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その上司、俺様につき!  作者: 皇ハレルヤ
泥酔の夜の星
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第07話

興奮気味に帰ってきた飯田君の腕には、緑茶のペットボトルが2本と缶コーヒーが2本抱えられている。

「どうしたの、それ? そんなに買っちゃったの?」

そこまで喉が乾いていたのかと驚きながら尋ねると、得意げに彼は否定した。

「バカ、違うよ。当たりが出たんだよ!」

「……2本も?」

「2本もー!」

飯田君は子どものようにはしゃいでいる。

「2本連続とかすごいじゃん! でも、なんで同じ種類?」

素朴な疑問をぶつけると、

「いや、急に当たりって言われてもさ~。ビビって適当にボタン押しちゃったんだよね……」

照れ臭そうに「へへへ」と彼は笑った。

「二回も?」

「……二回も」

情けない表情で飯田君が答える。

「もー! もったいない!」

「ハハ! こんなこと、たぶんもう二度と起きないのにな。あ~、失敗したわ~!」

残念そうに言うと、飯田君は先ほどと同じ場所に腰を下ろした。

「お金払うよ。いくらだった?」

バッグから財布を出して尋ねる。

「―――いいよ、おごる」

「ええ?」

「焼き鳥代、おごってもらったし」

完全に記憶にはなかったが、飲み代はしっかり自分が支払ったと聞いて、ホッと胸を撫で下ろす。

「そっか、良かった……」

(いや、良くないけど!)

自分で自分のコメントにツッコミを入れてしまったが、飯田君が穏やかに微笑んでいたので、それ以上は何も言わなかった。

静かな沈黙が訪れる。

私も彼も黙ったまま、お互いの気配を肌で感じていた。

私はペットボトルの蓋を開け、ほろ苦い緑茶をゴクゴクと飲み下す。

冷たい液体が心地よく喉を潤し、爽やかな香りが鼻に抜けた。

(……ちょっと落ち着いたかも)

ベンチに寄り添うように植えられた大きな桜の木。

今年の春は例年よりも暖かかったせいか、まだ4月下旬だというのに、もうたくさんの瑞々しい新緑が芽吹いている。

「……ねぇ」

ふと、心にとある謎が浮かんだ。

「何?」

ストレートに質問をぶつけても大丈夫なのか躊躇ったが、想像していたよりも飯田君の返事が軽い調子だったので、思い切って聞いてみることにした。

「―――どうしてここまで、私の面倒を見てくれるの?」

「どうして……ってそりゃ、お前……」

両手を頭の後ろで組んで、まっすぐに夜空を見つめたまま彼が答える。

「罪滅ぼし的な?」

言い終わると私の顔を見て、飯田君はニカッと笑った。

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