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その上司、俺様につき!  作者: 皇ハレルヤ
泥酔の夜の星
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第02話

「っていうか、そんなに飲んで大丈夫かよ? 明日も仕事だろ。今日はまだ水曜日だぞ?」

「ずい、よう、び……」

しかもこの天使は、私の心の傷はもちろん、体調まで気遣ってくださる。

なんてありがたいのだろう。

「そうだよ。まだ木曜日と金曜日が残ってんだから。ヤケ酒もそのへんで止めとけって!」

次のお酒は何にしようかと、握りしめていたメニュー表を奪われる。

「あっ!」

「『あっ!』じゃないっつーの!」

ぐでんぐでんに酔っ払った私を見て、飯田君がブフッと吹き出した。

「アルコールは、一時的な現実逃避にしかならないんだしさ!」

「……それは、わがっでる」

お酒に溺れたところで、得られるのは刹那的な快楽だけだ。

家に帰ればお風呂に入って明日の支度をして、陽が昇ればまた会社に出勤しなければならない。

「会社……行きだぐないよお……」

私は再びテーブルに額を押しつけると、ヒックヒックと嗚咽を漏らした。

「何があったかは知らないけどさ……」

ふと、頭に暖かい温度を感じる。

「そんなに心配しなくても大丈夫だって!」

その暖かさは程よいスピードで、私の頭を上下している。

(頭を撫でられたのって、成人してからは初めての経験かも……)

状況を察するに、突っ伏したまま動かない私の髪を、飯田君が撫でてくれているようだった。

「何の……根拠があっで、そんなごど言うのよ……」

自分でも駄々をこねていると自覚していたが、アルコールに浸かってしまった理性は、感情のストッパー職務を完全に放棄していた。

優しくされればされるほど、わがままを言いたくなってしまう。

「大丈夫……とが、簡単に言わないで」

面白いくらいに、思ったことがそのままポンポンと口から飛び出す。

「遠藤?」

「……全然、大丈夫じゃねぇっづーの」

うつらうつらと眠気まで襲ってきた。

ここで寝てしまうわけにはいかないのに、今意識を手放せばさぞかし気持ちがいいんだろうな、という誘惑に勝てそうにない。

「お前さ、すんごい頑張り屋じゃん」

「……ぞう?」

もはや飯田君の呼び掛けになんとか返事をすることで、意識をギリギリ保っている状態だった。

飴色をしたカウンターテーブルの木目を至近距離で見ていると、さらに酔いがまわる。

話しかけられている内容は一応理解しているが、認識した直後に次々忘れてしまう。

記憶する機能がまるで働いていなかった。

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