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その上司、俺様につき!  作者: 皇ハレルヤ
とにかく出会いは最低最悪
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第08話

(スマホのソーシャルゲームに熱中してこの間1万円も課金しちゃったこと、ごめんなさい。ダイエットするって決意して、いつもすぐに挫折してごめんなさい。総務部に異動になってから人の悪口が増えちゃって、本当にすみません!)

私は思いつく限りの最近の悪行を謝罪した。

(これからは悔い改めて真っ当に生きます! 無駄遣いしないように貯金も始めるし、ダイエットも日記つけるし、人様の悪口は口が裂けても言いません! さっき私を轢きそうになったイケメン野郎の罪も、仏の心で許します!)

そしてどのように改善するかを述べ……

(だから今一度、私にご慈悲を! 会社に間に合うように何とかしてください!)

最後にこちらの要望を明確に伝える。営業部に配属された当初、勉強のために書店に平置きされているビジネス書や、売上ランキング上位の自己啓発本を手当たり次第に読みまくった。

そうして「うまくいくセオリー」「意見を主張する大切さ」を頭に叩き込んだ私は、ここぞという勝負になると、どうしてもビジネス書のアドバイス通り振る舞ってしまうのだ。

(これも職業病ってやつなのかな……?)

車道側の信号が点滅し始めた。アスリートばりの馬力で走れば、あと3分くらいで会社に着くかもしれない。

トートバッグを肩にぐっと固定すると、私はクラウチングスタートさながら前傾姿勢をとった。

(位置について……)

見上げた信号が、パッと青に変わる。

(……よーい、スタート!)

そうして脇目もふらず走り出そうとした時、私は横断歩道の向こうで私に大きく手を振るスーツ姿の男性に気づいた。

「……?」

こんな時間、こんな場所に同じ会社の人がいるわけなどない。

でも、あれは―――。

「飯田くん?」

その姿は、まさかいるわけがないと思っていた同期、飯田圭吾いいだけいごだった。

(なんでこんなところに飯田君が? 会社はどうしたんだろう……)

最初は見間違いかと思ったけれど、近づけば近づくほど彼が飯田君本人だと確信する。

営業だから許される派手なネクタイに、細身のスリーピーススーツ。

いつも上司に「もっと短くしろ」と注意されるこだわりの長い前髪が、彼の動作に合わせて軽やかに揺れていた。

パッと見遊んでいそうな雰囲気で、スキンシップも激しいことからチャラい印象が強い。

でも、私の異動が決まった時は、誰よりも心配して落ち込む私を励ましてくれた。

総務部に移ってからも、折に触れて状況を聞いてくれたり、飲みに誘って愚痴を聞いてくれたり……。

今回、会社が新体制になる件でも彼にはお世話になった。

3月中旬になってからも何の辞令も下りなかっため、今回もダメなのかとヘコんでいたら、

「4月1日付で新たに配属される凄腕の役員が、4月5月中に全社員と面談して、配置の見直しをするって聞いたから、心配すんなよ!」

と、一部の人間しか知らない情報を仕入れて、真っ先に私に教えてくれたのだ。

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