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その上司、俺様につき!  作者: 皇ハレルヤ
午前9時の社長室
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第10話

「君は俺のことをどう思っているんだ?」

「な、何を言ってるんですか!? こ、こんなところで答えられるわけがないでしょう!?」

一体何を聞かれるのかと心づもりをしていたけれど、あまりにも場違いな質問をされたので、思わず大きな声を上げてしまう。

「その質問はややイエローカードだと思うが?」

顔を真っ赤にして抗議する私の隣で、冷静に社長が告げる。

ステレオ放送よろしく、2方向からぎゃあぎゃあ騒がれるのに嫌気が指したのか、久喜さんはわかりやすくうんざりした顔になった。

「いいか。君が答えない限り、俺からは何も言えない。そういう決まりなんだ」

真剣な眼差しで私に語りかける彼をよそに、社長はあくまでもマイペースだ。

「……その説明もイエローカードだな」

久喜さんはそんな彼を、無言でギッと睨みつけている。

「これがサッカーなら”退場”と言いたいところだが、私だって鬼じゃない。遠藤君の口から彼女の気持ちさえ聞ければ、あとは君達の好きにすればいい」

彼の提案を受け、まだ納得のいかない顔をしているものの、久喜さんもしぶしぶ頷く。

「……と、言うわけだ。さあ、言いたまえ」

「いや、何が『と、言うわけ』なんですか!? 全然意味わかんないんですけど!」

でも至近距離で2人に見つめられると、蛇睨まれた蛙状態だ。

(2時間サスペンスやアニメで、わかりやすく自白を強要される犯人って、こんな気分なのかも……)

私は内心冷や汗タラタラになりながら、聞こえるか聞こえないかのか細い声で答えた。

「す、好きですが……?」

ポロッと言葉をこぼした途端、

「よし……!」

久喜さんはガッツポーズをして私を抱き寄せ、

「……うん、まぁ遠藤君が幸せならそれでいいか」

と、社長はのんびりあご髭を撫でた。

このまま久喜さんの胸に抱かれていていいものなのか。

仕事もせずに社長室でサボっていてもいいものなのか。

けれど私の上司と会社の社長が、今まさにニコニコしながら私を見つめているわけで……。

ひとまず、私は抵抗を止め、疲れ切った心身を大好きな彼に預けたのだった。

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