど、お母さんは安心しました。実はお母さんは山上静可を知ってました。もちろんその呪いの能力も重々承知してました。その能力は千可ちゃんと同等かそれ以上だとも知ってました。だから千可ちゃんが城島さんの恨みを晴らすとか言い出したら大変と思ってました。けど、千可ちゃんは山上静可に恐怖を抱いてくれました。お母さんはほっと一安心です。

 今お母さんは山上静可の気配を感じてません。この町に山上静可は来てないようです。お母さんはそのことを千可ちゃんに教えてあげました。

「千可、今この町に強力な悪霊はいないわよ」

「え? で、でも、山上静可は霊気を消すことができるんだよ」

「ふ、私の霊視能力を知らないの?」

「そうだった。お母さんは世界一の霊視能力があったんだ」

「そう。だから安心して」

「あは、ありがとう、お母さん」

 千可ちゃんはようやく安心した顔になりました。ちなみに、お母さんの霊視能力が世界一かどうかはわかりませんが、千可ちゃんのそれとは段違いであることは確かなようです。

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