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その上司、俺様につき!  作者: 皇ハレルヤ
とにかく出会いは最低最悪
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第12話

ポーンとエレベーターの扉の閉まる音が、私しか人がいない孤独な廊下に虚しく響く。

(わ、私のせいで……私の遅刻のせいで、全社員がスケジュールを狂わされている……)

『あ、社長も含め、お前待ち!』

ついさっき耳にしたおそろしいフレーズが、頭の中でグワングワンこだまする。

社長挨拶があるから何があっても遅刻だけはするなと、耳にタコができるほど聞かされた大事な日に……。

新たに配属される凄腕の役員に、ここぞと能力をアピールせねばと、決意に燃えていた大切なスタートの日に……。

そしてその人に、内容はともあれ、面談第1号として名誉ある抜擢を受けた、その重要な日に……!

あのクソ残念なイケメン野郎のせいで、私の今後のキャリアプランが、これからの人生計画が、栄えある未来が、全部パアになってしまったではないか!

(も、燃え尽きたぜ……真っ白にな……)

「K・O!」とレフェリーが試合終了を告げる声が聞こえた。

これは幻聴でしょうか、神様?

全社員を待たせているという、今までにないプレッシャー。

焦りと緊張からくる震えのせいで、制服のブラウスのボタンが中々とめられなかった。

でもなんとか急いで支度を済ませ、9時20分ジャストに私は会議室Hのドアの前に立つことができた。

朝からの出来事を全て鑑みれば、個人的には普及点をいただきたい気持ちでいっぱいだけれど、遅刻は遅刻。

私は言い訳ができる立場にない。

(凄腕役員か……女性だといいな……)

女性ならまだ、うがった見方をせずにフェアに判断を下してくれそうだ。

ふう、と大きく深呼吸をしてから、意を決して扉をノックする。

「……どうぞ」

(あー……やっぱり男の人か……)

そうだろうとは大方予測していたけれど、落胆は隠せない。

がっかりした気持ちで、私は俯きドアを開いた。

「失礼しまーす……」

目線を下に向けたまま部屋に入り、静かにノブから手を離す。

ドアの真横に置かれたもの言わぬ観葉植物を見て、私も植物に生まれていたらどれだけ楽だったろうかと、プチ現実逃避をしてしまった。

会議室Hは部内の打ち合わせで使われることが多く、部屋の中央に大きな丸テーブルが設置してある。

設備は他に、ホワイトボードとプロジェクター、スクリーン程度。

広さにして約14㎡。最大収容人数は6人。

以下、会議室Kまで同様の造りになっている。

(こんなところで面談だなんて……)

通常は会議室CからGまでの大きめの部屋で、ガランとした空気の中行われるものなのに。

嫌々歩みを前に進め、ゆっくり顔をあげると―――。

「……やはり君だったのか」

「なんで、あんたがここに……!」

―――そこには、ありえない人物が立っていた。

「人違いかと思ったが、間違いではなかったんだな。まあ、いい。今朝は失礼した」

目の前で腕を組んで、私を上から下まで値踏みするように見ている男。

「遠藤、遙さんだね」

完全に人を見下した態度で、私に向き合っているこの男。

唇がわなわなと震え出す。

(誰か……誰かこれは夢だと言って!!)

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