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転移は善意に非

6話目

 スライムの紅い玉をやっと手に入れ、ニーネさんの所に戻る予定だ。


 スライムの紅い玉は特殊ドロップで、いわゆるレアアイテムと言うヤツだ。フィルネリアさんから聞いた。なんでも相当落ちないらしくて、スライムの割に報酬が良かったのでつい、受けてしまったそうだ。そこに、俺が現れスライム狩りを訓練の名目でやらせたらしい。


 助けてもらったのと、ブーツ代金以上は確実に働いた。異世界の人に安易に物を貰うもんじゃ無いし、安請け合いは命に関わることが理解出来ただけ、収穫かもしれない。


「ニーネさん!スライムの紅い玉出ましたよ!」

「本当ですか!?!良く出ましたね!」

「あぁ。大変だったぞ」


 フィルネリアさん貴女初日のウィークポイント以外、何もしてないじゃ無いですか、やだ。この人普通に俺が頑張ってる最中、木を削って良く分からんストラップ見たいなのを、黙々と作ってたからね。フィルネリアさん流石、ドラゴニックヤバい。しかも気に入らなかったのか、街に帰る前その辺に捨ててたし。本当なんなの。


 まあ、そのおかげでレベル上がったし、許さなくも無いけど、スライムは当分見たくない。アイツら力入れ過ぎると、飛び散ってベトベトするし、最悪消化途中の死骸が、顔や服にかかったりするので、割と最悪で凶悪なモンスターだった。


 そういや、頭の中でステータス画面開けるんだし、今日の分でどれだけ上がったか見てみるか。異世界転移五日目。未だに呪文を唱える時は、ワクワクするし、ドキドキするぜ。よっしゃ行くぞ!



 "我示す、ステータスインディケート!"

 ――――――――――――――――――――――

 名前:真菊一文字 まぎくいちもんじ

 Lv.1→3 状態:精神疲労

 性別:男 年齢:17

 称号:異世界の槍使い

 渾名:ダークマッドサイエンティストスーパーランサー(ちょうつよい)

 HP  23/23 → 21/31

 MP  5/5

 STR(力)14→17

 VIT(頑健さ)11→14

 POW(精神力)15→21

 DEX(器用さ)12→18

 AGI(素早さ)13→16

 LUK(運)4→5


 残りステータスポイント:5


 パッシブスキル: 槍術Lv.3 体術Lv.2 不快耐性Lv.1 根気Lv.1


 アクティブスキル: スキル取得Lv.1 いっぱい突くLv.2


 その他称号: ナンセンス

 センチュリースライマー:気が狂ったようにスライムを倒し続けた者に贈られる称号。

 ―――――――――――――――――――――――



 状態が精神疲労って、そりゃあ、三日連続で飽きる程スライム狩ってりゃそうなるはな。スライム狩りと言う修行方法は、このステータスの上がり方を見るに、精神と器用さが鍛えられた様だな。後、称号の説明文は念じると隠せる事が判明した。


 不快耐性と根気は、手に入ったのが納得する程スライム倒したもんな。見た目の気持ち悪さと、作業ゲーの怠さが緩和されるので、率先して上げていきたい。出来ればアンデッドとか、キモい虫とかに遭遇する前に。


 どうしても抗議したいのは、運の上がり方渋すぎませんかねってこと。もう少し色付けくれても良くないですかね。レアドロップ出したんだし。どうやらこのステータス上昇、レベルアップまでに何をしてたかによって上昇量が変わるみたいだな。


 スライムの核狙いで器用さ、スライムを延々と叩く作業で精神力が上がってるみたいだ。まあ、そりゃあスキル習得するぐらいだしな。ドラゴニック頑張ったよ本当に。


 そういや、この世界のスキルって熟練度とステータスポイント両方で取れるんだな。他人のステータスを、見たことが無いから断言出来ないけど、スキルを取得出来るスキルは、転移特典なんじゃ無いだろうかと俺は考えている。


 注目すべきは、習得じゃ無くて、取得って所だな。多分だが、本来覚えられないスキルや難易度の高いスキルでも、ステータスポイントを必要量支払えば、強制的に得る事が出来るスキルだと思う。こういう場合、強いスキルは何万ポイントとか、必要だったりするんだけどな。


 おっと、あんまりボーっとしてる様に見えると、フィルネリアさん達に不審がられるから、スキル取得は宿の部屋に戻ってからにしよう。



「では、フィルネリアさん。こちらが報酬の3500Gです」


 さんぜんごひゃく!?!?3500ガムルだと!?野郎正気か!


 俺が一日中出鱈目に重い荷物運びをして25Gだぞ!嘘だ!あんなに頑張ったのに、俺には1Gも入ってこない。悲しみがドラゴニック強い。バハムート級だ。宿で不貞寝したい。


 エネメロさんのナイスなバディで癒されたい。本人の耳に欠片でも入れば、絶対茶化されるし、遠くからじっくりねっとり眺めるだけにしとくけど。


「マギクよ。今回のお前の働きは大きかったぞ!礼に今日は何か私の奢りで食わせてやろうじゃないか!報酬で懐が暖かいしな」

「ありがとうございます。とっても嬉しいですよ」

「その割にはあんまり嬉しそうじゃないな」


 いや、だってスライムの紅い玉をドロップさせたのも、朝から晩まで三日連続でスライムをシバキ続けたのも、俺なんだもの。嬉しいか嬉しくないかで言えば、フィルネリアさん見たいな美人と食事を共にできるのは、ドラ嬉しいけどさ。


 因みにスライム討伐の常時依頼は、スライム討伐数10匹で、5Gだ。アイツら倒した先から、何処からともなく現れるからな。安いのはしょうがないけどね。それなのに、綺麗なスライムは1匹も見たことが無い。綺麗なスライムはドラゴニックレアだ。延々と馬鹿の一つ覚えのように、称号付くまでスライム狩ってた俺が言うんだ、間違えない。


 1日に15Gも有れば、宿の一番安い部屋に泊まれて、一番安い料理なら三食食べれる事を考えれば、スライム10匹で、5Gはかなり良心的な価格だと思われる。


 スライムが10匹で5Gなのに比べて、他の低級モンスターが1匹幾らなのを見ると、如何にスライムが弱く、大量に存在してるかが良く分かるな。


 フィルネリアさんから聞いた話だと、人魔獣どの活動領域に於いても、必ず存在するらしい。スライムとか言う存在は、やはり神に最も近いモノなのかもしれない。


 我、神、スライムに見たり。


「では、エネメロの宿に戻り、食事でもするとしよう」

「じゃあ、ニーネさんまた来ます!」

「えぇ。お2人ともまた、お願いしますね」




 ニーネさんと別れ、宿の前まで戻って来た。


 う~ん……やっぱりこの見た目慣れないな。今にも自重で潰れそうだ。魔法で形を固定してるはずだから、そうそう崩れたりしないだろうと分かってはいる。んだけども、日本の感覚とか、そうそう抜けないし、慣れるしか無いんだけど、怖いもんは怖い。ほら、やっぱさ日本人としては、地震の恐怖が遺伝子レベルで刻み込まれてる見たいな感じなわけよ。


 結論。異世界の建物怖い。


「戻ったぞ」

「エネメロさん!ただいま戻りました!」

「あら~フィルネリア、僕おかえりなさい」


 僕って……俺には真菊一文字と言う剣士見たいな、刀の名前見たいな名前が有るんだぞ。


 …………あ、よく考えたらエネメロさんは自己紹介してくれたけど、俺は自己紹介してないや。でも、ちょっとエロいお姉さんから僕って言われるのは、非常に悪くないので僕で通そう。折角異世界に来たんだから、綺麗なお姉さんに素敵な意味で襲われねーかな。男子高校生の夢である。


 異世界転移も男子高校生の夢だったが、なんか俺のは思ってたのと違う。不思議パワーで素敵に無敵に、一般的な異世界常識ぐらい詰め込んどいて欲しかった。槍ばっかりやってて頭空っぽなので、大分夢詰め込めると思う。


 異世界語の自動翻訳は褒めてやってもいいぜ神様よ。コレ無かったら、スライムで詰んでたからな。なんで神様に向かって上から目線なんだ俺は。あ、神様居たらマジごめんなさい。だから、能力を奪ったり、幸運下げたりしないでください。お願いします。なんでもしますからぁ!後、ドラクソな称号要らないんですけどぉ!ドラゴニックサタニック要らないんですけどぉ!ドラァ!!!



「エネメロ。今日は少し豪勢に頼むぞ!」

「珍しい。金欠フィルネリアちゃんじゃないのね!」


 フィルネリアさん金欠なんだ。意外だな。


「おい!なんだそれは!初めて聞いたぞ!」

「だって、いつも豪勢に食べないじゃない?」

「いつも豪勢に食べていたら、お前のように肥えてしまうからな」

「肥えっ!?!?太ってないは!」


 大丈夫ですよ。二人共美人だし、可愛いですよ。


「なあ、お前はスレンダーな腰つきのが好きだろ」

「グラマラスなお姉さんのが好きよね」


 なんで二人共疑問形じゃ無くて、断定なの。貴女達の争いに俺巻き込むの止めてくんない。どっちを答えても詰みとか、和をもって貴しと為し、忤ふることを無きを宗とせよ。の、俺には無理なんだけど。太子信じてる。超信じてる。俺派閥とか、作らない派なんだよね。


「お2人とも素敵なので比べられないですよ!」


 おい。なんだその、うわ~見たいな目は。アンタらさっきまで言い合いしてたじゃん。実はめっちゃ仲良いじゃん。『めちゃモテイケてる俺特集』に書いてあったな。共通の敵を見つけた時の、団結速度は異状。


「あ、すみません。取り敢えず、フィルネリアさんの奢りらしいので、肉系を沢山持ってきてください」

「お、そうだったな!やっぱり冒険者は肉だよな!」

「分かったは。じゃあ、一番高い料理とお酒持ってくるはね!」

「お、おい。ちょっとは加減してくれよ!?」


 手加減はしないぜ。遠慮すると損をする。


 異世界で学んだ。異世界で日本人の謙虚は全く美徳にならないどころか、寧ろマイナスであると。


 早くチート顕現して、ピンチのお姫様を颯爽と救ったり、悪の奴隷商人から美少女奴隷を解放したり、お姉さん系のモンスターと、もごなもごにゃにゃんにゃりるん、したりしたいなぁ……


 チートって何処に生えてるんだろう。摘みに行こ。


「お肉沢山焼いてきたはよ!」


 おぉ!これが夢にまで見た骨付きマンガ肉!美味そう!


「いただきます!」

「いただきます?って何だ」

「呪文?」


 呪文じゃねーよ。日本人別に飯食う度に呪文唱えたりしねーよ。感謝の言葉で御座るにございますよ姉御。


「ウチの地方でのみ使われてる、食べ物を食べる前に言う言葉です」

「ほう。僧侶達がやってる祈り見たいなやつということだな」

「そうですね。そんな感じです」

「初めて聞いたは」


 そりゃあ、多分日本人なんてこの世界に、俺しか居ないでしょうしね。


 うぉ!?マンガ肉美味ぇ!このジューシーな肉汁。噛みごたえ、肉を喰いちぎる感覚、そしてなんといってもこの骨!肉のデカさもさることながら、大味で、肉食ってるって感じがドラ楽しい!流石異世界だぜ。


 美味い!美味いんだが、そろそろ大味過ぎて半分もいかないうちに飽きてきたし、肉汁多過ぎて脂っぽくて胃もたれしてきた。ヤバい気持ち悪い。後、骨意外と邪魔くさい。ハイパー食いずらい。


 異世界転移数日にして一番泣きたいのは、米が無いことだな。やっぱ主食はご飯だろ。


「お次は、『ジャバルゼン・ヴォイジャーのテリーヌ~アボルノデ添え』よ」


 そういやさっき、お肉沢山焼いてきたって言ってたな。二品目にして既に若干グロッキーなんだけど……つーか、ジャバルゼン・ヴォイジャーって何だよ。異世界の怖いところは何の肉だかさっぱり分からんところだな。アボルノデって何。


 ジャバルゼンは知らんし、アボルノデも分からないけど、ヴォイジャーって探索者とか、旅って意味だよな。何処旅してきたんだよこの肉。怖ぇよ。めっちゃ怖いんだけど。


 アボルノデ添えって訳わかんないモノ添えないで欲しいんだけど、添えないと毒化するとか、変質して食べれなくなるとかあんのかな。地球と生態系が違い過ぎて全然馴染めないんだけど。転移や転生した人間が帰りたい気持ちが食い物食う度に分かる。


 仕方なく食った後、フィルネリアさんから肉になった生き物の特徴を聞いて「オートプロミネンス三倍だ!」をしたので、これから異世界のモノを口にする時は、何も聞かずに食うと心に決めた。


 因みに、アボルノデはカマキリとアリとハチを混ぜ合わせたような、大型の鹿の背に自生してる苔の様なものらしいです。ジャバルゼン・ヴォイジャーについては思い出したくないので割愛。


 そうだよな。異世界の食い物が、地球式である必要全然無いもんな。それに魔法と言う全く違う進化を遂げた世界に、地球の常識持ち込んじゃいけないよな。分かってるんだ。分かってはいるけど、受け入れられるかは別。


 地球で輪廻転生において違う生物に転生する時、前世の記憶を保持させないのは善意なんだと理解した。



 最高に気分が悪いので、ステータスポイントで、スキル取得はまた明日。

異世界では地球の常識に囚われてはいけない。スライムもそう言っている。口ないけど。

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