後悔
「あと一球、あと一球だ...!」
夏の太陽が球場全体を燃やすかのように照りつけている。
だが、その暑さにも勝る熱気が1塁側アルプスにはあった。
寛也はブラスバンドの音が聞こえないほど集中してマウンドに立っていた。
(あと一球、あと一球だ...!集中しろ!)
寛也は自分に言い聞かせた。
自分の鼓動が聞こえてくる。
2アウトながらもランナーは満塁、点差は1ー0と僅差。
9回裏のマウンドには魔物がいるとよく言うが、誰がそんなジンクスを作り出したのだろうか。
意識せざるを得ないじゃないか。
寛也はゆっくりとしたセットポジションから、最も自信のある球を吉田の元へと投げ込んだ…。
おはよう寛也。
母の優しい声で寛也は目覚めた。
寛也は立ち上がり、乾ききった自分の枕に目をやった。
昨日のことを思い出すとまた涙がこみ上げてきそうだ。
枕を濡らすほど泣いたのはいつぶりだったろうか。
寛也の投げ込んだ球は決して吉田に届くことはなかった。
寛也の投げたカーブは吉田の手前で跳ね、後逸してしまった。
「回れ回れっ!!」
ランナーコーチが必死に手を回している。
「いやだ、いやだ!いやだいやだいやだ…。まだ終わりたくない。終わるわけにはいかないんだ…。」
寛也はマウンドに静まり込んだ。
「寛也!!ベースカバー!!」
ファーストの児島の声が聞こえた。
我に帰った寛也は急いでホームベースへ走った。
球場が広いせいか、なかなか吉田が後逸したボールにたどり着かない。
俺はこんな後悔を残しながら高校野球を終わらせてしまうのか…。
ついに2塁ランナーをも生還を許し、九鹿高校は敗戦してしまった。
魂が抜けたかのように朝ごはんを食べていた寛也へ一通の手紙が届いた。
[昨日の試合、拝見させていただきました。悔しいですか?
まあ、悔しいでしょうねぇ。あなたの暴投のせいで負けてしまったのだから。
おっと、自己紹介をするのを忘れていました。
私の名前はGです。
私は過去戻専門医、つまりタイムリープを職として生活しています。
興味があれば是非ご連絡を。
080ー××××ー△△△△]
なんだこれは…。
タイム リープ…??
なんの嫌がらせだ。過去になんて戻れるわけがない。
寛也は手紙を丸め、ゴミ箱へ投げ入れた。