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 千可ちゃんは一心に祈り、そして一言つぶやきました。

「死ね!」

 ドックン。その瞬間、男の心臓に衝撃が走りました。

「うう?」

 が、男にそれ以上の変化はありません。

「なんだ、動悸か?」

 千可ちゃんはとても残念がってます。

「く・・・」

 千可ちゃんは再び「死ね」とつぶやきました。が、今度は何も起きませんでした。

 千可ちゃんは呪うという能力はピカイチですが、それには当然霊的パワーが必要です。けど、霊的パワーを使えば一発でお母さんにバレます。もしお母さんにバレたら、また強烈なビンタです。そのせいで呪うという行為は、いままでほとんどしたことがありません。つまり、馴れてなかったのです。

 もう千可ちゃんにできる手は何もありません。千可ちゃんは両手を合わせ、祈りました。

「神様、お願い、城島さんを助けて!」

 すると千可ちゃんの部屋のテレビがふいにつきました。そこには今城島さんをレイプしようとしている男の姿が映ってます。

「城島さん?」

 千可ちゃんは反射的にその画面に触れました。すると指先が画面の中に入ったのです。その瞬間、まるで水の中に手を突っ込んだような波紋が画面いっぱいに広がりました。千可ちゃんは一瞬はっとしましたが、今はためらってる隙はありません。このままテレビの中に突入することにしました。


 ついに男が城島さんのパンツが脱がし、スカートの中から引きずり降ろしました。

「へへへへ。

 ん?」

 男がふと何かを感じ、そして振り向きました。すると消してあったはずのテレビがついてました。しかもそこには、長髪の女の頭頂部がどアップになって映ってました。そうです、これは千可ちゃんです。千可ちゃんはミニミニなので本来怖くないのですが、このときの千可ちゃんはウィッグの長髪がだらーっと垂れ下がっていて、かなり不気味な感じになってました。

「うひゃあっ!」

 男は腰を抜かしました。なんとテレビ画面から千可ちゃんの指が出ているのです。さらに画面から両手がぬーと出てきました。

「う、うわ、はあ・・・」

 男は腰を抜かしたまま、後ずさりしました。ついには千可ちゃんの頭部が画面から抜け出てきました。そして顔を上げ、男をぐわしっとにらみました。千可ちゃんはかわいいのでにらまれてもあまり怖くはないのですが、このときは長髪の隙間から目が見えてる状態。これは凄味があります。

「うぎゃあ~!」

 男はついに悲鳴をあげました。

「助けてくれーっ!」

 男はそのままドアを開け、部屋を出て行ってしまいました。この悲鳴を聞いて城島さんははっと我に帰りました。

「な、何が起きてんの?」

「城島さん・・・」

 城島さんがその声のした方向を見ると、そこにはテレビから胸まで身体を出した千可ちゃんがいました。ただし、長髪のウィッグが千可ちゃんの顔を隠してるので、悪霊の襲撃にしか見えません。

「うぎゃあ~!」

 城島さんは泡を吹いて失神してしまいました。

「ああ、城島さん!」

 千可ちゃんは目の前の床に手を突こうとしました。けど、この部屋のテレビはラックの上にあります。テレビと床の間には約75センチの空間がありました。千可ちゃんは床に手をついたつもりが、そのまま落下。顔面を床にしたたかに打ちつけてしまいました。

「うぎゃあ!」

 ああ、千可ちゃんの両目はなると状態。魂も抜けて行ってしまいました。が、千可ちゃんはすぐに目を開けました。

「そ、そうだ、城島さん!」

 千可ちゃんが城島さんがいるベッドに行くと、城島さんはまだ泡を吹いて失神したままです。千可ちゃんは城島さんの両肩を揺らしました。

「城島さん! 城島さん!」

 けど、城島さんは目を開けてくれません。千可ちゃんは足元に落ちてるナイフを拾い、城島さんの両手を縛っているロープを切りました。そしてナイフを握ったまま、また城島さんの肩を揺さぶりました。

「城島さん! 城島さん!」

「う、う・・・」

 やっと城島さんは目を開けてくれました。が、ナイフを握った長髪の千可ちゃんを見て、またもや悲鳴をあげました。

「うぎゃ~!」

 千可ちゃんはなんで城島さんが悲鳴をあげてるのか理解できません。

「城島さん、もう大丈夫ですって!」

 けど、城島さんは暴れたままです。

「やめて! やめて! 触らないでーっ!」

 と、ここでようやく千可ちゃんは長髪のウィッグをしてることに気づき、慌ててウィッグを取りました。

「もう、私ですよ。羽月です!」

 城島さんはようやく正気に戻りました。

「は、羽月さん? 羽月さんなの・・・」

 と、城島さんの目にうるうると涙があふれてきました。そしてわ~っと泣きだしてしまいました。千可ちゃんはそんな城島さんを強く抱き締めました。

「大丈夫ですよ。もう大丈夫・・・」

 でも、城島さんはしばらくは泣いたままでした。

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