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その上司、俺様につき!  作者: 皇ハレルヤ
泥酔の夜の星
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第11話

「さ、そろそろ帰るか! 終電も近いし!」

乗れ、と言わんばかりに飯田君が目の前で屈む。

ここで先ほどの告白をほじくり返すことは、彼からのエールを踏みにじる行為と同じだ。

さっぱりとした表情を浮かべている飯田君の気持ちに、水を差すような余計なことはしたくない。

私は申し訳ない気持ちと、心苦しい気持ちと。

簡単には言い表せない複雑な気持ちを抱えていたが、それを彼に悟られないよう、グッとお腹の底に飲み込んだ。

そして、飯田君の肩に手をかける。

「いいの?」

何度も言わせるな、と目で合図された。

「じゃあ……お邪魔します」

「ぐっ!」

足元がふらつくため、どうしても勢いがついてしまう。

ただでさえ、成人男性に成人女性が長時間覆いかぶさるのは無理がある。

お互い酔っていればなおさらだ。

「ごめん……」

よろよろと立ち上がった彼の首筋は、力の入れすぎで真っ赤に染まっていた。

急な坂道が続く中、私を背負って歩くのはかなりハードな運動に違いない。

それでも飯田君は汗を流しながら、一歩一歩足を前に踏み出してくれる。

(どうして……)

「あのさ……」

「んん?」

私の呼びかけに返事をする飯田君は、至っていつもの調子だ。

なんだか無性に泣きたくなった。

私が彼の恋心に気づかずにいた間、今の私の同じような感情を、飯田くんも味わっていたのだろうか?

「……いろいろ、ありがとう」

首に回した腕に、力を込める。

細いとは言え、やっぱり飯田くんの背中は、男らしい男性の背中だった。

(どうして、この人のこと、好きになれなかったのかな……)

ややあって、飯田君が答える。

「……いいよ、気にすんな」

彼の背中から見上げた夜空には、まだ北極星がキラキラと輝いていた。

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