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1-11

 遠くの方でサイレンが鳴ってます。そのサイレンがどんどん、どんどん近付いてきます。千可ちゃんはカーテンを開け、真下を見ました。高さ的にここは10階くらいか。マンションの下の方ではパトカーと救急車と消防車が集まって来てます。あたりはすでに夜です。

 城島さんはベッドに腰掛けてます。なんか、ちょっと震えてます。

「な、何が起きてんの?・・・」

 千可ちゃんはその質問に振り返ることなく応えました。

「わかりません。私たちを助けに来たのかも」

 と、いきなり玄関の呼び鈴が鳴りました。はっとする千可ちゃん。千可ちゃんは玄関の前に行くと、ドアの向こうに呼びかけました。

「だれ?」

「私よ。開けて!」

 それは千可ちゃんのお母さんの声です。

「お母さん?」

 千可ちゃんは玄関のドアを開けました。そこには千可ちゃんのお母さんが立ってました。お母さんは千可ちゃんの顔を見るなり、千可ちゃんのほおに1発ビンタを喰わせました。ただ、この前みたいな勢いはなく、千可ちゃんの身体は床に転がることはありませんでした。千可ちゃんは張られた頬を押さえ、

「ご、ごめんなさい・・・」

 と、か細く謝りました。お母さんはそんな千可ちゃんを無視して、部屋の中に入りました。お母さんは城島さんを見つけると、彼女の前で腰を降ろし、視線の高さを合わせました。

「私は羽月美可。千可の母よ。立てる?」

「はい」

 城島さんは立ちました。


 マンションのエントランスの前では、たくさんの回転灯が廻ってます。あまりにも回転灯が廻ってるもので、まぶしいくらいです。それを遠巻きにたくさんのやじ馬が集まってます。やじ馬の中からひそひそ話が漏れてきました。

「幽霊だーっ!て叫びながら、道路に飛び出したんだってさ」

「トラックに轢かれて、五体ともバラバラになったんだよ。私、見ちゃった。今夜寝れないかも・・・」

 どうやら城島さんをラチった男は、トラックに轢かれて死んでしまったようです。

 やじ馬の背後を歩く3つの人影があります。千可ちゃんと千可ちゃんのお母さんと城島さんです。千可ちゃんは靴がないので、スリッパを履いてました。

 千可ちゃんはふと回転灯の中を見ました。けど、ブルーシートが立てられていて、何がどうなってるのかわかりませんでした。

 マンションからちょっと離れた100円駐車場に駐めてあるクルマに3人が乗り込みました。これは羽月家のクルマです。喧噪の中、クルマが出発しました。

 クルマは城島さんの家の前に停車しました。城島さんは1人クルマを降りました。そしてくるっと振り返って、深々と頭を下げました。なお、お母さんと城島さんとの打ち合わせで、城島さんはこの時間まで千可ちゃんの家にいたことになりました。

 ちなみに、城島さんが乗ってたときも、降りたあとも、千可ちゃんとお母さんとの会話はありませんでした。


 次の次の日、月曜日、城島さんはいつもと変わりなく登校してきました。千可ちゃんはそれを見て笑顔になり、話しかけました。

「城島さん、大丈夫ですか?」

「ふふ、大丈夫、大丈夫。あんなもん、一晩寝ちゃえば、すぐに忘れちゃうよ」

 城島さんはもう大丈夫なようです。今度は城島さんの質問です。

「羽月さんはなんともなかったの?」

 千可ちゃんは頭をかきながら、

「それが・・・ 部長さんからもらったウィッグを忘れちゃって・・・」

「あ~ それは部長には内緒にしないといけないねぇ」

「はい」

 なんであの部屋にいるとわかったの? どうやってテレビから這い出てきたの? なんて質問がくると思い千可ちゃんはいろんな回答を用意してましたが、その必要はなかったようです。

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