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この話はかなり前に書いたものを何度も何度も推敲を重ねて作った話です。ここにUPするにあたり再び推敲しました。ま、今回はあまり変わりませんでしたが。
ここに1人の女の子がいます。羽月千可。高校1年生。と言っても、身長は140cmしかないおちびちゃんです。おまけに髪の毛が針金のように固く,そのせいで髪の毛を伸ばすことができません。しかも身体全体が細いので、後ろ姿は小学生の男の子そのものです。ただ、胸は標準よりはるかに大きいので、前から見るとはっきり女の子と認識できます。
顔はとても美人とは言えません。ただ、ちょっとかわいいようです。いや、人によってはかなりかわいく見えるようです。ここだけの話、私はとってもかわいく見えます。
実は千可ちゃんにはちょっと・・・ いや、ものすごい能力があります。誰もが驚くその能力。それは・・・ いやいや、それはのちほどお話することとしましょうか。
9月1日、夏休みが終わって最初の登校日。千可ちゃんも当然登校しました。この日はホームルームだけでした。ホームルームが終わるとみんな下校の用意です。千可ちゃんも下校しようと立ち上がりました。と、その瞬間、先生が声をかけてきました。
「あ~ 羽月、おまえ、城島の家知ってるよな?」
「はい、知ってます」
先生は1枚の紙を千可ちゃんに手渡しました。
「これ、届けてくれないか?」
それは今日クラスのみんなに配られた連絡表です。今日城島さんは学校をお休みしました。城島さんはこのクラスの女の子です。
高校生は夏休みになると道を踏み外してしまうことがよくあります。先生はそれがちょっと気になってるようです。それで千可ちゃんを使うようです。ま、当の千可ちゃんはそこまでは気付いてないようですが。
ピンポ~ン。千可ちゃんが城島さんの家の呼び鈴を鳴らしました。住宅街にあるふつーの一軒家です。
ピンポ~ン。もう1回千可ちゃんが呼び鈴を鳴らしました。でも、なんの応答もありません。
「いない?・・・」
千可ちゃんが諦めて帰ろうとしたとき、突然ドアホンから声が響きました。
「誰ですか?」
どうやら城島さんのようです。ただ、なんかものすごく頼りない声です。
「羽月です。あの~ 先生から連絡表を預かってきました」
千可ちゃんがそう返答すると、またもや沈黙。それが数分。仕方なく千可ちゃんが帰ろうとしたとき、ようやく玄関のドアが開きました。そのドアを開けたのは、当の城島さんです。城島さんはパジャマ姿、顔は蒼白状態でした。どうやらかなりひどい風邪をひいてるようです。
「ご、ごめんなさい、風邪を引いたんだけど、なかなか治らくって・・・」
と言い終わるや否や、城島さんは突然激しく咳き込みました。千可ちゃんはそれを見て慌てました。
「だ、大丈夫ですか?」
しかし、城島さんの咳はかなりひどく、ついには立っていられなくなり、ヘタレ込んでしまいました。それを見ている千可ちゃんは何もすることができません。と、そのとき千可ちゃんは発見してしまいました。城島さんの髪の毛の中に目だけを出した不気味な女がいたのです。
「悪霊・・・」
千可ちゃんは心の中でそうつぶやきました。そう、こいつは悪霊です。城島さんは悪霊に取り憑かれてたのです。
それを見つけた千可ちゃんは、実は見える人でした。いや、千可ちゃんの能力はそれだけじゃありません。悪霊を見つけた千可ちゃんは、反射的にこの悪霊を取り除くことを決意しました。
「しっかりして!」
千可ちゃんは城島さんを介抱するふりをして、城島さんの髪の毛の中にいる悪霊の頭を右手でむんずと掴みました。そのまま立ち上がりながらぐいーっと右手を引き上げると、悪霊の全身が姿を現しました。髪の毛の隙間から見えていた悪霊のサイズは小さな人形くらいでしたが、こうして見ると、170cmくらいはありそうです。
千可ちゃんはその悪霊をにらみ・・・ と言っても、千可ちゃんはかわいいのであまり怖くはないのですが。ともかく千可ちゃん流に悪霊をにらむと、心の中で「あっち行って!」と叫び、悪霊を玄関わきの壁にぶつけました。が、悪霊はそのまま壁を通り抜けるように消えてしまいました。
「せ、咳が止まった?」
城島さんの咳が止まったようです。いや、それだけじゃないようです。
「あれ、ずーっと重たかった頭が、急に軽くなった?・・・」
それを聞いて千可ちゃんはニコっとしました。
「あはっ、よかったですね」