表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その上司、俺様につき!  作者: 皇ハレルヤ
泥酔の夜の星
70/98

第06話

「あー、こりゃ明日絶対筋肉痛になるわ」

「……このご恩は必ず」

「何? 倍にして返してくれるって?」

少しでも首を動かすだけで頭痛がするため、私は頷く代わりに両腕で大きな丸を作った。

「楽しみにしてるわ」

クックッと喉の奥で飯田君が笑う。

(本当に、なんていい人なんだろう……)

その笑顔を見ながら、私は後日改めて、本当にきちんとお礼をしなければと心に誓った。

「そうだ。なぁ、何か飲まない?」

公園の入り口近くにある自販機を彼が指差し、提案してくれる。

これ以上厚意に甘えるのも……なんて遠慮は今更だった。

「お茶が飲みたいです……」

「はいよー」

飯田君は軽い調子でそう言うと、財布を手に軽快な足取りで自販機に向かった。

「はあ……」

自分でも、今、自分がお酒臭いのがわかる。

(異動の話を聞いた時だって、こんなに酔った覚えはないのに)

視線を膝に落とすと、ストッキングには電線が走り、うっすらだが血が滲んでいた。

(バチが当たったんだわ……)

遅ればせながら、本日の行動を1つ1つ省みる。

でも自分自身の反省よりも先に、やっぱり彼のことが心に浮かんでしまう。

(久喜さんは一体どうして、私のことを抱きしめたんだろう……)

プライベートであんなに強く抱擁されたら、それこそ好意の証と考えて間違いないだろうが、いかんせん現場は会社だった。

(業務時間外とはいえ、まだ退社していない状態であんなこと……普通にするものかな?)

足をブラブラさせ、なかなか戻ってこない飯田君を目で探すと、何やら自販機の前で苦戦している様子だった。

何かトラブルが起きているのだろうか。

「大丈夫ー!?」

時間が時間なので控えめに、でも聞こえるように呼びかけると、先ほど私が彼に示したように両腕で大きな丸を作った。

「……もう」

思わずプッと吹き出してしまう。

(今日は飯田君が付き合ってくれて、本当に良かった……)

結果的に多大な迷惑をかけてしまっているが、あのまま何もせずに帰宅していたら、今頃思考の無限ループにはまって抜け出せなかったはずだ。

考えても考えても、答えの出ない疑問ばかりが山積みになっている。

謎を解く鍵は、たった1人の人物が握っていた。

それが誰なのかは明確にわかりきっているのに、本人に聞けないこのジレンマ。

「はあ……」

大きくため息を吐き出していると、こちらに近づく足音が聞こえてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ