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その上司、俺様につき!  作者: 皇ハレルヤ
仕事に生きると決めたのに
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第02話

まことしやかに囁かれている噂では、久喜さんは今年で32歳になるらしい。

彼が新卒の22歳でアスタルテに入社していたとしても、まだ10年目。

その勤続年数で1つの部署を任されて社長とも直接話ができるなんて、社員の平均年齢が高い我が社では異例中の異例だ。

一般的に、男性社会では抜きん出て出世すると、叩かれたり足を引っ張られたりすることも多いのに、久喜さんにはそういうやっかみが一切ないことも不思議だった。

息をするように建前と本音を使い分ける、食えない営業部の元上司達でさえ、彼にはかなりの敬意を払っている。

(それだけ、純粋に能力を認めているってことなのかも?)

一番近くで仕事をしている私ですら、久喜さんが何者なのか、未だにつかめていない。

(自宅の住所と部屋のインテリアは知ってるけど……)

目を閉じれば、まだはっきりと思い出せる。

部屋の雰囲気も、温度も、匂いでさえも。

(あんな時間、もう二度と経験できないんだろうな……)

幸福な過去の記憶に浸ってしまいそうになり、ハッと自分を現実に引き戻す。

(ようやくまともに働けるようになったのに、ここで思い出に浸ってちゃ、今までの頑張りが台無しだわ!)

ここ最近は仕事のこと以外、極力何も考えないように努めている。

相変わらず久喜さんは1日に何度か私を凝視してくるけど、それは彼独特の治らない癖なのだと思い、特別な意味などありはしないと自分に言い聞かせていた。

「ふう……」

午後の面談が始まるまで、あと15分ある。

空腹のまま挑んでもよかったが、せっかくだし軽食でも摂ろうと、財布を手に立ち上がった。

「―――っ!」

突然ガバッと立ち上がったせいか、久喜さんを驚かせてしまったようだ。

「ん、んんっ」

気まずそうに咳払いをしている。

「あ……すみません。これから、ちょっと下のカフェに行ってきます」

一瞬しっかり目が合ったが、すぐに私は目を伏せて彼から視線を逸らした。

「……今からカフェに?」

「はい。次の面談の5分前には必ず戻りますので」

椅子にかけていたカーディガンを羽織りながら、久喜さんに最低限の用件のみを告げる。

「わかった」

「……行ってきます」

何でもない振りをしているけど、本当は誰よりも彼を気にしていた。

久喜さんが視界にいる時はもちろん、いない時でさえも。

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