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その上司、俺様につき!  作者: 皇ハレルヤ
仕事ができる男(ただし、性格に難あり!)
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第01話

久喜善人―――久喜さんの補佐に配属されてから一週間。

“人事マネージメント事業推進部”。

これが、これから私が勤務する部署の名称だった。

「人事部と言えば人事部だが、業務が一時的であり非常に特殊なため」という社長の判断で、何とも不思議な名前がつけられている。

確かに業務は一時的なものだし、かなり特殊だと思う。

目下進行中の業務は、社長以外の役員から入社したての新人までを対象に開催されている、再配置の面談だ。

面談は基本的に久喜さんと該当社員、1対1で行われている。

社員が久喜さんに何を打ち明けても、面談内容に関しては一切漏らさないことが徹底されていて、補佐役の私ですら、彼のコメントが書き込まれた後の書類は触らせてもらえない。

怒涛の面談が始まってからというもの、久喜さんは日付が変わるまで毎日残業していた。

面談した人物が今の配属先にマッチしているのかどうか、細かいところまで1つ1つ確認し、次の配属先を検討・提案した資料をまとめる。

私の主な仕事は面談スケジュールの調整と、面談用の書類作成。

社員の個人情報が多大に含まれるため、扱いはかなり慎重に行わなければならない。

とはいえ、ある程度人事部から出来上がった書類が届けられるため、実質、私はデータの確認とスケジュール調整しかしていない状況だ。

(……久喜さん、少し痩せた気がする)

書類にひたすら目を通している久喜さんの横顔を盗み見た。

もともとほっそりとした体型だったけれど、頬のあたりが少し削げたんじゃないだろうか。

部屋の中央にポツンと置かれた2つのデスクで、私と久喜さんは日々業務にあたっていた。

最初は2人で使うには広すぎるフロアだと思ったけれど、次々に運び込まれた本棚で部屋の壁面はすぐに埋まってしまった。

本棚のスペースも、今や多くのファイルで飽和状態になっている。

用意されたデスクも本棚も、有り合わせや別の部の使い古しではなく、きちんと前もって準備された新品ばかりで。

(それだけ、会社が久喜さんに期待してるってことよね……)

久喜さんは、私が今までに出会ったどの男性よりも、仕事ができる人だと思う。

大学時代にバイトしていた居酒屋の本部スタッフも、アスタルテで接してきた男性達も、どこか頼りなさや不信感を覚える人が多かった。

でも久喜さんからは一切、そんなネガティブを感じない。

この人に任せておけば大丈夫だ、という安心感しかない。

でも―――。

(私だけ定時に帰るの、いい加減ストレスなんだけど……)

さすがにこの生活が二週間目に入ると、はっきりと久喜さんの顔色に疲れが滲んできているのが見て取れた。

私だってかつては営業部で表彰された“10年に一度の逸材”だ。

もっと他にも手伝えることが、きっとあるだろう。

「……よし!」

拳を握って控えめに気合を入れると、私は今日の面談資料を手に、久喜さんのデスクに向かった。

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