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3-5

 廊下の片隅、昨日と同じ場所で千可ちゃんと戸村くんが話し合ってます。千可ちゃんはまるまる太ったボストンバッグを戸村くんに渡しました。

「これ、全部書いて」

 戸村くんはそのボストンバッグのチャックを開け、中を見ました。するとたちまち不満な表情になりました。

「これ、全部っすか?」

「うん」

 この2人のやりとりを物陰から見ている人影があります。森口くんです。森口くんの表情には、なにか悲愴感があります。

「羽月さんですかぁ、あの映像潰したのは?」

 その戸村くんの質問に千可ちゃんは満面の笑みで応えました。

「うん。昨日幽体離脱・・・」

 と、ここで千可ちゃんは何かを感じ、右手の人差指を自分の唇に重ねました。しーのポーズです。戸村くんもそれを見て、何かに気付いたようです。

「じゃあね」

「うん」

 2人は別々の方向に歩き始めました。


 下駄箱に向かって千可ちゃんが歩いてます。その行く先で森口くんが物陰に隠れて待ち構えてます。森口くんは千可ちゃんに何かを言いたいようです。それで罠を張ってるようです。

 けど、いつまで経っても千可ちゃんは来ません。いい加減しびれを切らした森口くんがそーっと顔を出したら、その反対方向から声がしました。

「そこで何やってんの?」

 森口くんは思わず腰を抜かしてしまいました。

「うわっ!・・・」

 その声の持ち主は千可ちゃんでした。

「は、羽月さん?」

「私に何か言いたいことがあるの?」

 森口くんは黙ってしまいました。

「いいよ。遠慮しないで言って」

「その・・・

 なんで羽月さんはあんなやつと付き合ってんですか?」

「あんなやつって・・・ 戸村くんのこと? そりゃあ、同じ部活の仲間だもん。話したってなんの問題もないでしょ。森口くんだって、彼とうまくやってんじゃん」

 すると森口くんの顔色はあっという間に変化し、大きな声を発しました。

「は、羽月さんはぼくの気持ちがわかってない! ぼくは羽月さんが好きだ! 大好きなんだ!」

 千可ちゃんはそれを聞いて一瞬びっくりしましたが、次の瞬間下を向いてしまいました。ちょっと照れ笑いしてるようです。

 と、千可ちゃんはいきなり数歩進みました。森口くんはすぐ目の前に千可ちゃんが移動して来たもんでびっくり。さらに驚くことが。千可ちゃんがいきなりキスしてきたのです。

 千可ちゃんの背丈は140cm。森口くんの背丈は165cm。25cm差を埋めるように思いっきり背伸びして、千可ちゃんは森口くんの唇にキスをしました。その瞬間、森口くんはかなりびっくりしたようです。

 千可ちゃんは背伸びがきつかったのか、すぐに唇を離しました。千可ちゃんは上気してるようです。

「ねぇ、ぎゅっとして・・・」

「えっ?」

「ぎゅっとしてよ」

 千可ちゃんの眼は本気でした。けど、森口くんはためらってます。千可ちゃんはしびれを切らして、こう言いました。

「どうしたの? 早くしてよ。男でしょ?」

 その言葉で森口くんは決断しました。ほんのちょっと間を開けて千可ちゃんの身体を思いっきり抱きしめたのです。千可ちゃんの身体は抱きしめてみると、見た目以上に小型でした。けど、とっても柔らかく感じました。特に胸に当たる千可ちゃんの胸の膨らみは、とっても巨大でした。

 千可ちゃんの顔を見ると、唇を求めてるようです。森口くんはそのままキス。次の瞬間森口くんの眼に衝撃が走りました。なんと千可ちゃんが森口くんの口の中に舌を入れてきたのです。森口くんはどうすればいいのかわかりません。とりあえず舌を絡めました。森口くんの心臓がバクバクと激しく鼓動しています。こんなこと、生まれて初めてです。

 2人のキスは続きましたが、しばらくして2人は身体を離しました。千可ちゃんはさらに上気してるようです。顔が真っ赤です。

「ご、ごめん。今日はこのへんで許して」

「いや、あの、ぼくは別に・・・」

 森口くんは自分が思っていた以上の展開になって、かなり戸惑っているようです。

「ねぇ、戸村くんとうまくやってよ」

「う、うん」

「ありがと。じゃね!」

 千可ちゃんは下駄箱から靴を取り出しました。と、何かを思い出したように振り返り、

「あ、今の私のファーストキスだからね!」

 そう言うと、足早に行ってしまいました。森口くんはまだ茫然としてます。

 今の千可ちゃんの行為は、自分でも思ってもみなかった暴走だったようです。恥ずかしくなってしまい、それで足早にここを立ち去ったようです。

 ちなみに、ファーストキスというセリフは真っ赤なウソです。千可ちゃんは14歳のときに初体験を済ませてますが、そのときの彼と何度も何度も濃厚なキスを交わしてました。

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