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その上司、俺様につき!  作者: 皇ハレルヤ
元同僚の複雑な心中
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第01話

朝からメガトン級の面談を終え、昼の一時休憩を入れて午後からも面談をこなす。

ひと通り終わった後、久喜さんは面談の結果をまとめ、私は今朝頼まれたファイルの整理を開始した。

時刻はすでに午後9時を回っている。

(ドッと疲れた……)

一発目に、最高潮までヒートアップした面談を経験したおかげか、あとの8名は知った顔であることが気まずかっただけで、無事にソツなく同席することができたと思う。

(まさか飯田君が、ずっと総務部に行きたいと思っていただなんて……)

本日何度目になるのかわからないため息を吐き、ファイルに見出しラベルを貼っていく。

いろいろと考え事をするには、機械的な作業のほうが助かった。

そして、手だけは休まずに動かしながら、私はちらちらと控えめに久喜さんに視線を送る。

「本当に飯田君を異動させるんですか?」

……聞きたい気持ちは山ほどあるが、さすがに聞けない。

(変わり者のこの人のことだから、案外聞いたらすぐ、さらっと答えてくれるのかもしれないけど)

何を考えているのか、想像すらさせてくれない無表情な横顔。

このまま見つめているだけでは、何も進展しない。

でも、直接聞くのはどうしても躊躇われた。

(それに、飯田君がこれからがどうなるか聞いたところで、私一体はどうしようって言うのよ)

自分の心に広がるモヤモヤした気持ちを、どう処理していいのかわからない。

私は手元に視線を落とすと、黙々と作業に没頭した。

ファイルは分厚いが、整理作業自体は単純だ。

一旦すべての書類を取り出し、並び替えて、まとめて、以降探しやすいように見出しをつければいい。

(誰にでもできる、簡単なお仕事です!)

心の中で茶化しながら、次々にファイルを片づけていく。

誰にでもできる、だからこそ―――。

(私じゃなくてもいいじゃないって思うはずよね、普通は)

でも、飯田君は違う。

誰にでもできる仕事ばかり扱う部署を、自ら希望している。

……これまで何度、私は彼に総務部の愚痴をぶつけてきたことだろう。

それを、飯田君はどんな気持ちで聞いていたのだろうか?

(そうか……このモヤモヤは罪悪感なんだ……)

持て余していた感情の正体がわかって、少しだけ気持ちが楽になった。

でも、はっきりと罪悪感を自覚したことで、ほんのわずか浮上したテンションもすぐさま急降下する。

飯田君が希望する部署を、散々バカにしたこと。

あなたは営業部でバリバリ活躍できてうらやましいと、見当違いの嫉妬をしたこと。

「本当に営業に向いていると思う」と彼の資質を褒めちぎったこと……。

(今更、過去のことは取り消せないけど……)

昔の自分を振り返ると、自責の念にかられるばかりだ。

かと言って、私が彼に謝るのも何だかおかしな気がする。

(どうしたもんかな)

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