3-1
今回から第3章。この章に15禁シーンがあります。
ここはどこなのでしょうか? ある意味真っ白い、ある意味灰色な、ある意味ドス黒い空間です。その中に1人、女の子がいます。女の子は座ってます。ただ、何に座ってるのかわかりません。見えない何かに座ってます。女の子は泣いてました。
「なんで泣いてるの?」
女の子がはっとして顔を上げると、そこには千可ちゃんがいました。
「あ、あなたはたしか、4組の羽月さん」
「はい、羽月です。よくわかりましたねぇ。私はあまり目立たない存在なんですけど・・・」
千可ちゃんは女の子に相対して座りました。ここにも見えないイスがあったようです。
「あなたが泣いてたから、気になって来ました。高校に行ってないみたいだけど、どうして?」
「怖いから・・・」
千可ちゃんはちょっと考え、そして再び質問しました。
「戸村くんがいるから?」
女の子は何も反応しません。
「私もあいつに殴られたんだ」
「え?」
千可ちゃんは左手で自分の左眼の下に触れました。
「ここを殴られたんだ。むちゃくちゃ腫れたよ。おまけに、私の顔を踏み潰そうとした。頭に来たから、呪い殺してやったよ」
女の子はちょっと驚いてます。
「呪い殺したの?」
「うん。でも、謝ってくれたから、生き還らせた」
「ええ・・・」
女の子はちょっと残念そうです。千可ちゃんは言葉を続けました。
「戸村くんはね、森口くんも傷つけたんだ。肋骨を折ったんだよ。けど、私が戸村くんに謝ってと頼んだら、ちゃんと森口くんの前で謝ってくれた。戸村くんてほんとうはいい人なんだよ。悪い霊が憑りついてただけなんだよ」
それに対する女の子の反応は無言でした。千可ちゃんはさらに言葉を続けました。
「ここに戸村くんを呼んで、謝ってもらおっか?」
女の子は顔色を変え、感情的に即答しました。
「いやっ!」
千可ちゃんは困ってしまったようです。
「ん~ そっか・・・」
千可ちゃんは立ち上がりました。
「今度は教室で逢おっか」
千可ちゃんは歩き出しました。それを見て、女の子は慌てました。
「ちょ、ちょっと待って!」
と、千可ちゃんの姿は霧に消えるようにふっと消えました。女の子はとても残念そうです。
ここは現実世界、オカルト研究部の部室です。テーブルのイスに座ってる福永さんがいや~な顔で横を見ました。
「あんたさぁ、なんでここにいるの?」
福永さんの視線の先には、なぜか戸村くんが座ってました。戸村くんが応えました。
「入部届け、出しましたよ」
その横に座ってる森口くんが苦笑いしてます。福永さんはたぶんこう思ってると思います。
「部長~ なんでこいつ、入部許可したのよ!」
と、ドアが開き、当の浜崎さんが入ってきました。浜崎さんは高揚してました。
「あった! ありました!」
浜崎さんは手にしてたDVDのパッケージを掲げました。
「ほんとうに怖い心霊ビデオ第60巻。発売日にレンタルできました!」
福永さんと城島さんが目を輝かせました。
「やったーっ!」
浜崎さんは得意満面な顔で発言を続けました。
「レンタルてことでパッケージは持って来れなかったけど、パッケージの写真だとみみずく神社も出てくるみたい」
それを聞いた千可ちゃんが、ほんの一瞬嫌な顔をしました。
DVD再生開始。みみずく神社の話題は最初にありました。DVDのナレーターの説明だと、最近○○死ねと書かれた絵馬が奉納されてるので、神社が監視カメラを設置したところ、その夜信じられない人影が映ったとのこと。いよいよそのシーンです。
絵馬掛け全体を映してる監視カメラの映像。と、いきなり半透明な人影が出現しました。森口くんはびっくり。
「うわっ! いきなり出た!」
人影は斜め後ろになってるので顔はわかりません。が、千可ちゃんはだれだかわかってます。そうです。これは幽体離脱した千可ちゃん本人です。千可ちゃんはあのとき、まさか監視カメラで監視されてるとは夢にも思ってませんでした。千可ちゃんは心の中で苦笑するしかありませんでした。
人影が絵馬掛けに手を伸ばし、1枚の絵馬を手にしました。人影がその手をまっすぐ前に伸ばすと、絵馬が突然パッと燃えました。これを見て一同は唖然としました。
「燃えた・・・」
「すごい心霊映像だ・・・」
映像の中の人影がふっと消えました。映像はリプレイ。さらにどアップにしてスローでリプレイ。これを見て福永さんがあることに気づきました。
「あれ、これ、羽月さんじゃ?・・・」
「あは、まさかあ・・・」
千可ちゃんは笑ってごまかしました。
浜崎さんは映像を止めました。
「燃やされたのはきっとあの呪いの絵馬ね」
「オレのこと、死ねって書いた絵馬っすか?」
と、戸村くんは応えました。実は戸村くんもこの人影が千可ちゃんだと気づいてました。




