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その上司、俺様につき!  作者: 皇ハレルヤ
名前のつけられない感情
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第09話

まだ半ば呆然とした心境で部屋を退出する。

そしてエレベーターに乗り込みながら、つい先ほど起きたばかりの事件を、1つ1つ順番に脳内でたどっていった。

(シュレッダーしながら考え事をしてたら、いきなり至近距離で『では今から食事に行こう。帰り支度をしたまえ』なんて誘われて……)

私はこれから、本当に彼と食事に向かうのだろうか?

あれはすべて私の妄想だったのではないだろうか?

現実離れした急展開に、まるで夢を見ていたような気分になる。

(高級焼肉店で割り勘……とかじゃないよね?)

ふとお金のことを考えた瞬間、急に現実味が増してきた。

(そ、そういえば! 今お財布にいくら入ってたっけ!?)

きちんと支払えなかったらどうしようと、バッグの中から財布を探す。

エレベーターに同乗している人にバレないよう、バッグから財布を出さずにこっそり中を確認した。

中には、1万円が2枚とわずかな小銭しか入っていない。

1階にあるATMは、生憎私のキャッシュカードには対応していない。

いざとなったらクレジットカードで支払うしかなかった。

カードが使えないお店など万が一の時には、久喜さんから預かったままになっている3万円を使おうと心に決め、私はいよいよ1階についてしまったエレベーターから降りる。

(いつか返そうと思って、いつも持ち歩いていてよかった……!)

ロビーの時計は、午後7時35分を指している。

大きな窓ガラスの向こうは、すでに夜の帳が訪れていたが、社内はまだまだ活気づいている時間帯だった。

(受付の人に退勤の挨拶をするなんて、久しぶりかも)

受付の勤務時間は交代制で午後8時までになっている。

にこやかに会釈をしてくれる受付嬢に「お疲れ様です」と返すと、私は正面玄関近くのカフェスペースで、久喜さんがやってくるのを待つことにした。

カフェの営業時間は終わっていたが、テーブルやソファはいつでも誰でも使える仕様なのがありがたい。

「はあ……」

1人掛けの柔らかなソファに身を委ねる。

(最近残業が当たり前になってたから、こんな時間に外に出られるだけでも嬉しい!)

仕事自体は嫌いではない。嫌いではないが書類に埋め尽くされた部屋で、仕事の会話しか交わさない上司と朝から晩まで2人きりというのは、やはりどこか息がつまる。

(まぁ……その上司とこれからサシで食事なわけだけど……)

どんなお店に連れて行かれるのだろうかとぼんやり想像して、自分の今の格好を改めて点検した。

ベージュのスプリングコートの下には、白い薄手のセーターとデニムのスカート。

足元はグレージュのバレエシューズだ。

キャメルの革のハンドバッグは、奮発して買ったブランド品だが、バッグだけ高級でも他がこれではお話にならない。

(デニムの時点で高級店はアウトだわ……)

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