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その上司、俺様につき!  作者: 皇ハレルヤ
名前のつけられない感情
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第05話

彼女が動くたびに、髪がふわふわと揺れる。

私は知らず識らずのうちに、その動きを目で追ってしまった。

(どこの部署の人だろう……)

気にはなったけれど、いきなり尋ねることは躊躇われる。

「あの、遠藤遙さん……ですよね?」

彼女とは、きっとこの場の簡単なやり取りだけで終わるものだと思っていたら、向こうから名指しで声を掛けられた。

(……そっか。私ってば、社内では意外に有名人なんだったっけ)

「あ、はい。遠藤ですが」

何にせよ、どうせ久喜さんがらみの質問だろうと、作り笑いで対応する。

「私、秘書部の桜井奈津子です。本日はよろしくお願いいたします」

急に自己紹介をされて戸惑ってしまったけれど、名前を聞いてようやくピンときた。

彼女は、この後人事マネージメント推進事業部にて面談する予定の社員だ。

「あ、こちらこそ! よろしくお願いいたします!」

特に私が何をするわけでもないのに、つい勢いよく答えてしまった。

「もうすぐ面談だって思うと緊張してしまって……お手洗いで一息吐こうかなって、ちょっと早めに来たんです」

面談の開始時間まであと15分近くある。

確かに遅刻厳禁とはいえども、会議室を訪ねるには早すぎる時間だった。

「そうなんですか。でもおそらく、そんなに緊張なさらなくても大丈夫だと思いますよ?」

ついさっき、まとめたばかりの彼女の面談資料を思い出す。

有名四年制大学を首席で卒業し、語学のスキルも資格も十分。

勤務態度も極めて真面目で、非の打ち所は探したって見当たらないと、直属の上司のお墨付きだった。

「……なら良いんですが」

自信なさげに微笑む桜井さんを見ていると、さぞかしモテるんだろうなと純粋に感心してしまう。

(私は大概、お前は1人でも生きていけるとか、もっと女らしい子がいいんだとか、そういう理由で振られるクチだからな……)

桜井さんは、まさに才色兼備を体現している人だ。

きっとお菓子作りなんかが趣味で、料理も玄人はだしの腕前なんだろう。

(毎日コンビニでお昼を済ませている私とは、大違いだわ)

気分転換のためだけにお手洗いにやってきてしまったため、個室に入ったところで別に何もすることはない。

私は洗面所で手を洗い、適当に髪を整えることにした。

(面談前にいろいろ話をするのは良くないだろうし……)

彼女もそのあたりはきちんとわきまえているのか、それ以上私に声をかけてくることはなかった。

(それにしても)

隣で同じく髪やメイクを直している桜井さんを見ていると、本当に同じ女性なのかと自分を疑いたくなってしまう。

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