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と、城島さんは突然千可ちゃんの両手を掴みました。
「あなたが私に取り憑いてた悪霊を追い払ってくれたのね!」
「ええっ?」
まさにその通りなのですが、千可ちゃんにしてみれば、絶対気付かれないようにやったつもりなので、これは意外でした。
「私、この前幽霊が出ることで有名な廃ホテルに行ったんだけど、それからずーっと体調が悪かったから、きっと廃ホテルで悪霊に取り憑かれたんだと思うの。お払いしてもらおうと考えてたんだけど、助かったよ。
そうだ、あなた、部活は?」
「え、え~と、帰宅部ですけど・・・」
「じゃあ、オカルト研究会に入ってくれない?」
「ええっ、オカルト研究会ですか?」
千可ちゃんは大いに困りました。実は千可ちゃんにはいろいろと制約があるのです。
「ただいま~」
千可ちゃんが自分の家に帰ってきました。こちらの家も住宅街にあるふつーの一軒家です。
千可ちゃんは靴を脱いで玄関に上がりました。壁1枚隔てた居間では、お母さんがテレビを見ています。
お母さんは千可ちゃん同様ミニミニな身体ですが,それ以外は正反対です。顔はとても美人で、眼は異様に大きく、それがお母さんを若く、いや、幼く見せてます。お母さんはすでに30歳を越えてるのですが、一見してまだJK、高校生に見えます。千可ちゃんと同級生だと偽りを言ったら、ほとんどの人が信じてしまうほどの幼さです。
髪の毛も針金ヘアの千可ちゃんとは真逆な、ピーンとしたストレートヘア。これを腰のあたりまで伸ばしてました。両耳のところには小さな三つ編みが見えます。これが幼く見えるお母さんをさらに幼く見せてました。
ただ,胸の方はかなり残念な膨らみでした。これだけは千可ちゃんが勝ってました。
ちなみに、お母さんの名前は美可。名前も美人でした。
お母さんは千可ちゃんの帰宅にはあまり興味がないらしく、テレビを見たまま、おかえり~と言うだけでした。が、ふと何かに気付いて、さっと立ち上がりました。
「千可ーっ!」
お母さんは突然大きな声を発しました。それを聞いて廊下の千可ちゃんはびびりました。ドアがバーンと開き、お母さんが飛び出してきました。お母さんは千可ちゃんのところに急ぎ足で来ると、右手を大きく振り上げ、千可ちゃんのほほに思いっきりビンタを喰らわしました。千可ちゃんの小さな身体はその威力で数メートル吹き飛び、無残にも床に転げました。お母さんはその千可ちゃんに向かって声を張り上げました。
「あなた、力を使ったわね!」
千可ちゃんは張られたほおを押さえながら、上半身だけ起こしました。
「ご、ごめんなさい・・・」
「どうして? いったいどうして? あれほど使うなと言ってたのに!」
そのお母さんの詰問に千可ちゃんは何も返答できません。お母さんは詰問を続けました。
「あなたのおばあちゃんはね、霊能力のせいで自殺したのよ! あなたも自殺したいの?」
「そ、そんなことないよ・・・ 今日クラスメイトに悪霊が取り憑いてたから、取り除いただけだよ・・・」
千可ちゃんは声にならないほどの声で返答しました。お母さんははーっとため息をつきました。
「わかった。もう2度としないで。あなたの友達が悪霊に殺されても、あなたにはな~んの関係もない。これからはそう思って!」
千可ちゃんはうんとうなずきました。そしてとぼとぼと2階の部屋に消えて行きました。