初仕事
4話目全然話が進まないし、めっちゃ短い。
気を取り直して、荷物運びへと向かった俺は、割と普通に仕事をこなしていた。転移特典のとんでもパワーが有ると思いきや、普通に無かったので、普通に重かった。死ぬかと思った。
異世界に来ての死因が、戦闘じゃなくて、労働とかダサ過ぎて逆にウケる。何が逆なのかサッパリわからない辺りも、逆にドラウケる。後、俺の語彙力が割とドラゴニックゴミ。
マジックバッグとか、アイテムボックスとか、インフニットポーターとか、無いのかよ!あ、インベントリ!インベントリ!
…………しかし、なにもおこらなかった。
ちくしょう。どうなってやがんだ!
「おい、ボウズ!いつまで休んでんだ!そっち持てよー」
「チーッス親方ァ!」
「その変な喋り方止めろ!」
「はい」
やはり、自動翻訳と言えど、現代語は辛かった様だ。さもありなん。いとをかし。
うん。絶対通じないし、コイツ喋れないのか?って思われる気しかしないから、止めとこ。
俺だって、目の前の人間がいきなり「名をばさぬきのみやつことなむいひける」とか、言い出したら正気を疑うしね。寧ろ、正気を通り越して瘴気まであるまである。
一仕事終え、ギルドに戻ると、受付にニーネさんがいた。もしやと思い、ぐるっと見渡すと、フィルネリアさんも居た。やっぱりツンデレじゃないか!用事があるって言ってたのに、待っててくれるなんて!
「ふむ。待っていたぞ!マギク。どうだった」
「結構大変でした!」
「そうだろう、そうだろう!では、報告してくるといい」
「はい!フィルネリアさん!」
フィルネリアさんと、やり取りをした後、ニーネさんのカウンターへ向かった。やっぱ、フィルネリアさん美人だなぁ。
「ただいま戻りましたよ!」
「幾ら初仕事と言っても、街中の仕事なのに、貴方も、フィルネリアさんも大袈裟過ぎませんか?」
「あっ、なんかすみません」
「いえいえ、こちらこそやる気を削ぐようなこと言っちゃってごめんなさいね!」
「あ、大丈夫です」
相手が美人だと、全然口で勝てる気がしないぞぉ!だが、安心して欲しい。俺のコミュ力は数値にして大体48くらいだ。平均を50とした場合だけどな。って全然ダメじゃん!使えねー俺。
「では、スクロールをお願いします」
「はい。お願いします!」
スクロールってのは、巻物の事だ。魔刻印が、刻まれており、仕事の達成の有無を、依頼主に判別してもらい、魔力を込めてもらうことで、出来る依頼書みたいなもんだ。って、登録の時に説明された。ます。
ギルドの信用問題に関わってくるので、依頼主がわざと失敗を押したり、どちらも押さなかったり、と言うことは基本的に無いらしい。ギルドで、ちゃんと裏を取っているそうだ。
依頼主から、依頼金と別途で手数料を取って、冒険者からも手数料を取る、二重取りと言うシステムで成り立っている。確か、日本でも良く有る仲買人的なのだ、仲介手数料ってやつだな!高校生だから、不動産とか、良く知らんけど。
まあ、異世界なので、日本の考えで居たらとんでも無いことになりそうな事だけは、頭の片隅に置いておこう。
「では、こちらが報酬の25Gですね!ちゃんと確かめないと、痛い目見ますよ!」
ニーネさんがめっちゃニヤニヤしている。いつの時代も、金銭トラブルは絶えない上に、面倒なのだろう。しっかり釘を差された。気を付けないとな、日本で毎回釣り銭を最後の一枚までキッチリ数えた事とか、そんなに無いからな。
「はい。確かに25Gです!」
「では、先ず門番に払った10Gを返してもらおうじゃ無いか」
「フィルネリアさんありがとうございました!靴代には及ばなかったので、また靴代は後で返しますね!」
そう言って俺は、フィルネリアさんに10Gを手渡した。
「うむ。では確かに10G返してもらったぞ!お前が、約束を破るか、破らないか見ていたんだが、信用出来そうだな。初仕事のお祝いとして、そのブーツはくれてやる」
「えっ!いいんですか?」
「騎士に二言は無い」
「ありがとうございます!」
「大切に使えよ」
やだ、何この人!イケメン過ぎてキュン死しちゃいそう!俺がやるとクソキモイな。止めよう。自分で傷をつくって、自分で塞ぐとか、不毛過ぎる。
10Gの"G"は"ガムル"と読むらしい。なので、先程報酬は、25ガムルだ。かなり大雑把に、日本円に換算すると、1ガムル大体幾らぐらいなんだろうな。この世界の物価も流通も分かんないので、なんとも言い難い。
兎も角、俺はこれで食事代と、宿代を手に入れたのだった。漸く、今日を凌げる。異世界に来ての死因が、野垂れ死にも嫌だからな。本当に良かった。
「ところで、マギクよ。宿の宛はあるのか?」
「無いです。フィルネリアさん何処かいい所教えてくれませんか!」
「全く、世話のかかる奴だ!この私に任せておけ!」
うわーすごいなー尊敬しちゃうなー。出会って間もないけど、この人本当に人の世話を焼くの好きだな。もしかして、俺に一目惚れしちゃったとか!
この、弱肉強食の世界で、スライムに怯えてた奴に惚れる要素が皆無なんだよなぁ……俺の顔に惚れたは絶対に無い。雑踏に紛れたら、十秒と持たずに忘れ去られる顔立ちだ。なんなら、一日に五回ぐらいすれ違った気がすると、友人に言われるぐらい、平凡な顔立ちだ。
日に五回同じ人間と、すれ違うとかなんなの?運命感じちゃうの?目と目が合う瞬間、別人だと気付いて欲しい。好きだとは気付かなくて良いです。俺はホモじゃない。
そんなくだらない事を考えていると、フィルネリアさんが声をかけてきた。
「明日は一緒に、モンスターを倒しに行こうじゃないか!」
何この人、親切とかのレベルじゃねーな。暇なの、暇なのかぁ!若しくは、ボッt……いや、止めておこう。きっと凄く親切な人なんだ。
「そうですね!是非教えて下さい!」
「良いだろう、良いだろう!倒すのは初級のスライムでいいよな!」
「おまかせしますよ」
いきなり強いモンスターとか、お腹の中にお引越しする未来しか見えないしな。
「フィルネリアさんもしかして……」
ニーネさんが、フィルネリアさんに声をかけると、フィルネリアさんが途中で遮った。
「ニーネ。余計な事は言わなくていいんだ。私と、マギクを臨時パーティとして、登録してくれ」
「分かりましたよ!頑張ってくださいね、マギクさん!」
「えっ、あ、はい。まあ、頑張りますよ?」
なんとも微妙なニュアンスで言われたため、非常に挙動不審な返答になってしまった。
如何にも含みが有りそうなので、一抹の不安を抱えながらも、フィルネリアさん先導の元、宿へ向かうのだった。
次の話への繋って感じで、続きをすぐ上げます。