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これは転移!おい、女神出せ。

女神?そんな奴はいない。

 俺の名は真菊一文字。《まぎく いちもんじ》であり、決して《しん きくいちもんじ》 ではない。


 こんな名前だが、家は室町時代から続く剣の名家、では無く槍の名家である。


 かの剣豪『室町幕府第13代征夷大将軍足利義輝』に見初められ、召し上げられたという。


 と言うことで、小さい頃から爺様に槍を叩き込まれ育って来たわけなんだが……。


 俺の性格は全然厳格とかじゃない。趣味はマンガ、アニメ、ゲームで、好きな女の子は二次元だ。家が厳し過ぎて若干ダレたのである。でも、爺様が怖いから稽古だけはちゃんと出たしやった。


 中学の頃1度サボって、街中を本物の槍を持って追い回され、警察のお世話になった経緯は、今も胸に深く刻み込まれている。要するにトラウマってヤツだ。なんで、ウマトラじゃいけねーんだろうな。


 そんな真菊家の当主たる者、斯くあるべしと育てられた俺は、勿論長男だ。


 因みに高校2年生。なんで俺がこんな事を思い連ねているかと言うと、単に現実逃避がしたいからだ。




 何処だここ。




 俺さっきまで道場で爺様に扱かれてたじゃん。


 今は燦燦と降り注ぐ太陽と緑眩しい大森林だ。


 …………は?いや、ちょっと待て意味分からんし。


 落ち着け冷静になれ。俺はKOOLな男だ。そうだ俺はイケメンで、モテモテで、お金持ちで、性格の良い真菊一文字だ。まあ、二次元の中なら当然だよな?


 いやだって待ってくれよ。あそこにいる、ぶにぶにしてんのスライムだもん。絶対そうだもん。めちゃんこ動いてるもん。こっち向かってきてんもん。


 現実世界にスライムがいる訳ないんだから、ここは二次元Q.E.D.証明終了だ。いや、LEDだったかな。数学は苦手なんだよほっとけよ。LEDは電球だね、そうだね、プロテインだね。



 これはアレか!異世界転生か!いや、生まれ変わってねーから転移だな。


 でも、魔法陣に呑み込まれたりとか、目の前にお姫様とか、魔法使いっぽい集団とか、魔王っぽいのは居ない。トラックにも轢かれてないし、通り魔に刺されてもいない。


 普通に爺様と道場で稽古してただけである。因みに女神様が寿命を間違って殺したってことも無いと思われる。だって会ってないし女神。


 折角の異世界転移なのに、チートはどうしたチートは。良いからチート寄越せチート。はよはよ。マジあのスライムこっち来てるからお願いします!誰か誰でも良いからヘルプミー。


「はぁぁぁ!!!」


 気合一閃。鋼色の鈍き光を纏いし女が、目の前のスライムを切り裂く。スライムは哀れ霧散した。


「貴様何魔物相手に突っ立っているのだ!死にたいのか!」


 流れるような藍色の髪、キリッとした目元の痩身麗人。鋼色の鎧を纏った女剣士が助けてくれた。助かった。どうやら言葉は通じるようだし、聞き取れる。御礼を言わなきゃな。


「あ~済まない。助かったよありがとう」

「して、貴殿は何故スライムに怯えておったのだ」


 いや~そりゃ怖いでしょ。いきなり見知らぬ森で蠢く不定形の無脊椎動物に遭遇したらビビるでしょう。色が黒だったら絶対クトゥルフ神話の落し子だと思って諦めてたは。緑色で小さくて良かった。


「実は魔物を見るのが初めてでして……」

「何!?魔物を見たことが無いだと!そんな馬鹿なことが有り得るか!なら、貴様どうやってこんな森の深くまで来たというのだ!」


 しまったぁぁぁぁぁ!!!やっちまった。そうだ今森ん中だった。街の中ならお坊ちゃんかそこらで誤魔化せたものを、森の奥で魔物見たことありませんは完全に不審者だ。事実女剣士はこちらを先程より警戒している。


「えっとそのですね……」


 待て待て待て、異世界から転移してきました。とでも言うつもりか俺。確実に頭のおかしな狂人だと思われること請け合いだ。


「もしかして貴様何も覚えていないのか?」


 おし!都合良く記憶喪失と勘違いしてくれた!これで勝つる!


「いやぁ~それがそうなんですよ~気が付いたらこんな所に居ましてね、いやはや困ったもんですよ!すみませんが、街まで送ってもらえませんか。どうやら私は槍しか持っていないので、御礼は出来そうに無いのですが……出来れば街の方角だけでも!」


 どうだ!頼む!斬り捨てたり、見捨てたりしないでくれ!


「ふむ。そうか、確かに変な服を着ているが、魔物を倒しに来たにしては何も持っていなさ過ぎる。足下は素足だし。見たところそれは防具では無いようだしな。槍だけでは小回りが効きづらかろう」


 なんとか斬られずには済んだみたいだ。因みに槍は本物だ。爺様が『本物で無いと殺気は見極められぬ。』が口癖だったからな。何度死にかけた事か。大体現代で殺気を感じ取る必要ねーだろ。なんだ、なんか狙われてんのかコラ。今はそんなことはどうだっていい重要な事じゃない。話を戻そう。


「街までは送ってやろう。しかし何も持っていないと言うのなら身体で払ってもらおうかな」


 な、なにぃ!こここここれは!伝説のお姉さんイベとでも言うのか?御奉仕してしまうのかぁぁぁぁぁ!



 ところ変わり街の前まできた。

 いや、わかってた。分かってたよ。荷物持ちだって。知ってたし、全然落ち込んでねーし。マジ童貞の夢返せとか思ってねーしって言うか童貞じゃねーし、百戦錬磨だし。ゲームの中だけだけど。



 街の入口に門番がいる。どうやら入るのに金か、身分証が必要なんだろう。異世界系のセオリーだ。まあ、俺は案の定。いや、案の定は可笑しいな。当然無一文なんですがね。


 森で助けてもらった挙句、金を無心するのは心苦しい。俺ってばマジ武士道。


「1人10Gだ。もしくは、冒険者証を見せろ」


 ほらきた。


「すみません。森で何かに襲われたみたいで、槍と服しか残って無かったんです」

「それじゃぁ、街には入れられねぇなぁ」

「良い。私が10G出そう。後で返せよ」

「ありがとうございます」


 こうして俺はどうにか街の中に入る事が出来た。とりあえず今の所チートは確認出来てないが、ピンチの所を優しい美人の女剣士に救ってもらうという、チートに等しい、ご都合主義と言っていいであろう出来事が起こったので一先ず、これをチートとしておく。


 チート『ご都合主義』うん。多分俺が考えうる中で最強である。正しく神の力だ。髪の力では無い。ふさふさだしね!


 そう言えばステータス確認て出来るのかな。後でしてみよう。

出会ったのは藍色の髪の戦乙女でした。

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