表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その上司、俺様につき!  作者: 皇ハレルヤ
とにかく出会いは最低最悪
11/98

第11話

「うん、だって役員直々の判断だもん」

ピッと軽快な音を立て、ゲートが開く。

「普通、面談って上から順番にしていくもんなんじゃないの?」

「さあ……? 何が普通かはその人それぞれだし、役員様の頭の中まで俺にはわかんないよ」

私と飯田君の声だけが、広々としたロビーに響く。

「それは……そうだけど……」

全然納得がいかない。

どうして私が、重要な社の面談の一番手に選ばれたのか……。

頭をよぎるのは「解雇宣告」の四文字。

嫌な予感を抱えながらエレベーターホールに行くと、すでに上行きのエレベーターが待機していた。

「で、待てど暮らせど出勤してこない遠藤を、探す役目を俺が仰せつかったってわけ」

「ご、ごめん! 本当はもっと早く来る予定だったの。でも、その……トラブルに遭っちゃって」

(……それを真実だと立証する証拠は、このワンピースだけだけど)

ロッカールームがある階のボタンを押し、狭い個室につかの間の沈黙が訪れる。

トラブルに巻き込まれた、だなんて、寝坊の言い訳と捉えられても反論できない。だって、洋服なんていくらでも自分で汚せる。

ふと、諸悪の根源である残念なイケメン野郎の顔が脳裏に浮かんだ。

(最悪、あの男を探し出して証言してもらうしか……)

そこまで考え、ブンブンと大きく頭を振る。

(ありえない! あんなヤツ、二度と会いたくない! 顔も見たくないのに!)

忘れろ、忘れろ、と呪文のようにブツブツ唱えた。

そんな私を気にも留めず、飯田君はいつもの調子で話を続ける。

「面談は、会議室H。役員様はすでにお待ちだから、急げよ」

「うん……」

ポーンと音を立て、重厚な扉が左右に開いた。

飯田君はエレベーターの開ボタンを押しながら、私に降りるよう促す。

「あ、できるだ早く着替えろよ。お前の面談が終わってから、新年度の社長挨拶だから」

とぼとぼとロッカールームに向かおうと歩き出した直後、背後から不穏な言葉がサクッと心臓に突き刺さった。

「全社員、お前の面談が終わるの、待ってるから」

「……は?」

振り返ると、エレベーターからひらひらと飯田君の右手だけが出ている。

「ちょ……それ、どういう意味!?」

絞り出した声は、我ながらカスカスだった。

「俺も、部長も役員も、全社員!」

追い討ちをかけるように、私の胸を真正面からえぐる言葉の刃。

「あ、社長も含め、お前待ち!」

トドメのハンマーは、ガツーンと脳天に振り落とされた。

(なぜそんな重要なことを、もっと早く言わない~!?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ