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その上司、俺様につき!  作者: 皇ハレルヤ
仕事ができる男(ただし、性格に難あり!)
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第03話

早くも、この日二度目のモヤモヤが胸に広がったが、ここで感情的になっては、せっかくのいい流れが台無しだ。

久喜さんのデスクからは死角になる位置で、左手の甲を思いっきりつねって、ぐっと堪えた。

そしてこの一週間、一番言いたかったことを彼に伝える。

「私、そんなに馬鹿じゃありません。指示されたことは、指示された通りにきちんとこなします」

せっかく、晴れて総務部から解放されたばかりだというのに、上司にこんなことを意見したら、また流刑に処されてしまうだろうか?

(嫌われているのは百も承知だし。これ以上嫌われる要素がないくらいなんだから、少しくらい怒鳴られたって平気よ!)

怯みそうになる心を叱咤するけれど、正直、心臓は激しく脈打っている。

緊張で今にも手が震え出しそうだ。

(かけるだけの恥はもうかいたし、また流刑されたって何とかなるわ……)

ふう、と軽く深呼吸をし、私は久喜さんの目をまっすぐ見つめた。

「昔から、仕事がなくて困るよりは、ありすぎて困る方が性に合ってるんです。あなたも、私がこういう性分なのを見越して、補佐役に指名したんですよね……?」

2人しかいないフロアに静寂が広がる。

やたら日当たりがいい窓から、燦々と陽の光が降り注いでいる。

その陽の光に照らされて、久喜さんの髪が艶やかなきらめきを放っていた。

(芸能人とかとは、また違う魅力なんだよなぁ……)

自分の置かれている状況も忘れ、ほうっと見惚れてしまう。

私はまだ彼の端麗な容姿に戸惑いを隠せない。

「君は……」

私に話しかけるというよりは、自らに言い聞かせるような素振りで、久喜さんが意味不明の言葉を紡ぐ。

「……そうだな、君はそういう人だな」

「……っ!」

我ながら、不躾に上司に意見したものだと思う。

普通、上司に向かってこんな要求を出す部下なんて、そういないはずだ。

怒鳴られても、謝罪を要求されても、最悪クビになったとしても、しょうがないと覚悟して発言した。

それなのに―――。

(久喜さんのこんな表情、初めて見る……)

見ているこちらもつられて微笑んでしまいそうな、優しく穏やかな笑み。

今までは、睨まれるか見据えられるか、どちらかしかなかった瞳が、緩やかな弧を描いていた。

「あ、あの……」

さっきとは違う意味で、心蔵がうるさい。

期せずしてしどろもどろになる私を見て、フッとおかしそうに久喜さんが笑う。

「わかった。では今日から本格的に君に私の補佐をしてもらう」

そして、はっきりと力強い言葉で、私がほしかった言葉をくれた。

「は、はい!」

しかし彼は、やった!と弾かれるように勢いよく返事をした私に、

「では、これから行う面談に立ち会いたまえ」

「は、はい?」

思いも寄らない指示を与えたのだった……。

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